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健康維持に必要な運動量は? ”運動不足”は死亡リスク

健康維持に必要な運動量って、そもそもどれくらいなの?」新型コロナの影響による外出自粛やテレワークで体を動かす機会が減る中、自分自身・子供・高齢の運動不足を気にする人が増えている。その大半は、健康維持やストレス発散のために運動機会を求めているが、そもそも運動不足は命にも関わる重大な問題。

WHOは世界の死亡リスク第4位に「運動不足(身体活動不足)」を挙げている。今世界中が新型コロナの感染に怯えているが、収束時期が全く見えない中、同時に人々は運動不足の解消にも意識して努めていかなくてはいけない。とりわけ注意が必要なのは、有事でなくとも普段から運動不足が指摘されている女性だ。その理由(年代別)、適切な運動量、普段実践している運動の特徴(男女別)などを解説。

健康維持の方法、『運動』は3位

健康づくりの3要素は、食事・運動・睡眠(休養)。それぞれバランス良く取り組むのが鍵だが、健康維持の方法を質問したアンケート結果では取り組みやすさの違いから、食事・睡眠に続いて運動は三位におさまる結果となった。その理由と人気の運動方法とは?

健康維持の方法ランキング、運動は3位

10代から70代までの男女約一万人を対象にマイボイスコムが実施した「健康意識に関するアンケート調査」で、「健康の維持・増進のために取り組んでいる分野」を尋ねたところ、半数以上の57.6%が「食生活」と回答。続いて2位が「睡眠(43.7%)」、3位は「運動(38.4%)」で、健康づくりの三大要素である「食生活」「睡眠」「運動」がトップ3に入る結果となった。

  • 1位:食生活(57.6%)
  • 2位:睡眠(43.7%)
  • 3位:運動(38.4%)
  • 4位:生活リズム(28.8%)
  • 5位:精神面(19.4%)
  • 6位:特に力を入れている分野はない(20.2%)
  • 7位:その他(2.6%)
  • 8位:無回答(0.4%)

健康維持のために取り組む方法として、「運動」よりも「食生活」と「睡眠」を実践する人が多い理由としては、“取り組みやすさ”が考えられる。「食生活」と「睡眠」は実行・継続しやすいが、運動は心理的ハードルが高く継続も難しい。健康維持のための取り組みは日常的に実践しなくてはいけない分、負担の少ないものが選ばれる傾向にあることがわかる。

 

ダントツ人気の運動は「ウォーキング」

人々が実践している運動方法は多種多様。平成30年度にスポーツ庁が実施した「スポーツの実施状況等に関する世論調査」を見ると、人気の高い運動方法を確認できる。

ただし本調査は「健康維持のために実施している運動種目」ではなく、単純にこの1年間で実施した運動種目であるため、あくまで実施率の高い運動ということに注意しておきたい。男性と女性、それぞれの実施種目トップ10は次の通り。

男性 女性
1位 ウォーキング ウォーキング
2位 ランニング(ジョギング) 体操
3位 トレーニング 階段昇降
4位 階段昇降 トレーニング
5位 自転車 エアロビクス・ヨガ
6位 ゴルフ(コース) 自転車
7位 体操 ランニング(ジョギング)
8位 ゴルフ(練習場) 水泳
9位 ボーリング ボーリング
10位 釣り 登山

【出典】スポーツ庁「平成30年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」について」

 

男女ともにトップの人気を誇るのが「ウォーキング」。ここには散歩やぶらぶら歩き、一駅歩きといったものも含まれており、日常的に取り組まれている様子が窺える。他にも「階段昇降」や「トレーニング」も人気だが、共通しているのは自宅や自宅周辺で行える“手軽さ”。

ちなみに本調査では、男性と女性により実施率が異なる運動も確認することができる。男性は「ランニング」「ゴルフ」「釣り」「自転車」「フットサル」「サッカー」「野球」の実施率が高く、女性は「エアロビクス・ヨガ・バレエ・ピラティス」「体操」の実施率が高い。

男性には屋外でのアウトドア志向が高く、運動を娯楽として楽しむ傾向がみられる。対して女性は運動を美容ケアの一環とする傾向があり、運動することで生まれる美容効果を重視する人が多い。このように男女によって運動そのものに求めるものことが異なることが、実施率の特徴に反映されているのかもしれない。

 

健康維持に運動が欠かせない理由は、死亡リスク

運動不足は健康を害するだけでなく、死亡リスクを高める可能性もある。運動不足の危険性は世界中で指摘されており、WHOは「健康のための身体活動に関する国際勧告」を発表した。しかし国内における改善はまだ見込まれず、特に若い世代や女性の運動不足が問題視されている。

 

身体活動不足は“死亡の危険因子”

身体活動とは“生活活動+運動”のこと。生活活動は日常生活における労働や家事、通勤・通学などの身体活動を意味しており、日常的に起こる身体の動きを指している。それに対して運動は、スポーツなど体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施される継続性のある身体活動のこと。WHOの発表によると、“身体活動”の不足は死亡の危険因子の第4位に位置付けられている。これは世界的な問題となっており、国内外で身体活動不足を克服するための取り組みが行われている。

●死亡に繋がる危険因子

1位:高血圧(13%)
2位:喫煙(9%)
3位:高血糖(6%)
4位:身体活動不足(6%)

WHOは2010年に「健康のための身体活動に関する国際勧告」を発表。5~17歳・18~64歳・65歳以上に分けた各年齢群に対し、身体活動の基準を示している。これを受けて国内でも2013年に厚生労働省が「健康づくりのための身体活動基準」を発表。WHOの基準を元に18歳未満・18歳~65歳・65歳以上に分けて、身体活動と運動それぞれの目安を設けている。

 

運動不足は若い世代・女性で顕著、年代別の”運動をしない理由”とは?

厚生労働省が調査した「平成30年 国民健康・栄養調査」の結果によると、日本における運動習慣のある者(※)の割合は、男性が31.8%、女性が25.5%。男性よりも女性の割合が低く、特に若い世代での運動不足が顕著に見られた。(※)「運動習慣のある者」とは、1回 30 分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者のこと

この理由としては、男女で異なる運動・スポーツへの意識差や、女性の方が仕事・家事・育児に時間を追われ時間にゆとりがないことが挙げられる。スポーツ庁による「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果を見ると、運動・スポーツをしない理由に、男女別・年代別に特徴があることがわかる。若い世代や女性は“運動をしたくてもできない状況”にあることも運動習慣を身に付けられない一因となっている。各年代別の特徴は以下。

<全年代>

全年代で、男性よりも女性の方が「運動・スポーツが嫌いだから」と回答する人が多い。

<18歳・19歳>

「運動・スポーツ以上に大切なことがあるから(20.5%)」「場所や施設がないから(27.3%)」「お金に余裕がないから(17.1%)」「仲間がいないから(20.0%)」と回答する女性が多く、これらはいずれも「運動・スポーツが嫌いだから(16.6%)」以上に多い結果となった。必ずしも運動嫌いだけが運動不足に繋がっている訳ではないことがわかる。

<20代〜30代>

「仕事や家事が忙しいから(20代:64.4%,30代:64.5%)」「子どもに手がかかるから(20代:25.8%,30代:44.4%)」が、他年代の女性と比べて圧倒的に多い。育児に最も時間を取られる年代であることが背景にあるが、一方で同じ年代の男性を見てみると、「子どもに手がかかるから(20代:11.7%,30代:28.0%)」を理由に挙げている人は女性ほど多くはない。一般的に育児は女性側の負担が大きく、それが反映された結果と言える。

<40代>

「お金に余裕がないから(24.2%)」が全年代の女性の中で最も多く、男性にも同じ特徴が見られる。40代は、教育費・住宅ローン・自動車ローンと、大きな出費がかさむ時期にあたることが背景にあると言える。なお、「仕事・家事が忙しいから」「面倒くさいから」を理由に運動をしない人は、40代以降で徐々に減っていく。

<50代>

「仕事・家事が忙しいから」「面倒くさいから」を理由に挙げる人は、若い世代と比べて少ない。一方で、50代以降から「年をとったから」を理由にする人が多くなる。

<60代・70代>

「仕事・家事が忙しいから」「面倒くさいから」を理由に挙げる人は、50代よりもさらに少なくなる。子どもが独立し、さらに退職や働き方が変わることで時間にゆとりができること、また、年齢とともに健康意識が高まることが理由として挙げられるだろう。

 

健康維持に必要な運動とは?

健康維持・増進のために必要な運動量は「健康日本21(第2次)」や、その目標達成のためのツールとして発表された「健康づくりのための身体活動基準2013」が参考になる。

子ども〜高齢者、健康維持のための身体活動の基準

健康日本21が掲げる目標値

健康日本21は身体活動の重要性を訴えるだけでなく、その楽しさを周知するためにも社会環境を整備する必要性を指摘している。身体活動において健康日本21が定めた目標項目は以下の3点。

  • ①日常生活における歩数の増加(1,200~1,500 歩の増加)
  • ②運動習慣者の割合の増加(約10%増加)
  • ③住民が運動しやすいまちづくり・環境整備に取り組む自治体数の増加

歩数の具体的な目標数値を年齢男女別に表すと以下の通り。成人の一日あたりの平均歩数は男性で6794歩、女性で5942歩にとどまるため、目標数値との差はかなり大きいことが分かる。高齢者は介護や看護援助を必要としないことを目標に数値設定がなされているため、数値はやや小さめ。なお1日当たりの平均歩数を1000歩増加するためには、歩く時間にして10分、歩行距離で600~700m程度増やすことが求められる。

男性 女性
20〜64歳 9,000歩 8,500歩
65歳以上 7,000歩 6,500歩

 

また健康日本21は、児童の身体活動不足も問題として指摘している。現代では外遊びのできる場所が減少しテレビやゲーム、インターネットが発達したことで、児童が非活動的に過ごす時間は増加傾向にある。テレビの視聴時間が長いほど体力が低くなるという報告もあり、児童の身体活動不足解消のためには視聴時間の制限といった対策を推奨している。

「健康づくりのための身体活動基準 2013」における目標値

健康づくりのための身体活動基準 2013」は厚生労働省から発表された身体活動・運動に関するガイドライン。健康を維持するためのエクササイズや筋力トレーニングの目標値を具体的に示している。以下は、「健康づくりのための身体活動基準 2013」における目標の身体活動量と時間。

身体活動 運動
18歳未満
18歳~65歳 3メッツ以上の強度の身体活動を毎分60分(=23メッツ・時/週) 3メッツ以上の強度の運動を毎週60分(=4メッツ・時/週)
65歳以上 強度を問わず、身体活動を毎日40分(=10メッツ・時/週)

メッツは、身体活動や運動の強度を表す単位。安静時を1として、そこから何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示している。メッツ・時は、メッツで表された活動強度に活動時間をかけたもので、運動・身体活動量の単位として国際的に使われている単位。軽い筋トレは3メッツ、ゴルフや洗車は4メッツというように、さまざまな活動の強度は「メッツ表」によって示されている。

 

健康維持には、食事方法・食べ物の選び方も大切

今回は身体活動不足について触れてきたが、健康維持のためには当然、食生活も重要。外出自粛で買い物が不自由になったり、家族が自宅にいる時間が長くなったことで食事作りを簡素化している家庭も見られるが、いくら運動を頑張っても、体を作っている元となっている食事がおろそかになっては本末転倒。適切な運動量の実施と合わせ、健康な食事も意識したい。

 

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