体験型じゃなくてもイケる!共感で引き込んだ広告コピー6選

キラリと光るヘルスケア企業の広告事例を全4回の連載でお届けするコーナー。第1回目の「体験型で巻き込む、ヘルスケア企業の広告事例」に続き、第2回目の今回は「体験型じゃなくてもイケる!共感で引き込む広告コピー事例」。体験型のクリエイティブ制作が難しいなら、言葉で一気に引き込め!

目は、むきだしの臓器です(ジンズ)

まずはメガネのジンズ の事例から。こちらは朝日新聞社と協賛企業が企業広告案を一般の人から募る広告プロジェクト(#広告しようぜ)から生まれた広告(2020年)。協賛企業6社(サイバーエージェント,パーソル,ジンズ,ソーダストリーム,オージービーフ,水ing)それぞれの企業活動に沿ったテーマの広告案を募集したもので、応募総数5,225案の中から各社が採用を決定。採用された広告案は、同年12月29日の朝日新聞朝刊に企業広告として掲載された。

協賛企業の1社であるジンズは「メガネを見る目がまったく変わってしまうような広告案」を募った。そのリクエストに応え採用されたのがこちら。

【出典】ジンズ

【出典】ジンズ

メガネを新しい切り口から定義したクリエイティブで、制作者は「コピー、デザインともに新しい切り口を探して、探して、たどり着いた」とのこと。インパクトあるビジュアルで引きつけ、従来の「メガネ=よく見えるようにするもの」という役割とは異なる他の役割「メガネ=物理的に目を守るもの」を、インパクトあるコピーで気づかせる点が唸らされる。「むき出しの臓器」と言われると、反射的に目を覆ったり保護したくならないだろうか?

 

ラベルレスボトルより、ボトルレス(ソーダストリーム)

前述のジンズ同様に、「#広告しようぜ」で採用された事例をもう一つ。協賛企業の1社である家庭用炭酸水メーカーのソーダストリームが募ったのはプラスチックゴミを減らす広告案で、「ソーダストリーム社が、余分なプラスチックゴミを出さない生活を通じて持続可能な社会づくりに貢献していることが伝わる広告を制作してほしい」とリクエスト。採用されたのが以下の「ラベルレスボトルよりボトルレス」。

【出典】ソーダストリーム

【出典】ソーダストリーム

環境配慮の点からラベルレスのペットボトルが最近増えているが、とは言え結局、プラスチックのリサイクルに環境負荷がかかっているのは事実。その問題に目をつけたのがこちらのクリエィティブで、「ラベルレスよりももっと環境に優しいのは、ゴミそのものを出さないこと(プリサイクル)」という、環境問題の本質を突いた気づきを与えている。

クリエイティブ制作者は、「近年のペットボトル”ラベルレス化”の動きに掛け、環境を意識しつつ壮大になりすぎない内容を目指しました」。

 

今こそ殺菌力(リステリン)

次に、洗口液ブランドのリステリンの事例を見てみよう。同社はコロナ禍の今年2月、「今こそ、殺菌力」とでかでかと新聞広告を掲載(読売新聞)。リステリンそのものにはCOVID-19を殺菌する効果はないが(同社HPより)、コロナ禍による口腔ケアニーズを反映したクリエィティブだ。

 

 

口腔ケアは、感染対策の一つとして昨年から関心が高まっている。受診控えから虫歯・歯周病をセルフケアしたい人が増えていることが背景にあるが、口中に虫歯や歯周病の原因菌が広がることで体の抵抗力が落ちることが知られるようになり、感染対策の一つとして口腔ケアニーズが高まっている。

COVID-19という時事トピックを「今こそ」という緊急性と絡めることで、商品の特徴である殺菌力を示しつつスムーズに自分ゴト化させている点が参考になる。口腔ケアの習慣がこれまでなかった無関心層であっても、このコピーを目にして意識変容が起きた人は少なくないはず。

 

スナック人生100年時代へ(湖池屋)

最近よく見かける広告コピーのトレンドと言えば、「人生100年時代」。ライフシフト(著:アンドリュー・スコットら)のベストセラーにより、2017年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされて以降、この言葉が急速に広がり、特にヘルスケア関連企業が率先してマーケティングに活用するようになった。湖池屋もその一社。

【出典】湖池屋

【出典】湖池屋

同社が2020年の年頭広告として新聞に掲載したのが、「スナック人生100年時代へ」。創業以来スナック菓子を通して人々の口に美味しさ・楽しさを提供してきた企業として「日本人の口を健康にしたい」との思いから、同社は口腔ケア用の乳酸菌の研究を開始。その取り組みを、「人生100年時代」の言葉を用いて年頭広告で発表した。

健康からは遠いイメージのあるスナック菓子メーカーが「人生100年時代」の言葉を用いて健康訴求することに一瞬、意外性を感じるが、同社が口腔ケアに着目した理由を知ると「そういうことか!」と合点がいく(以下)

100歳になってもスナック菓子を美味しく食べられる人生は、とても健康で、幸せな人生だと思うから。引用:湖池屋)

 

スナック菓子を提供する企業だからこその視点だ。意外性を感じさせた後に、「確かに、お菓子を食べられなくなる人生は嫌だな…」と考えさせるのがうまい。

 

100年mouth,100年health(サンスター)

もう一つ、「人生100年時代」のトレンドを活用した事例を見てみよう。オーラルケアのサンスターが2020年に企業CMとして公開したのが、「100年mouth,100年health」。

【出典】サンスター

【出典】サンスター

人生100年時代を健康に楽しむためにオーラルケアの必要性を訴える内容で、CM内には次のコピーが入る。

「人生が100年になってゆく。人生を100%楽しめますか?100年食べる。100年しゃべる。100年笑う。毎日のオーラルケアでそれが目指せるとしたら」

オーラルケアカンパニーによる直球の口腔ケア訴求なので特段のひねりはなく、湖池屋のような意外性やインパクトには欠けるが、長生き時代だからこそ「人生の最後までQOLを維持するために口腔ケア」と気づかせる点においては、こちらの事例も参考になる。

 

私だけの治療法をください(中外製薬)

遺伝子情報に基づき個別に最適な治療を提供する「個別化医療」のパイオニアとして、中外製薬が2020年12月に掲載した新聞広告で採用したコピーが、「私だけの治療法をください」(毎日新聞,読売新聞,日経新聞)

個別化医療の概念を、消費者にわかりやすい言葉に言い換えた点が参考になる。同じ病気の患者に一律同じ治療法が提供される従来の一般的な方法ではなく、自分の体の状態に最適化された「自分だけの治療法」を望む患者に刺さる言葉だ。実際に、このクリエィティブの広告効果を調査したところ、広告理解度において高い評価を得たという。

 

 

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