【女性ヘルスケア市場観測】生活者の健康を握るのは誰か 浸透するAI・PHR・ウェアラブル、始まる争奪戦

女性ヘルスケア市場を日々ウォッチしている編集部が、各社の新商品・サービスから、市場の新たな動きやマーケティングの最新潮流を探るコーナー「女性ヘルスケア市場観測」。

今週の注目は、ヘルステック。AIをはじめとするテクノロジーの進化やセンシング技術の高精度化、PHRの活用拡大により、ヘルステックが人々の日常生活に深く入り込み始めている。健康データを蓄積・可視化するだけでなく、一人ひとりの状態に応じた、より高度に個別化したアドバイスを届け、ユーザーの健康意識を自然に高めたり、継続的な健康行動を後押しするサービスが相次いで登場している。

象徴的なのが、OpenAIが提供を始めた「Health in ChatGPT」だ。本人の医療・健康データを横断的に読み取って健康相談に応じる機能で、ユーザーは自分の症状や取るべきアクションを、Google検索などで得られる一般的な情報に当てはめて判断したり、生成AIに自分の状況をその都度説明する必要がなくなる。あちこちに分散する健康情報が統合された上でパーソナライズされた情報が生成されるため、利便性は実に高い。主要生成AIが「健康管理のハブ」に君臨する構図ができあがる日は、そう遠くないかもしれない。

シャープは、「健康意識はあるのに記録が続かない」という課題に着目し、摂取カロリーを自動計測できるスマートウォッチを発売。ユーザーは、日々の「記録」という負担から完全に解放される。イオンは4000店舗を地域の健康拠点と位置付け、個々の健康データや購買データを活用しながら店舗での販促や健康提案を始める。小売店が生活者の健康を支援する場所へと姿を変えることで、人々の健康消費にも変化が生まれそうだ。

各社が、テクノロジーやデータ、事業基盤を武器に、生活者の日常的な健康づくりに深く入り始める中、”誰”が生活者の最大の健康パートナーとなるのか。この座をめぐる競争は、これから激しくなりそうだ。ヘルスケアマーケティングのあり方も、大きく変わっていくかもしれない。

毎週3億人が健康相談、米ChatGPTにヘルスケア機能(OpenAI)

OpenAIは7月23日、健康情報をChatGPTと連携できる新機能「Health in ChatGPT」の提供を米国で開始した。毎週3億人以上が検査結果の理解や受診準備、健康的な生活習慣などについてChatGPTに質問を寄せる一方、回答に必要な健康情報は医療機関のシステムやアプリ、ウェアラブル端末などに分散しており、全体像を把握しにくいことが課題となっていた。ユーザーの許可のもと、検査結果の比較や診療後の変化の要約、睡眠や運動など生活習慣データを横断的に確認して会話が進むため、ユーザーは情報を各場所から何度も集めたり入力したり、AIに説明する手間が軽減される。なお同社は、この機能を、医療従事者による診療を代替するものではなく、健康管理を支援するものに位置付けている。18歳以上のユーザーを対象に、無料版を含む全プランで順次提供する。

ChatGPT ヘルスケアの提供開始

【出典】OpenAI

 

PHR活用、ユーザーの医療データを基にAIが健康相談(Arteryex)

個々の健康・医療データを基にした健康情報を提供するサービスは国内でも登場している。Arteryexは6月、医療情報管理アプリ「パシャっとカルテ」に「AI相談機能」を追加した。同アプリは、お薬手帳や健康診断、検査結果などを撮影するだけで自動でデータ化し、一元管理できるようにするPHRサービス。新機能では、アプリ内に蓄積された本人の健康診断結果や検査結果、処方薬などの医療データを基にAIと会話できる。ユーザーは、自分の健康状態に即した、よりパーソナライズされた健康サポートが受けられる。医師に伝えるべき内容や受診の目安も整理し、受診前の不安の軽減や準備を支援する。有料会員向けに提供するものなので広がりは限定的だが、個人の健康・医療データを統合したAI健康相談は、今後各社から生まれそうだ。

「パシャっとカルテ」

【出典】Arteryex

 

4000店舗を「健康拠点」に、データ活用で販促・健康提案を強化(イオン)

小売大手も、生活者の健康管理に日常的に関与する取り組みを始めた。イオンが7月に提供を開始したのは、健康管理を支援するサービス「からサポ」。会員約2300万人のアプリ「iAEON」内で利用でき、今秋にはウエルシアグループアプリにも対応予定。食事・運動・睡眠の記録やAIによる健康アドバイス、350種類以上のレシピ提案などを無料で提供し、健康習慣の定着を支援する。店舗への来店時以外でも、顧客と継続的な接点を構築するのが狙いで、グループ約4000店舗を地域の健康拠点と位置付けた上で、店舗とデジタルを連携させた健康支援を展開する。今後はユーザーの同意のもと、健康データや購買データ、サービス利用状況を組み合わせて分析し、一人ひとりに合わせた商品提案や販促施策、店舗での健康提案につなげる方針。ゲーミフィケーションの要素も取り入れ、継続利用を促す。

 

スマートリングで女性の健康サポート、排卵・月経周期の分析精度向上(Ultrahuman)

スマートリングも高機能化が進み、健康状態をより細かく把握したり、よりパーソナライズされた健康情報を取得できるようになっている。例えば、インドのヘルステック企業Ultrahuman製のスマートリング。105カ国以上で展開され、国内でも新モデルの「Ring PRO」が近日中に発売される。同社のスマートリングは、女性の健康や睡眠の分析を強みとし、活動量や消費カロリー、生理周期・排卵周期の可視化に加え、骨・筋肉の健康と関連するビタミンDの生成に適した日光浴の時間帯、睡眠を妨げないカフェイン摂取のタイミングなどを提案する。生活の乱れを可視化するためソーシャルジェットラグも分析し、体内時計の調整やリカバリーをサポートする。新モデルでは、睡眠時の心拍や体温などの計測・解析精度を高め、月経周期や排卵の予測精度も向上させた。不規則な周期も把握しやすくなる。エディオン、ビックカメラ、ヨドバシカメラでの販売を予定(AD)。

【ウルトラヒューマン】スマートリング (1)

【出典】ウルトラヒューマン

 

“続けられない”に着目、シャープ初のスマートウォッチとスマートリング(シャープ)

ウェアラブルデバイスの精度が高機能化しても、続けられなければ意味はない。そんな健康行動の”壁”に着目して開発されたウェアラブルデバイスも登場した。摂取カロリーを自動計測するスマートウォッチ「からだメイト Watch」で、シャープが、同社初のスマートウォッチとして7月に発売した。米HEALBE Corporationの技術を活用したもので、生体インピーダンスセンサーで細胞外液の動きを測定することで、摂取カロリーを算出する。水分バランスも可視化し、水分補給が必要なタイミングも通知する。食事・運動・睡眠を総合的に支援することをコンセプトに、食事記録など手入力の負担を減らし、健康管理を継続しやすい設計とした。同月には、同社初となるスマートリング「からだメイト Ring」も発売。国内スタートアップSOXAIのセンシング技術を採用し、睡眠や心拍などのバイタルデータを可視化する。

スマートリング「からだメイト Ring」

【出典】シャープ

 

2026年の女性ヘルスケア市場はどうなる?

2026年度の女性ヘルスケア市場を予測する「女性ヘルスケア白書2026年度版  市場動.向予測 ~健康トレンド・業界動向・女性ニーズ~」を発行しました。これまでにBtoC企業、BtoB企業、自治体、医療機関、マスメディア、教育機関など、さまざまな業種の方に広くご活用いただいている、恒例の人気レポートです。新規事業の企画・開発、マーケティング設計、販売戦略における意思決定にご活用ください女性ヘルスケア白書2026 市場動向予測レポート(PC)

 

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