健康・美容業界で増える「リブランディング」 企業事例・ブランド事例を交えて有効性を考える(5/5)
リブランディングで企業が得るメリット
長期的なブランドの維持につながる
社会情勢や顧客の嗜好は常に変化し続けるため、リブランディングを行うことで、その時代に即したブランドイメージを提供できる。リブランディングに成功することで数十年~百年以上続いているロングセラー商品やブランドもあり、それが企業にとって長期に安定したブランド資産となる。
新規ブランドの立ち上げと比べてコストを抑えやすい
育成したブランドをリブランディングで引き継ぐことは経営的にも大きなメリット。新ブランドを立ち上げるのは、時間やコストがかかり負担が大きい。また、新ブランドの立ち上げで得られる利益・効果と、リブランディングで得られる利益・効果を比較した場合、前者は当初の想定通りにことが進まないこともあり、理想と現実の誤差が生じやすい。だがリブランディングであれば、それまでに蓄積してきたことを活かしやすく、また、それまでに投資したコストも無駄にならない。
既存の顧客を維持しやすい
言うまでもないが、ブランドを通じて顧客との関係を構築することは相当な労力が必要だ。リブランディングであれば、これまでに構築してきた顧客との関係性を引き継ぎやすい。
ただ、安易なブランドの変更や廃止によって顧客からの印象を悪化させるリスクがあることは注意しておきたい。特に顧客の中でもロイヤリティーの高い顧客の感情を無視してしまうと、それが発端となって、自社のみならず自社の他ブランドへまでも悪い影響を与え離脱される可能性がある。息の長いブランドほど全顧客に占めるロイヤルカスタマーが占める割合は高いので、リブランディングの時は、既存顧客への配慮も必要だ。
リブランディングの失敗事例
最後に、リブランディングが大失敗に終わった企業の事例を紹介。ファッション業界の事例ではあるが、ヘルスケア業界の人たちも心得ておくと、役立つはずだ。
ファストファッションは、それまで“チープな衣料”とされていた低価格帯のカテゴリーに、女性層や若年層を意識したファッション性を取り入れることで「安くてもおしゃれな普段着」のポジションを獲得することに成功している。GAPもファストファッションの有力メーカーの一つであり、SPA型運営という製造販売スタイルを確立した企業だ。
GAPは2010年に企業ロゴのリニューアルを実施した。新しいロゴは、「シンプル」「普遍的」「印象的」「多面的」「妥当性」など教科書的に見ても特に問題のあるデザインではなかった。しかし実際には公表してからわずか6日間で元のデザインに戻すこと。原因は顧客からの強い反発。新しいロゴデザインに対する不評の声が、Twitterなどに多く集まったのだ。GAP自身も、SNSなどオンラインコミュニティにおける信頼関係ができていない状態であったことを認め、結果としてロゴは元のデザインに戻すという判断に至った。
実はこの時、あるマーケティング会社がGAPの新旧2つのロゴを複数の人に見せて脳波や視点の動きを調べている。その結果、ロゴデザインの見た目の良し悪しではなく、「見慣れたものが変わってしまうことに対する拒否反応」が変更を否定する要素になっていることがわかった。
事前に顧客と「変わる」ことの必然性について理解が得られていなかったため、単に「変わる」ということだけが強調され拒否反応につながってしまったのではないか?と考えさせられる内容だ。
(※)参考:TIME社「Haters Gonna Win: Gap Returns to Old Logo」/TIME社「The Science of Fail: Why the New Gap Logo Made Our Brains Angry」/ビートラックス「ロゴのリデザイン ー なぜGapが失敗しAirbnbが受け入れられたのか」
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