2021年 女性の消費トレンド
2021年版の女性の消費トレンドを公開しました。こちらからご覧ください。当稿の以下内容は2020年版女性トレンド、2019年版女性トレンドです。
目次
2020年度版 女性の消費トレンド
「2020年度の女性の消費トレンドと消費傾向」について、幕張メッセ開催展示会(オリジナル商品開発week/2020.2.20)にて、女性マーケティング専門会社の当社ウーマンズより発表させて頂きました。講演内容と同じ内容を記事にしましたので、2020年度4月からの女性マーケティング戦略立案に今年もぜひお役立てください。内容は以下です。
2019年度版 女性消費トレンド
2019年度の女性の消費トレンドと、把握しておきたい女性市場の課題とは?(本稿は、2019年2月27日開催の東京ビッグサイト展示会「国際OEM・PB開発展」で弊社ウーマンズが登壇した講演の内容をもとに書き起こしています)
お伝えする内容
本日は、メーカー、商社、代理店、流通、自治体、個人事業主の方など業種も事業規模も様々な方にご参加頂いておりますので、なるべく年代やライフコースにとらわれず「若年層から高齢層」を包括的に捉えた上で潮流をご理解いただけるよう、内容をまとめました。
本日お伝えする内容は、ウーマンズが日々行っている、女性消費者動向・トレンドの分析予測、各種主要媒体の定点観測、ヒット商品分析、女性の口コミ分析などをもとに選出しております。2019年の女性の消費傾向の理解を深め、開発ヒント・マーケティングヒントにつなげていただければ大変嬉しく思います。本日は以下の流れでお話を進めていきます。
- 女性市場を変化させる要素
- 2019年の女性市場トレンド
- 把握しておきたい女性市場の課題
- 商機あり!4つの女性市場
女性市場を変化させる要素
2019年は市場に大きな影響を与えるトピックが満載です。「新元号」「消費税増税」「オリンピック開催1年前」「キャッシュレス社会」「サブスプリクションの広がり」「無人店舗の広がり」「AIによるパーソナル化の加速」「ソサエティ5.0」などです。これらも女性の消費に当然大きな影響を与えますが、すでに耳にされてらっしゃる方も多いと思いますので、本日はこのあたりには触れず、女性市場にフォーカスして2019年の動向をお伝えします。
女性市場トレンドを理解するには「何が市場に変化を与えているのか?」を把握する必要があります。例えば「働き方改革・女性活躍推進」は女性の時間の使い方を変え、消費パワーを拡大させています。働く女性の増加で「未婚女性の増加」「晩婚・晩産」が顕著になっています。
商圏が地球サイズになっている点も消費に大きな影響を与えています。こちら(以下)はロシアの人気インスタグラムで、飼い主が飼い猫の写真や動画を毎日投稿。動画はわずか1日で数10万~100万回以上再生されており、コメント欄には中国語、日本語、韓国語、英語、ロシア語など多様な言語で投稿されています。言葉が通じなくても地球サイズで皆で楽しむ。今や商圏に言語の壁はなくなってきています。
このような社会情勢や市場トレンドの変化により、女性の価値観・消費傾向は急速に変化し、よりつかみどころがなくなっています。
なお、女性トレンドには「短期トレンド」と「長期トレンド」があり、短期トレンドは「今年はこのスーパーフードが流行ります!」「この夏は赤色リップがトレンド!」など、数カ月~1年程度でトレンドサイクルが収束するのに対し、長期トレンドは年単位で持続するトレンドをさし、企業が重視すべきは長期トレンドです。今からお伝えする8つの女性市場トレンドは、後者の長期トレンドになります。
2019年 女性市場の消費トレンド
1.ダイバーシティ&インクルージョン
ダイバーシティとインクルージョンは、「多様な人たちの存在を認め、対等な仲間として受け入れる」という意味です。これまでの資本主義社会では「強い者」が「弱い者」を排除する・あるいは明確に区別することで「強い者」の立場を守り「強い者」が発展してきましたが、「人口減少・人手不足・経済成長の鈍化」などを背景に、社会全体の考えは変化し、特にここ1~2年で急速に「多様な人たちの存在を認め、対等な仲間として受け入れる」概念が広まっています。
では「多様な人」とはどういう人たちなのか?代表格がLGBTですが、他にも「認知症の方」「障がい者」なども該当します。認知症といえば、暗い・辛いネガティブイメージが強いですが、最近はポジティブに受け入れる流れが起きています。介護する女性の間で人気になっている「笑う介護。」というブログがありまして、介護の日々を笑いに変えてる点が支持され書籍化までされています。他にも認知症の母と娘の爆笑ドキュメンタリー「徘徊ママリン87歳の夏」という映画も、新しい認知症の描き方として話題になりました(以下動画)。
次に「障がい者」。障がい者というと、健常者サイドは「どのように接して良いか分からない」といった気持ちがあり、障がい者サイドは「変な目で見られるから隠したい」「社会に出るのが怖い」といった気持ちがあり双方にネガティブイメージがありました。しかし最近は双方間の心理的壁を超え、ともに自然体で社会活動やイベントを楽しんでいます(以下動画)。こちらはウブドべという医療福祉をテーマにしたイベントを行う団体が主催するクラブイベントで、健常者も障がい者も一緒に楽しんでいます。以前までは想像できない風景ではないでしょうか。
この2事例が特徴的なのは、かつてのネガティブイメージはなくなり、いたって自然に「多くの人が多様性を受け入れている」点です。
「高齢者」も多様な存在として受け入れられています。こちらは料理家タミ先生、作家の佐藤愛子さん、インスタが人気のキミちゃんで、皆さん90代。考え方、90代ならではの知恵、ユーモラスで元気なキャラクターなどが幅広い女性に支持され、「生き方が楽になった、勇気をもらえる」など、特に20~30代の若い女性たちが90代女性に励まされています。
これら事例から言えるのは「人と人のボーダレス化」が加速していることです。
企業は「多様な人たちを特別視するのではなく、ボーダレス化発想」が必要です。最近は男女を隔てないジェンダーレスコスメが人気を集めたり、ユニセックスデザインを採用する企業が増えたり、車いすの人が旅行を気軽に楽しめるユニバーサルツーリズムが広がりを見せるなどして、ボーダレス化が各業界で始まっています。
2.SDGs消費
SDGsとは「誰一人取り残さない、持続可能な社会の形成」という意味で、「社会課題に対し啓蒙活動だけでなく収益につながる経済活動として取り組むことで、ビジネスチャンスの創出・拡大につなげる」とされています。このSDGsが女性の消費に大きな影響をもたらし始めています。
そもそも女性の「買いたい!」にはさまざまな要因が影響しますが、特に近年、影響度が大きい消費基準があります。一つは「ヘルスコンシャス」。こちらは女性の新たな消費基準として昨年はじめにウーマンズより発表させて頂きましたが、今年はSDGsを加えました。
1つ目の消費基準「ヘルスコンシャス」とは、女性が購買決定を行うとき、無意識に「ヘルシーかどうか?」を基準にしていることです。せっかく旅行するなら、ただ温泉に入って食事して宿泊するだけよりもヘルスツーリズムを提供する旅館を選ぶ。女子会をするならヘルシーな料理を提供するお店を選ぶ。働くなら健康経営やワークライフバランスを大切にしている企業を選ぶ、といったことです。
では、「SDGs」における消費基準とは具体的にはどのようなものでしょう?例を見てみましょう。
- 動物実験をしない化粧品メーカーか?
- フードロス対策に取り組む食品スーパーか?
- フェアトレードで事業推進している企業か?
- 女性や弱者にやさしい企業か?
このような視点が消費の基準になります。以前からこのような考えを持つ女性はいましたが、「限られた人の間に広まる、ちょっと特別な領域」でした。それが「多くの人にとってスタンダード」になりつつあるのが以前までとの違いです。急速に世界的注目度が高まっているプラスチック問題も、多くの生活者に「SDGs」の概念を広めるきっかけにもなっているように感じます。
「お金に関する調査(SMBCコンシューマーファイナンス)」で「多少高くても、社会のためになる活動をする企業の商品を購入したい」に「そう思う」と回答したのは約半数でした。このような考えに基づいた消費は、若年層ほど傾向が強かったのですが、今後は上の世代にも急速に波及すると考えられます。
女性に人気の化粧品メーカー・ラッシュは、「お肌も環境も喜ぶパッケージフリーのスキンアイテム」というキャッチコピーのもと、容器を必要としない固形型シャンプーや固形型クレンジングの提供を開始しています。他にもさまざまな企業が次のように発表しています。
- H&M:レジ袋を廃止
- イオン:ペットボトルからできた再生ポリエステルを使用したカジュアルパンツの販売を開始
- 楽天:「サステナブルな買い物を当たり前に」をモットーに掲げる通販サイト「アースモール」をオープン
- ユニクロ:脱・毛皮へ向けた取り組みとしてヤギ素材の使用中止を発表
- グッチやヴェルサーチ:毛皮不使用
「持続可能な社会づくりと買い物」という概念がやがて「スタンダード」になることは必至です。SDGsを無視してしまうと「社会にやさしくない」という理由で女性客を遠ざけてしまう可能性は否定できません。
実際に女性消費者にこの流れを聞いてみると、「時代の流れ。いいことだと思いますよ」「大々的なことは難しいけど、身近なことからやってみようという意識は芽生えますよね」「未来を考えれば、取り組むのは当然」などポジティブコメントが返ってきます。持続可能な社会づくりに向けて今後企業はSDGsを意識した商品開発・プロモーションに切り替える必要があります。結果的には女性消費者に選ばれる一つの要素になっていきます。似た概念に「エシカル消費」がありますがSDGs消費はエシカル消費よりも、より広義で包括的なのが特徴です。
3.ヒト消費
モノ消費、コト消費の次の流れとして、ヒトとのリアルな出会いや絆、交流を求める女性が増えています。なぜヒトニーズが高まっているのか?主に3つの要因が挙げられます。
- 2030年には約半数が単身者になるとの予測がある通り今日本では単身社会が進んでおり「一人身は気楽である一方で、寂しさやしんどさ」を感じる女性が増えていること。実際に昔ながらの横丁やバーに通う女性は意外にも多くいます。
- デジタル化による無機質社会。無人店舗や自宅にいながら受けられる各種AIサービス、VRによるコミュニティ形成、ロボット配達などは、利便性向上や社会課題解決につながる一方で、生活者に「ヒトとのリアルな交流の場」を奪う要因にもなります。
- 利己消費の限界。物にあふれ、すでに多くのものを持つ私たちにとって、自分の得だけを考えた消費には関心が向きづらくなっています。そこで関心が高まっているのがヒトを基点にした各種商品・サービスです。
例えばメルカリのライブ販売。販売したい個人が生中継で商品をPRし、視聴者からの値下げ要求や質問にその場で回答や交渉をします。人気販売者だと一度の視聴者は数百人。「家庭教師と生徒のマッチング」「料理をふるまいたい人と、自宅で料理を作ってほしい人をつなげるマッチング」「恋活・婚活マッチング」「タクシーに乗りたい人と車を提供したい人のマッチング」など人と人をつなげるサービスが次々に登場しています。
クラウドファンディングに関しても「投資したことによるリターン目的」よりは「その人を応援したい」といった「純粋な他者への応援」として成り立っているケースが見受けられます。他にも地域のウォーキング大会は特にシニア層に人気ですし、さまざまな名目のオフ会も全国各地で開催されています。ビールメーカーのヤッホーブルーイングは「ファンとスタッフで創り上げるファンイベント」を定期的に開催してまして、大変な人気ぶりです。Twitterなどデジタルのみで交流を図るメーカーも多い中、同社のイベントにはリアルな交流を求めて多くのファンが集結します。今年は北軽井沢で開催予定のようです。
ヒトとの距離を縮める商品・サービス・プロモーションはもともとコミュニケーションを大事にする女性には喜ばれやすいので、「ヒト消費」の視点で企画開発してみてはいかがでしょうか。キーワードは「愛情」「情緒的」「所属」「承認」といった「人間らしさ」です。デジタルが加速度的に進化することで無機質な空気が広がるからこそ「人とのリアルなつながり」は今まで以上に強く、貴重なものになっていくでしょう。
4.幸せの新基準は家時間
働き方改革や、あらゆる生活行動がAIによりスマートライフ化されること、時間短縮型の各種サービスが各社から次々に登場している市場トレンドなどにより、今後多くの生活者が時間を創出できるようになります。最も「時間貧乏」である働くママですら、近い将来、時間持ちになるはずです。
メイク、日々の肌ケア、ダイエット、服選び、家事育児など一日のタスクが男性より多い女性たちにとって、「時間の余裕」ができることによる生活行動・消費行動への影響は大きく、女性たちは新たにできた時間へ関心が向き始めます。一昔前であれば、時間ができたら外出するのが一般的でしたが、今は家にいながらできることが増えているので、「時間ができた=家の中で何しよう?」と、発想の軸が ” 家 ” になります。そこで今急速にニーズが拡大しているのが家時間を充実させる商品・サービスです。
例えば、次のようなものです。
- エステと同等の効果を期待できる高級美容家電
- かつては富裕層の象徴でもあった家事代行サービスやシェフの主張料理サービス
- 自宅にいながらAIがフィットネス指導をしてくれるアプリ
- AIが好みを判定して定期的に服を届けてくれるサービス
かつては「富裕層のもの」だったり「外に行かないと体験・利用できない高品質の商品サービス」が、今は、家の中で手軽に利用してニーズを満たせるようになりました。もはや何かを体験したり利用するために外に出る必要性はなくなっています。LIXIL住宅研究所が昨年発表した「人生100歳時代の未来住宅」は、あえて自宅内に段差や懸垂ができる階段を設け、家中での時間を「足腰を鍛える時間」として提案しています。二世帯住宅と言えばこれまではバリアフリーが一般的だったので、とても画期的なコンセプトです。
家時間を充実させる商品サービスは、高齢者や、過疎地に住む人、介護・育児・家事に追われる忙しい女性たちのQOL向上につながります。3事例をご紹介します。
- ある30代女性は、ゾゾタウンを利用する理由を次のように言っています。「欲しい服が売ってる店舗まで往復する電車賃は5,000円。そのお金があるなら服を1着買える。ゾゾタウンを利用する方がよっぽどお得です。移動の時間もお金もコスパ悪いですよね」
- ある40代女性は「毎日忙しくて子どもの相手ができないことに罪悪感があった。でも、先日の子どもの誕生日では、出張シェフを利用し子どもが好きなパーティ料理を自宅で作ってもらった。子どもはすごく喜んでくれたし、私も罪悪感から解放されたし、いい時間でした」。
- 化粧品ブランドのコフレドールは口紅の色をweb上でワンクリックでお試しできるサービスを開始しました。これによりわざわざ店舗にいかずとも、興味ある口紅を自宅にいながら簡単に試し塗りができます。足腰が弱いため移動ができない過疎地に住む80代女性も、パソコン上で似合う口紅を複数試し、購入するようになるかもしれません。メイクには認知機能の低下を予防したり、笑顔や言葉数を増やすなどの効果があると言われており、このようなサービスが女性にもたらす影響は企業が想定している以上のものがありそうです。
このように家時間の充実は多くの女性に幸せをもたらすため、幸せの新基準として今後急激な需要拡大が見込まれます。働く女性世代に限って言及するなら、働き方改革で自宅で仕事をする人が増えてますので、家で過ごす時間はさらに増えていきます。「いかに家から外に出させないか?」で発想すると、商品・サービスの新しい開発コンセプトが見えてきそうです。
5.役割・居場所の複数化
これまでは、学生なら「学生だけの顔」。30代働くママなら「ママ・妻・仕事人の顔」。70代シニアなら「妻の顔」。というのが一般的でしたが、最近は複数の顔や居場所を持つ女性が増えています。学生なら「学生の顔と、人気ティックトッカーの顔」。ママなら「ママ、妻、仕事人の顔に加え、趣味や副業を楽しむ顔」。70代シニアなら「妻の顔に加え、地域貢献活動に取り組む顔」。先日、内閣府が公表した「平成30年度 エイジレス・ライフ実践例」によると、74歳の女性は介護施設などに訪問して脳トレ体操を、78歳の女性は児童館で茶道教室を、74歳の女性は健康テーマ型のサロン活動を行うなどして地域に貢献しています。
このように全世代の女性の間で、人生を楽しむべく「自己実現・挑戦」が進んでいます。今までも女性の自己実現は注目されてきましたが、従来と何が違うのかというと、今までは余暇時間やサブ的に自己実現の行動が行われていたのが、近年は自己実現や挑戦をサブではなくメインで行うようになった点です。一方で「私は自己実現や挑戦ができないから、自己実現したい人を応援したい」女性もいて、投げ銭やクラウドファンディング、応援消費という形で実現しています。
企業は「ターゲット女性のうち、どの顔にアプローチするか?」という視点を持つことも今後必要になってきます。企業が応援サイドに回ったり、あるいは応援してもらうのも、戦略の一つではないでしょうか。
6.オタク女子の市場パワー拡大
特に若者世代は「お金を使わない」と近年言われてますが、年々市場パワーを拡大しているオタク女子に関してはあてはまらず、自分がハマってることにとことんお金を使います。オタクという言葉のカジュアル化が進んだこともあり、女性のオタク市場は細分化しています。例えば、次のようなオタク女性がいます。
- コスメおたく
- 歴史オタク
- 美容整形オタク
- コスプレオタク
- DIYオタク
- 100円ショップオタク
- 調味料オタク
彼女たちは年間数10万円〜100万円以上を惜しみなく費やします。彼女たちは必ずしも高収入の女性というわけではなく、一般的収入の普通の女性たちです。
彼女たちの平均年収を仮に240万円とすると、企業がターゲット策定する際、彼女たちは「中間層」に分類されます。しかし、好きなモノコトにお金を集中して使うという視点で見ると、「中間層ではあるが、年間で好きなモノコトに数10万〜100万円以上を使う富裕層」と見ることができます。彼女たちの消費パワーは富裕層に匹敵するケースもあります。オタク女子についてまとめた「浪費図鑑」という書籍も登場し、オタク女子は今注目の的です。
オタク女子の市場パワーが拡大している背景には、以下が挙げられます。
- 価値観の多様化が進んでいる
- 自分の好きを優先する女性が増えている
- 働く女性が増えたことで好きなモノ・コトにお金を使いやすい環境になった
- 「多様な人を認め、受け入れる」という社会全体の流れ
オタク女子は、企業のマーケターよりもその分野に詳しいケースは珍しくなく、素人の玄人化が進んでいます。企業サイドは「オタク市場は小さいから魅力的ではない」と感じるかもしれませんが、この節約時代に積極的に消費をしてくれる彼女たちの存在は貴重です。彼女たちに的を絞る戦略は意義が大きいのでは、と感じます。
7.カジュアル&エフォートレス
エフォートレスとは「努力を要しない」との意味で、数年前にファッションやビューティ業界で広がった言葉ですが、ここでさすエフォートレスは、ファッション・ビューティに限定せず「生き方全体」を指します。ジョージアのCMをご覧ください(2020年現在はすでに削除されています)。
「頑張るって古いのかもな…」というセリフはまさに今の時代の「カジュアル&エフォートレス」を象徴している言葉です。昭和の頃のようなモーレツな努力だったり、ストレスと闘いながらガムシャラに生きたり、命がけで借金をし起業するといった ” 重々しさ ” は今は敬遠され、全ては楽しく、らくちんに、という概念が特に若い世代を中心に広まっています。
例えば、少し前なら稼ぐのは大変なことでしたが、今はブログやユーチューブ、メルカリ、副業などを通して誰もが簡単にお金を稼げる時代です。実際に、パソコン一つで、ひと月で数百万円の収入を実現する人はたくさんいます。
自己実現も今はライトです。有名人になりたいと思ったらティックトックやインスタ、ユーチューブを使って情報発信。幸運なケースだとごく短い期間のうちにたちまち有名人の仲間入りを果たせます。
ファッションもカジュアル化が進んでいて、国がスニーカー通勤を推進していることも影響し、通勤にリュックやスニーカー、脱スーツを推奨する企業が増えています。
エイジングに関しても、過度な整形やエステで涙ぐましい努力をして若さを維持するよりも、加齢を受け入れる考えが世界的に広がっています。子育てに関しても以前までは、各女性誌がこぞって、仕事もママ業もカッコよくこなす女性像を打ち出していましが、最近は「ママも手抜きを」「頑張らない子育て」などを提唱。オフィスで働く女性向け情報誌シティリビングも先日、「全部しっかり、きちんとからの解放~いい加減を目指しませんか~」という特集を組みました。
冠婚葬祭も、スマ婚に代表されるように重々しいものからライトなスタイルへと変化。ギフトについてはお歳暮市場は縮小傾向にありますが、プチギフト市場は拡大してます。
高級バックや高級車はかつては努力の結果獲得する成功者の証でしたが、今や、誰もが庶民価格で高級バックや高級車をシェアやレンタルで気軽に使えます。
デザインも、重厚系よりも今はアップルやユニクロのようなライト系・シンプル系が好まれています。このようにあらゆるシーンでカジュアル&エフォートレス化が進んでいます。
企業は、ヘビー感を避けライトなコンセプトを掲げると良いかもしれません。例えば、「重々しくて買い物しづらい苦手な場所」と敬遠されがちな百貨店型の過剰接客はしない、大げさな過剰包装はしない、冒頭ご紹介した医療福祉イベントを手掛けるウブドべのように、イベントや啓蒙活動はテーマやコンセプトを重くしすぎないなど。見なおしてみると、確かに時代の流れにそっていないマーケティングは未だにあちこちに散らばっています。コスメ業界ではミニサイズコスメが注目を集めていますが、その理由は、女性たちに「よし、この10,000円の化粧水を買おう」という大きな決断をさせない点にあります。お手頃価格で新しいコスメをサクッと使える「ライト感」が支持されています。カジュアル&エフォートレスの空気が広がりを見せる中、購入において「大きな決断をさせない」という視点で戦略を考えてみるのも良いかもしれません。
8.ライフデザイン
本日のキーワードの中で、女性市場トレンドに最も大きな変化を与えるキーワードです。昨年は多くのメディアが取り上げたこともあり、人生100年時代を誰もが意識するようになりました。続く2019年は、一歩踏み込んで、100年時代を見据えた「ライフデザイン思考」が進むと考えられます。
お金と健康に関しては、人生100年時代に対する備えとして当たり前のコトですが、今、新たに女性たちが関心を寄せているのは「リカレント教育」と「生き方」です。人生100年もあるなら、もっといろんなことを学んだり知識のアップデートをして生き抜くスキルを身に着けたいと、生き方をより深く真剣に考えるようになっています。未婚女性は年々増え、さらに女性の方が男性よりも長生きするわけですから、女性にとって100歳まで生きることは、考え方や行動、将来設計に大きな影響をもたらすのは当然です。
昨年、イギリスのBBCが発表する「人々に感動や影響を与えた世界の100人の女性」に、日本の90代女性「高見澤摂子さん」が選ばれました。高見澤さんは2020年のオリンピックで通訳をしたいとのことで、孫とラインを使った英語の勉強を始め、その様子が話題になりました。90歳を超えてラインを使って英語の勉強をする。まさにリカレントです。
以前は、長生き対策は中年期以降に取り組むものでしたが、今は、20~30代の若いときから100歳まで生きることを想定してライフデザインを描く女性が増えています。このライフデザイン思考は、生活・価値観・行動などあらゆるシーンに変化をもたらし始めています。次に紹介するのは、いずれも人生100年時代を見据えた女性たちの行動です。
- 残り半分の人生は自由に生きたいので卒コン(50代 専業主婦)
- 残り20~30年間を支え合うパートナーを探すために婚活(70代)
- ロコモ対策としてトレッキングを趣味に(30代 会社員)
- 会社に縛られストレスフルに数十年間生きるよりも、自分の好きなことで生きていきたいので退職して海外移住(20代 シングル)
子育て・介護・夫の転勤についていくなど、何かと「人に尽くす側」になることが多い女性ですが、人生100年時代の概念が広まったことで、「他人や家族ではなく、自分自信の人生に尽くす」意識が女性たちに芽生え始めています。妥協して生きる、何かの犠牲になって生きる、という考えは薄らぎ、自分の幸せや自分の将来を真剣に捉えるようになったとも言えます。
人生100年時代を意識したライフデザイン思考が、今後女性の価値観・生活行動・購買変化にどのような変化をもたらすのか?」。これを常に予測しながら新しいマーケティング施策を実施していく必要があります。
把握しておきたい女性市場の課題
次に把握しておきたい女性市場の課題を6つお伝えします。
1.何をテックにして何をリアルとして残すか?
無人店舗、キャッシュレス決済、VR体験はできるが購入はできない店舗、AIによる自動対応、ロボットによる接客などあらゆるシーンで驚くスピードでデジタル化が進んでいますが、現役世代である私たちにとっても、この進化を理解し、ついていくのは結構しんどかったりします。正直、「そこまでホントに必要?」と思うこともあります。日本のボリュームゾーンであり且つ消費の中心である中高年層、特に高齢層はもっとそれを強く感じており、ある意味では生きづらい社会にもなっています。多くのビジネス誌やメディアが取り上げるから「我が社も全てデジタルにしなくては!」とつい焦ってしまい、テクノロジーファディズムに陥っている可能性も否定できません。東京などの都市部基準で考えるのではなく、日本全体あるいは全世代を俯瞰してみると、今のところ、実際は最新テクノロジーを使いこなす層は少ないのが現状で「進化が早すぎて追いついていくのは疲れる。今の生活で十分便利」「デジタルはややこしてく嫌い!」という女性は多く存在します。
とはいえ、デジタル技術が人口減少・人手不足など様々な社会課題を解決してくれるのも確かです。10~20代女性は除きますが、女性は特に男性と比較してデジタル利用率は非常に低く、実際に、ウェアラブル端末の利用率、スマートスピーカーの利用率、アプリでの健康管理利用意向などに関する各種調査結果では、非常に低い数字がみられます。反対に意外にもニーズが高いのが、アナログ商品だったり、人による直接的なサポートや接客です。「何もかもデジタルに切り替える必要はあるのか?」「何をテックに切り替えて、何をリアルとして残すか?」よく検討する必要があります。
2.シェアではなく、購入・保有する価値をどう提案するか?
シェアリングやサブスクリプションが広がりを見せる中、消費者の間では「保有する意味・価値」が急速に薄らぎ始めています。今は高級バックも高級車もシェアするほうがよっぽどコスパは良いし、安い価格で楽しめるし、シェアしてる方が環境に良いし、シンプルライフができるし、維持管理費もかからないし、所有し続ける経済的リスクもなくいいことづくめです。「シェア」ではなくあえて「購入・保有する価値」は何か?一歩踏み込んで提案する必要があります。
3.中年女性、高齢女性へのシフトをどう進めるか?
私が普段から不思議に思うことがあります。ここ2~3年、このような講演の場でお伝えさせて頂いているのですが、日本のボリュームゾーンは中高年層であることは誰もが知っているはずが、多くの企業がいまだに、CM、商品開発、テレビ番組、雑誌コンテンツ、飲食店メニュー、話題を仕掛けるイベント、デジタルを駆使した店舗など、あらゆることがいまだに若い世代を基準にしていることです。もちろん、シニア向け商品やサービスは以前と比べて増えてきてはいますがそれでも若者中心である印象を否めません。最も分かりやすい例はテレビ番組です。若い世代はテレビではなくネットフリックスやユーチューブを視聴し、一方で高齢者はテレビ視聴時間が長いことは、テレビ業界にいない人ですら知っていることですが、なぜいまだに若い世代向けのテレビ番組が多いのでしょう。それでいて「視聴率が低い」と嘆いているのですから不思議でなりません。ネットフリックスやユーチューブではなく、テレビをよく見る高齢者を対象とした番組を作る方がよっぽど理にかなってるのではないでしょうか。
日本の消費は頭打ち、と海外進出に目を向けたり、訪日外国人を対象にする戦略に切り替える企業が増えていますが、その前に、まずは意外にも未開拓地である国内の中高年層に戦略をシフトするのも大事ではないでしょうか。なぜなら、中高年層が楽しめるモノ・コトは、若者世代と比較して圧倒的に少なく、多くの中高年女性がそこに不満を抱いているからです。ある60代女性にインタビューしたとき、彼女はこんなことを言っていました。「世の中のいろんなことが若い人向け。年を重ねた私たちが楽しめることや欲しいと思う物ってとても少ない。高齢社会と言われている割には、高齢女性にやさしくない社会ですよね。」と嘆いていました。中高年層は、若い世代と比較するとお金は持ってますし、シェアより所有を好む傾向があります。ビジネスチャンスは十分にあります。
4.「飽き」との闘いをどう克服するか?
「売れる期間」が、極端に短くなっています。理由はモノ・コト・情報が膨大にあふれかえっている今の市場では、消費者の「飽き」が非常に早いスピードでやってくるからです。分かりやすい例がスーパーフードです。Aというスーパーフードが流行っていたと思ったら、数カ月後にはもう次の新スーパーフードが女性の関心を集める。こういったことがあらゆる市場で起きています。消費者を飽きさせず、長期にわたり買って頂くためにはどうすればいいのか?早急に対策したい課題です。
5.二極化への対応をどう進めるか?
働く女性の増加や、お金を稼ぐ環境が整ってきていることを背景に、収入を増やす女性が増えていることは本日お伝えした通りで、今後、富裕層とそうではない層の二極化はさらに進んでいきます。収入による二極化だけでなく、デジタルリテラシーの二極化も今後顕著になっていくでしょう。全体的に女性のデジタルリテラシーやデジタルニーズは男性よりも低いですが、それでもデジタルリテラシーが高い女性の方が消費や社会生活の面で得をすることは増えていくはずです。デジタル派女性とデジタル苦手派女性の二極化が進み、所得の二極化も進む。企業は進む二極化にどのように対応するか?が求められます。
6.可処分時間をどう獲得するか?
本日お伝えした通り、今後多くの女性が時間を創出できるようになります。また、残り時間が少ない高齢者にとっても最も貴重なのが時間です。消費者の間で「時間の価値」が高まる中、各社こぞって女性消費者の「可処分所得」ではなく「可処分時間」獲得に動き出し始めています。限られた時間を1分でも多く自社に割いてもらうためにはどうすれば良いのか?要検討事項です。
期待の女性市場
最後、期待の女性市場をお伝えします。
1.「働く女性世代」対象の「リカバリー市場」
1つ目は「働く女性世代」対象のリカバリー市場です。職場では生産性向上や効率化、女性活躍を求められ、疲れやストレスがたまるばかりの働く女性たち。全年代の働く女性たちが求めるのは「癒し」や「ストレス緩和」ではなく、「リカバリー、つまり回復」までできること。癒されて終わるだけでリカバリーまでできなければ、また翌日・翌週から100%の力で頑張れないからです。疲れている働く女性だけでなく、月経・更年期などで定期的・継続的に体が“だるく”なる女性も「癒された後に、リカバリーまでできる」ニーズは強いです。
2.「高齢女性世代」対象の「一般のモノ・コト市場」
2つ目は「高齢女性世代」対象の「一般のモノ・コト市場」です。シニア向け商品サービスが続々と登場していますが、いずれも80~100歳代を想定されたものは少ないのが現状です。高齢者市場、特に80代以上を対象にしようとすると、どうしても介護・医療が中心となりがちですが、医療技術・ヘルスケア産業の急速な発展で、今後は元気な80代以上の女性も同時に増えていくでしょう。「高齢女性を対象とした、介護・医療系ではない、普通のモノコト市場」は今後大きな可能性があります。この市場は競合がとても少ないのも魅力の一つです。
3.「全女性世代」対象の「リアルな交流市場」と「芸術・エンタメ市場」
3つ目は「全女性世代」対象の「リアルな交流市場」と「芸術・エンタメ市場」です。ありきたりの買い物に飽きてきた女性たちの関心は、近年、アートなどの芸術に向き始めています。実際に、芸術家と愛好家をマッチングするサイトが登場したり、アート専門店の売れ行きが伸びていたり、絵画のレンタルサービスが登場したりと、これまでどちらかというと富裕層や一部の限られた人、あるいは高齢者層の楽しみ方だったアート・芸術が幅広い層の女性たちの生活に自然と取り入れられています。例えばデジタルアートを手掛けるチームラボによるイベントはいずれもとても人気です。アート・芸術は新しいエンタメとして関心を高めています。
以上です。本日の内容が一つでも皆様の女性マーケティング戦略のヒントにお役立て頂けますと嬉しい限りです。本日は誠にありがとうございました。
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