“運動離れ”、回復の兆し見せるも働く女性の間では今なお進行

運動・スポーツ実施率は全体では増加しているものの、一部年代の女性たちは運動実施率が減少している。仕事に育児に介護にと目まぐるしい日々を送る世代の女性は、運動を習慣化するだけの余裕がないからだ。70代女性と20代女性とでは、運動・スポーツ実施率に約30%もの開きがあり、働く女性の間では「運動離れ」はいまだ常態化している。

運動・スポーツ実施率、全体は増加傾向も若い世代は依然として低水準

スポーツ庁による調査結果では、ここ数年停滞していた運動・スポーツ実施率の回復傾向が明らかになった。しかし年代別・男女別でみてみるとスポーツ実施率は一部減少している。文部科学省の外局としてスポーツの振興を目指すスポーツ庁は、平成30年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」を実施。18〜79歳の男女を対象に、運動・スポーツの実施状況やその実態について調べた。若い世代は低水準だが、全体的な回復傾向が確認できる。

スポーツ実施率の推移

  • 《週1日以上運動・スポーツをする成人の割合は55.1%(女性:53.0% 男性:57.6%)》
    29年度(51.5%)よりもやや回復。男女ともに上昇し、どちらとも20代~70代すべての年代において前年度より増加。しかし20代から40代の女性の実施率は低水準のまま。若い女性の運動不足がうかがえる
  • 《週3日以上運動・スポーツをする成人(男女)の割合は27.8%》
    こちらも29年度(26.0%)と比べて上昇。年代別では40代~70代では男女ともに増加していたが、20代~30代の男性と20代女性は減少。特に20代女性の実施率は18%と全年代の中で最も低い
  • 《「無関心層」は14.8%》
    全体的に増加傾向にある一方で、「この1年間に運動・スポーツはしなかった」かつ「現在運動・スポーツはしておらず今後もするつもりがない」と答えた“無関心層”も存在。29年度(27.0%)より10%以上減少したものの、運動・スポーツに関心を抱かない層は、一定数存在している

女性の運動離れが顕著に 原因は?

女性の運動離れの要因は、単純に運動嫌いということではない。仕事と子育ての両立や、育児と介護のダブルケアといった多様化するライフスタイルのなかで「運動するゆとりをもてない」といった現状がある。

子ども・若者・働き世代の運動離れが顕著

上記で見たように全体的に運動・スポーツ実施率は上昇傾向にあるが、性別・年代別にみると、特定の年代の女性の運動離れが進んでいる。調査結果によると、男性よりも女性の運動離れが顕著で、特に中学生から40代前半にかけての女性の運動実施率が低下している。反対に50代以上からは実施率が上昇。

働く女性・若者の運動離れの原因

運動を増やせない理由をみてみると、男女とも「仕事や家事が忙しいから」「面倒くさいから」「年を取ったから」が上位に挙がる。しかし若い世代にフォーカスすると「お金に余裕がないから」「子どもに手がかかるから」が上位にランクイン。運動する意思があっても、経済的または環境的な要因で取り組めない現状がうかがえる。

【運動を増やせない(増やさない)理由】

  • 女性全体
    <1位>仕事や家事が忙しいから:43.8%
    <2位>面倒くさいから:31.5%
    <3位>年をとったから:24.2%
  • 20代女性
    <1位>仕事や家事が忙しいから:64.4%
    <2位>面倒くさいから:42.7%
    <3位>お金に余裕がないから:27.4%
  • 30代女性
    <1位>仕事や家事が忙しいから:64.5%
    <2位>子どもに手がかかるから:44.4%
    <3位>面倒くさいから:38.6%
    出典:スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」

女性の年代別に見た調査結果では、働き世代・子育て世代である20〜50代が特に、忙しさから運動ができないことがわかる。

子どもの運動離れの原因

では体力もありアクティブに活動できるはずの子どもの運動離れは、一体何が原因なのか。子どもの運動離れには、“運動をしない要因”と“運動を嫌う要因”が存在。子どもを取り巻く社会的背景と、子どもたちの心理的要因がからまった、複雑な現状がみられた。

  • 《運動をしない要因》
    ・習い事の増加(例:学習塾、英会話、音楽、習字)
    ・ゲーム機の保有や外遊びの場所が減ったことによる、室内遊びの日常化
    ・子どもを狙った事件の多発による、大人からの保護
    ・環境のバリアフリー化(例:エレベーターの設置)
  • 《運動を嫌う要因》
    ・家族の運動への愛好度が低い
    ・運動に対する良い経験や印象を持っていない(例:「運動をして汗をかくのが気持ちいい」)

また運動離れが深刻な女子中学生・高校生では、運動能力も低下傾向にある。この背景には運動不足の現状はもちろん、睡眠時間の不足や朝食の欠食といった生活習慣の乱れも関係している。

運動・スポーツ実施率に関するデータ、情報

スポーツ庁では、毎年スポーツの実施状況や運動能力の調査を行いながらWeb広報マガジンで情報発信している。

スポーツの実施状況等に関する世論調査(スポーツ庁)

平成28年度から毎年行っている同調査では、全国の18~79歳の男女を対象に、スポーツの実施状況を調査。「健康・体力に関する意識」や「運動・スポーツの価値」について男女別・年代別の傾向を明らかにしている。

体力・運動能力調査(スポーツ庁)

昭和39年より行われている、小学生から高齢者を対象とした文部科学省の「体力・運動能力調査」。平成11年度からは「新体力テスト」が導入され、定期健康診断における測定値とあわせて、国民の体力・運動能力の現状を探っている。

スポーツ庁Web広報マガジン DEPORTARE

「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことはすべての人々の権利」という“スポーツ基本法”に掲げられた理念のもと運営される、スポーツ庁によるwebメディア。スポーツビジネスからスポーツ庁の政策まで、スポーツに関するあらゆるニュースを発信している。

女性の運動離れには、ライフスタイルの変化が要因

美容と健康に良いと理解していても運動に取り組めない女性たちの背景には、多様化するライフスタイルやワークライフバランスの難しさがあった。特に運動離れ対策が急がれるのは働き世代の女性。子育てや介護、家事、仕事など女性は1人で何役もこなしていることが多く、運動の時間を確保することは容易ではない。ある調査では20~30代女性のうち30%はロコモ度1(移動機能の低下が始まっている状態)という結果が報告されており、若い世代の運動不足への対応が急がれる。

働き方改革や健康経営に取り組む企業が増えてきているため、働く女性世代の運動への取り組みは今後少しずつ改善していくと考えられるが、運動をただ推進するだけでなく“何が弊害となっているのか”を知り、それに対する対策を練ることが大切だろう。

 

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