消費者がネット通販で「便利」または「不利益が生じるかも」と感じているもの
自社サイトへのトラフィックを増やすためにリスティング広告を出稿したり、自社サイト内での購入促進を目的に決済アプリと連携したポイント付与やインフルエンサーによる宣伝などを行う企業は多い。消費者の利便性も考慮し、情報の入力を省略してワンクリックで購入できる仕組みを導入するケースも今や一般化しつつある。だがそれって本当に、マーケティング施策として正解?
消費者庁の調査によると、こういったネット購入における各マーケティング施策を消費者が「便利だ」と感じる場合もあれば、逆に「不利益が生じるかも」と感じる場合もあり、さらに、その感じ方には年代によって差が見られることもわかった。購入促進どころか、逆に不信感を抱かせているかもしれない。キャンペーンや広告・宣伝などの施策を設計する際は、ターゲット層の年齢を考慮する必要がありそうだ(消費者庁「令和4年度 消費者意識基本調査」2022.11実地,全国の15歳以上の男女10,000人)。
目次
年代によって差、「便利」「不利益」と感じさせているマーケ施策
全国の15〜70歳以上の男女1万人に、「インターネットでの予約や購入で『便利だと感じるもの』または『不利益が生じると感じるもの』」について、以下の項目別に聞いた(有効回答数5,634人)。
- 決済アプリと連携したポイント付与やクーポン
- ポイントやランクが上がっていくキャンペーン
- 検索結果の上位におすすめ商品が表示される仕組み
- 検索履歴や購入履歴を基に表示される広告
- 「他の人はこの商品も買っています」と関連商品が表示される仕組み
- 入力を省略して、ワンクリックなどで購入できる仕組み
- 動画・マンガなどの一部が無料公開されている広告・キャンペーン
- SNS上の繋がりや関心を基に表示される広告
- インフルエンサーによる商品・サービスの宣伝
- 年齢や性別、収入、居住地などに合わせて表示される広告(例:転職サイトやマッチングアプリなど)
その結果を年齢階級別にまとめたのが、以下グラフ。全体的に年齢が若いほど「便利」と感じている項目が多く、例えば「インフルエンサーによる商品・サービスの宣伝」「SNSのつながりや関心を基に表示される広告」「動画・マンガなどの一部が無料公開されている広告・キャンペーン」を便利だと感じるのは10代後半では4割を超えているが、70歳以上では1割を切っている。「ポイントやランクが上がっていくキャンペーン」「決済アプリと連携したポイント付与やクーポン」についても同様の傾向が見られ、10代後半〜50代においては5〜7割が便利だと感じているものの、70歳以上では3割前後にとどまる。
反対に「不利益が生じるおそれがあると感じるもの」については、全体的に中高年の割合が高い。豊富な買い物経験を積んでいることから企業のマーケティングに安易に乗らないよう気を付けているのかもしれないし、実店舗での購入ではない買い物にネガティブなイメージを持っていたり、乏しいデジタルリテラシーからネット購入に抵抗を感じているのかもしれない。例えば「『他の人はこの商品も買っています』と関連商品が表示される仕組み」や「ポイントやランクが上がっていくキャンペーン」を、「不利益が生じるおそれがあると感じる」と回答したのは、全年代の中で70歳以上が最多だった。
男女別ランキングはほぼ同じ、性差より年代に考慮を
「便利と感じるもの」と「不利益を生じるおそれがあると感じるもの」は、男女間で差があるのか?調査結果を男女別で見たところ、「便利」と「不利益」ともに、ランキングはほぼ同じで割合も同程度。デジタルマーケティングやECマーケティングの施策は、性差よりも年代で考えるのが正解と言えそうだ。
便利だと感じるもの、トップ5(男女別)
女性
- 1位:決済アプリが連携したポイント付与やクーポン…62.7%
- 2位:ポイントやランクが上がっていくキャンペーン…57.6%
- 3位:検索結果の上位のおすすめの商品が表示される仕組み…47.6%
- 4位:検索結果や購入履歴を基に表示される広告…43.2%
- 5位:「他の人はこの商品も買っています」と関連商品が表示される仕組み…34.2%
男性
- 1位:決済アプリが連携したポイント付与やクーポン…59.1%
- 2位:ポイントやランクが上がっていくキャンペーン…52.2%
- 3位:検索結果の上位のおすすめの商品が表示される仕組み…49.5%
- 4位:検索結果や購入履歴を基に表示される広告…43.7%
- 5位:「他の人はこの商品も買っています」と関連商品が表示される仕組み…34.1%
不利益が生じるおそれがあると感じるもの、トップ5(男女別)
女性
- 1位:年齢や性別、収入、居住地等に合わせて表示される広告…58.7%
- 2位:SNS上のつながりや関心を基に表示される広告…56.8%
- 3位:入力を省略して、ワンクリック等で購入できる仕組み…51.9%
- 4位:インフルエンサーによる商品・サービスの宣伝…46.8%
- 5位:検索履歴や購入履歴を基に表示される広告…42.8%
男性
- 1位:SNS上のつながりや関心を基に表示される広告…58.5%
- 2位:年齢や性別、収入、居住地等に合わせて表示される広告…56.8%
- 3位:インフルエンサーによる商品・サービスの宣伝…52.5%
- 4位:入力を省略して、ワンクリック等で購入できる仕組み…51.1%
- 5位:検索履歴や購入履歴を基に表示される広告…44.2%
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