F1層とは?特徴・トレンド・消費行動(2020年)
トレンドサイクルが加速度的に変化し、さらに価値観が多様化している今のF1層。F1層のトレンドをつかむのは難しい印象があるが、ライフコース視点で分類して考えるとわかりやすい。現代のF1層の特徴とトレンドをつかむコツを解説。
目次
F1層の意味と特徴
F1層とは?
F1層とは女性のうち20〜34歳を指す。Female(女性)の頭文字であるFを使って表現する。マスコミや広告業界などを中心に企業のマーケティング用語として使われる言葉で、製品開発やプロモーションの際に世代で区分してターゲット女性の特徴や消費傾向を捉えることを目的としている。女性はF1層、F2層、F3層の3つに分類される。
- F1層…20〜34歳の女性
- F2層…35〜49歳の女性
- F3層…50歳以上の女性
女性を「F」で表現するのに対し男性は「M(Male)」で表現し、同様に以下3つに分類できる。
- M1層…20〜34歳の男性
- M2層…35〜49歳の男性
- M3層…50歳以上の男性
成人以下については「C」と「T」を用いて次のように表現する。
- C層(Child)…4〜12歳の男女
- T層(Teenager)…13〜19歳の男女
生活者を捉えるのにこのような分類が長らく業界では使われてきたが、近年はライフコースの多様化により成人以上を単純に1〜3のみに分類して考えるのは古いとの指摘があるが、女性のライフステージ、体の変化、消費行動を大枠で理解する上では今でも役立つ考え方。ざっくりと各層の女性を説明するとそれぞれ次のような特徴をあげられる。
ライフステージ | 体の変化 | 消費行動 | |
F1層 | ・就職 ・結婚 ・妊娠、出産 ・育児 |
・PMS ・妊娠、出産による体の変化 |
自分への消費が活発。特に美容やファッションへの消費に意欲的。 |
F2層 | ・妊娠、出産 ・育児 ・復職 |
・PMS ・妊娠、出産による体の変化 ・エイジングサインの始まり ・日々のタスクが多く慢性疲労 ・プレ更年期 ・更年期 |
未婚・既婚問わず、高額の出費が増えたりローンが始まる。住宅、自動車、教育費など。 |
F3層 | ・育児 ・復職 ・子の独立 ・退職 ・家族の介護 |
・顕著なエイジングサイン ・閉経 ・更年期や加齢による様々な不調や持病を抱える |
自分や家族(特に親)のヘルスケア消費が増える。 |
F1層の人口
国内のF1層の人口は9,517,000人(総務省統計局,平成30年)で、F1層〜F3層の中で最も少ない。
- F1層… 9,517,000人
- F2層…13,087,000人
- F3層…31,906,000人
なお、M1層〜M3層の人口については次の通りで、同様にM1層は最も少ない。
- M1層…9,996,000人
- M2層…13,411,000人
- M3層…27,170,000人
F1層は7分類
なお、女性マーケティング専門の弊社ウーマンズでは、企業がターゲットにした場合に、事業として成立するだけの消費パワーがあるF1層を7クラスターに分類。分類詳細については以下をご参照頂きたい。
F1層の消費行動の特徴
F1層は最も消費意欲が高いが、“コスパ”を重視
F1層は、F1〜3層の中で自分への関心が最も高く消費に意欲的。社会人になり収入を得られるようになったことで特に自分消費が活発で、この層においては化粧品やヘア、ファッションなど自分の外見磨きに関する消費が好き。また、トレンドに敏感で新しい商品やサービスへの消費に対する心理的ハードルが低い。このようにF1層は消費に意欲的なので企業に人気のターゲット層だ。
だだ気をつけたいのは、自分への興味・関心が高いといっても、近年のF1層は消費にシビアな点だ。節約志向の高まりで若者の消費支出は以前よりも減少している。30歳未満の単身者に絞られたデータになるが、消費者白書(消費者庁,平成29年)によると男女ともにこの年齢層の消費支出は減少傾向にあり、女性においては1999~2014年の間で「被覆及び履物費」は-7,576円、「食料費」は-7,372円と、減少している。
この変化を見ると、近年言われている「若い世代は消費をしなくなった」裏付けのように感じてしまうが、必ずしもそうとは言い切れない。F1層を中心に安価で品質の良い商品は今大人気だ。ユニクロ、H&Mなどのファストファッションや、100円ショップ、300円ショップのコスメや生活雑貨は「コスパが良い!」と高く評価され、今や「おしゃれ上手」「お買い物上手」の代名詞。ブランド至上主義であった一昔前なら恥ずかしくておおっぴらには言えなかった “ 安上がりの買い物 ” や ” コスパ重視 ” が、今は若い女性たちにとって重要な消費判断基準になっている。特にそれが顕著なのが100円ショップ。化粧品、コスメ、美容アイテム、生活雑貨のカテゴリーで数々のヒット商品を生み出しており、機能性以外に、今までにありそうでなかったアイディアや今時の女性の心をつかむデザインセンスが高く評価されている。F1層の消費金額は減少傾向にあるが、コスパが良いものにはお金をかけるのがF1層の大きな特徴だ。
ライフコース別に異なる特徴
コスパを重視しながら消費意欲に活発なのがF1層の大きな特徴だが、ライフコースによって異なる特徴が見られる。
シングル女性の消費行動の特徴
シングル女性はほぼすべての収入を自由に使えるので、F1層の中でも特に自分消費が活発。美容、ヘルスケア、ファッション、女子会、旅行、スキルアップなどの消費に意欲的。
既婚女性の消費行動の特徴
既婚で子あり・専業主婦の女性の場合は、自分消費よりも家族消費が活発。自分自身の就労による収入がないこともあり自由に使えるお金は少なく、家事・夫・子どもに関連する消費が中心。
既婚で子あり・仕事ありの女性の場合も、同様に家事・夫・子どもに関する消費が中心だが、自分消費や時短商品への消費も活発。自身の収入があるので経済的に多少余裕があり、仕事と家事・育児を両立するためにお金を時間で買う傾向が強い。収入がある上に仕事で外出する機会も多いので、自分の美容消費や疲れをためないためのヘルスケア消費にも意欲的。
F1層が好きなもの(トレンド)
F1層が好きなモノ・コトや興味を、キーワードと一言解説で見てみよう。
<スマホ>
スマホは生活の中心で、スマホで何でもこなす。商品選択も購入・決済も口コミも、家族・友人とのコミュニケーションも、ラジオ・動画の視聴や体のケアなどもすべてスマホ1台で管理。
<SNS>
SNSで人間関係を構築したり自分を表現するなど、SNSは自身のアイデンティティのコアを形成している。SNSでの「いいね」を自分の評価軸にする傾向が強く、「SNS映え」「インスタ映え」は一大トレンドに。
<アプリ>
情報収集、通販、フリマ出品、メイクやヘアスタイルのハウツー、ダイエット、食事管理、エクササイズ、月経管理、スキルアップ、ゲーム、子ども向けの知育・遊びなど、欲しいこと・やりたいことはたいていアプリで済ませる。F1層〜F3層の中で最もアプリを最大限活用する世代。
<インフルエンサー>
芸能人やファッションモデルにも憧れるが、F1層はもっと身近なインフルエンサーを憧れの対象とし手本にする。InstagramのインフルエンサーやYou Tuberからメイクやヘアスタイル、ファッションなどを習得する行動は日常的に見られる。
インフルエンサー勢力図
<シェア>
「所有」よりも「シェア」を好む。自分の親とコスメを共有したり、自分の子どもと化粧品をシェアするのは日常的。自動車・自転車はシェアリングで十分。新品へのこだわりは強くなく、他人の使いかけの化粧品をフリマで購入する文化もF1層が作り出した。
<DIY>
何でも簡単に手に入る時代だからこそ「あえて手づくりをしたい」ニーズが高まっていることと、コスパ重視や個性を大事にしたいという考えから、自分だけのオリジナルを生み出せるDIYがブーム。生活雑貨もメイクパレットもアクセサリーも、今のF1層は簡単に手づくりする。
<昭和レトロ>
F1層にとって自分が知らない昭和は、「古い」ではなく「レトロ」「おしゃれ」「かわいい」。インスタ映えすることからも、母親や祖母が使っていたコスメや雑貨などを投稿する女性は多い。
<スキルアップ>
F1層の中でも特にスキルアップに興味・関心が高いのは20代後半以降。仕事で経験を積み、また、結婚・出産などライフプランを考える時期にあたるため、必然的にキャリアプランを考えるようになるからだ。
F1層の検索傾向
F1層を理解するのに押さえておきたいのが、特徴的な検索行動。F2層以上はインターネットで情報を得る時、グーグルやヤフーなどの検索エンジンを使うのが主流だが、F1層はSNSでの検索を活用する。リアルタイムで検索できる点や、広告ではないリアルな情報を得られることに利便性を感じている。
検索傾向と合わせて特徴的なのは、F1層が参考にしている情報源。中高年層はテレビの情報源を参考にする人が最多であるのに対し、F1層はインターネットの情報が最多という調査結果がある。デジタルネイティブ世代でもあるF1層にとってインターネットからあらゆる情報を得るのは日常的であると同時に、インターネットでの情報収集が消費や行動に影響を与えていることがうかがえる。
F1層の情報源はネット
F1層のトレンドを調査する方法と、ささるプロモーション
F1層のトレンドのつかみ方
F1層のトレンドをつかむにはライフコース別にトレンドを捉える必要がある。ライフコースの特徴を理解した上でそれぞれに人気の媒体(雑誌、テレビ、webメディア、コミュニティサイトなど)をチェックすると、的確にトレンドやニーズを見つけられる。
なお、2020年の女性の最新トレンドについては弊社ウーマンズが2020年2月20日に幕張メッセ開催展示会「オリジナル商品開発week」の講演で登壇した際に発表させて頂いた「2020年女性市場トレンドと消費傾向」をご覧頂きたい。
F1層に人気のメディア
F1層はマスメディア(テレビ、ラジオ、雑誌、新聞)よりもインターネットを一番の情報収集源としているので、F1層のアクセスを集める人気webメディアやF1層をターゲットにした人気商品の企業のオウンドメディアを見るのがトレンドやニーズ発見の参考になるが、ここでは女性誌を例にライフコース別の違いを見てみたい。インターネットとスマホの普及で女性誌の発行部数は年々減少しているが、雑誌は年代・ライフステージ・趣味などでターゲットを絞りこんで作っているので参考になることは多く、流行をつかむ方法としては最適。雑誌は発売の3カ月前に企画・制作されるため若干の時間差はあるが、トレンドの傾向をつかむには十分だ。雑誌からは、ターゲット女性が好む世界観、言葉づかい、興味・関心ゴト、トレンド、習慣、価値観、悩み・不満、所属コミュニティー、消費行動、金銭感覚などさまざまな情報を得られる。ここでは、F1層を未婚・既婚に分け、それぞれのライフコースにいる女性たちがどのような雑誌を好むのかピックアップする。
未婚女性に人気のメディア
自分消費が活発なF1層未婚女性が好むのは、ファッション誌や美容専門誌、ヘアスタイル誌、ダイエット誌、旅行誌など。F2層やF3層向けの雑誌と比べると、提案するファッションやメイクのスタイルが幅広いのが20代前半向けの女性誌の特徴。派手系、ナチュラル系、キレイ系、かわいい系など実にさまざま。20代前半向けのものは独身の女性をターゲットに紙面作りされているので、基本的には紙面に子どもは登場せず、彼氏、恋愛、デート、婚活、女子会などのトピックが豊富だが、20代後半〜30代前半向けになると、スキルアップ、ライフプラン、結婚・妊娠・出産など、「生き方・働き方」にフォーカスしたトピックが増え、ヘルスケアに関するトピックでは「美容」よりも「健康」が多くなる。次にあげるのは、未婚女性に読まれている代表的な女性誌
- 美容3大雑誌(美的、マキア、ヴォーチェ)
美容に特化した情報豊富な美容専門誌。毎年同時期に発表される各誌のベストコスメは女性や業界からの注目度が高く、美容業界のトレンドをつかむのにも重宝できる - ViVi
20代前半の女性向けファッション雑誌。モデルにはトリンドル玲奈さんや河北麻友子さん、谷まりあさんなどタレントとしても活躍する有名人の顔ぶれが並ぶ。 - non-no
カジュアル&ガーリースタイルを提案。20歳前後の女性が対象 - Ray
ガーリー&フェミニンスタイルを提案。10代後半〜20代前半の女性向け - MORE
働く女性向け、通勤服・カジュアル・フェミニンスタイルを提案。25歳以上の女性向け - CLASSY
20代後半〜30代前半の、都市型の働く女性向け。オシャレな通勤服やカジュアルスタイルを提案 - ヴァンサンカン
エレガントスタイルやラグジュアリースタイルを提案する、富裕層向けファッション誌 - GOSSIPS
米国セレブのファッション・コスメ・ゴシップ情報が豊富。派手なファッションやメイクを好む女性たちに読まれている - CREA
旅行、美容、ダイエットなど毎号1つの特集に絞った紙面作りが特徴。主な読者は30代の働く女性。特に旅行や美容に興味がある女性たちに読まれている
既婚女性に人気のメデイア
既婚女性と言っても専業主婦と就業中の女性では消費行動や興味・関心は異なるが、近年の働く女性の増加で、就業中、あるいは復職を予定している産休・育休女性をターゲットに紙面作りされているものが多い。家事、育児、節約、シーズナルイベントに関するトピックが豊富。F2層を対象にしたものでもママ向け雑誌はあるが、F1層のママ向けの場合は子どもがまだ小さいこともあり、子どもと一緒に楽しめるファッションスタイルやヘアメイク、シーズナルイベントの楽しみ方を提案するものが多い。
- ひよこクラブ・たまごクラブ
妊娠・出産時に読まれるママたちのバイブル本。 - LDK
商品をテストして真実を読者に伝えるモノ批評誌。節約派の若いママに人気 - サンキュ
家事・育児、ママの美容・健康など幅広く情報を発信。30代のママ向け - VERY
おしゃれなママを提案する、30代のママ向け大人カジュアルファッション誌。シロガネーゼ、サロネーゼ、イケダン、リーマムなど、これまでにさまざまなトレンドワードを生み出している
F1層にささるプロモーション
F1層にささるプロモーションについても、未婚女性と既婚女性それぞれのライフスタイルや消費行動や価値観を考慮して設計すべきだが、今のF1層にささるプロモーションに共通しているのは以下。
<視覚的インパクトのあるプロモーション>
モノ・コトを共有したり自分をSNS上で表現する文化を持つF1層は、SNSに投稿したくなるような視覚的インパクトのあるものに興味をひかれる。目新しいデザインや意外性をついたものなど、いわゆるインスタ映えするもの。インスタ映えのための消費が特に2017年前後で活発になったが、インスタ映えのためにあちこち奔走するのに疲れ始めた女性が増えたのも事実。とは言っても、やはり視覚的インパクトがあるものは「共有したいニーズ」をくすぐるので情報が拡散されやすい。
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<企業×私のコラボのプロモーション>
F1層は企業から色々と押し付けられ消費に受動的になるのは嫌いな世代。一方的に与えられるよりも、自分や自分と同世代の声を反映してくれる企業に好印象を持つ。
<友達感覚のプロモーション>
堅い雰囲気やかしこまることが苦手なF1層は、企業とも友達感覚でいたい。SNS世代であるF1層にとって、すぐに繋がれる芸能人や有名人、企業は、友達と同様にとても身近な存在だからだ。だから企業とは対等でいたい。企業と自分の間に壁を感じさせないプロモーションはF1層受けが良い。
<頑張りすぎない・自分を受容してくれるプロモーション>
「無理はしない」「自分を押し殺さない」「自分らしく」という自分主体で自然体の生き方を好むのがF1層。過剰に頑張らせるようなCMなどは敬遠される。
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<アニメを活用したプロモーション>
アニメやコスプレ文化を、オタクだけのものではなく一般社会に急速に浸透させたのが今のF1層。人気アニメとコラボした商品は次々に女性の心をつかんでいる。写真映えすることから、SNS上でも話題になりやすい。
<You Tuber/V tuberを活用したプロモーション>
F1層にとって身近な存在である人気のインフルエンサーを活用したプロモーションは、芸能人より信頼できる印象も手伝い注目度は高い。アニメと同様、今後さらにプロモーションの活用事例が増えると予想される。
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マスのスモール化を考慮する
多様化する女性をF1層〜F3層の3分類でとらえるのは限界があるが、ライフステージ、体の変化、消費行動で区分して捉えると、トレンドや消費傾向をつかみやすくなる。マスがスモール化していることを踏まえてトレンドを定点観測してくと、マーケティングの成功率が高まる。
F2層マーケティングの考え方
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