2017年「脳の健康」10 大ニュースまとめ

2017 年は昨年に引き続き脳トレや認知症予防に関連する情報が多くのメディアで取り上げられた他、 「脳の休息」や「脳のパフォーマンス向上」をテーマにした睡眠やマインドフルネスが注目され、中高年だけでなく若い世代も「脳の健康」を意識し始めた年となった。一方で高齢ドライバーによる事故や、砂川啓介・大山のぶ代夫妻のニュースなど、認知症が大きな社会課題であることを痛感する1年に。

マンツーマンのパーソナル脳トレーニングジム「ブレインフィットネス(東京・渋谷)」を運営するイノベイジ(東京・渋谷)が発表した「2017 年の脳の健康10 大ニュース」から、この1年を振り返ってみよう。

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1.アルツハイマー病の3分の1以上が予防できる可能性

7月にロンドンで開催された2017年アルツハイマー病協会国際会議(以下 AAIC2017)において、「認知症症例の3分の1以上が、生活習慣を改善することで予防できる可能性がある」とランセット委員会より報告された。研究によると、認知症の全症例の約35%が、修正可能な生活習慣に起因することが示されている。特に認知症になっていない中高年層の高血圧を積極的に治療することが強く推奨され、また、定期的な運動、社会的関与の維持、禁煙のほか、難聴、うつ病、糖尿病、および肥満の改善などを推奨すると、発表された。中高年からの生活習慣改善の必要性が改めて明らかになったと言える。

2.米国版フィンガー研究の実施発表

AAIC2017にて、米国で高齢者2,500人を対象に2,000万ドルをかけて、多角的な生活習慣介入による認知症予防の可能性を探るための臨床試験「The U.S. study to PrOtect through a lifestyle INTErvention to Reduce risk=US POINTER」を実施することが発表された。多角的な生活習慣介入による認知機能改善効果を示した研究は、2014年に同会議で報告されたフィンランドのフィンガー研究(対象:1,260名 期間:2年間)が有名。 認知症の根本治療薬がない現在ではフィンガー研究は大きな可能性を示した研究だった。「米国版フィンガー研究」の結果に注目が集まる。

3.認知機能関連市場規模調査、相次いで発表

今年は脳トレや認知症予防に関する市場規模調査がいくつか発表された。2月にMarketsandMarkets社(米)より発表された市場レポートによると、市場は、グローバルで2016年で約10憶ドル市場、2021年には約41億ドル市場となり、2016年から2021年の年間平均成長率は33.8%であると発表された。特に最大のシェアを誇る北米では、認知障害のある人に限らず、健常者においても脳をトレーニングすることが注目されている。この市場を動かす主な要因は、人口の高齢化、ブレインフィットネスに関する意識の高まり、技術の進歩などがあげられるとのこと。また、7月にOccams Business Research and Consulting社(印)より発表された調査においても、認知機能アセスメント・トレーニング市場は、2023年までの年間平均成長率は33.8%であると発表された。認知機能関連の市場がグローバルで成長が期待される市場であることが分かる。

4.世界の脳トレゲームのエビデンスレベルを精査・評価する論文の発表

1月、オーストラリアにて世界の脳トレプログラムに関するエビデンスを多数分析し、ランク付けした論文が発表された。コンピュータ等で利用可能な18社の脳トレプログラムについてそれぞれが公表するエビデンスを調べ、その中から効果的であることを示すエビデンスが存在した7社の製品を、信頼性に基づいてランク分けしたものだ。結果は次の通りとなった。

  • レベル1: Positscience (BrainHQ)とCogniFit
  • レベル2: Cogmed、Brain Age、My Brain Trainer
  • レベル3: DakimとLumosity

※分類の判断基準は以下のように設定。
レベル1: 少なくとも2つ以上の高度にデザインされたランダム化比較試験があり、1つは高品質なもの。
レベル2: 1つの高品質なランダム化比較試験があるもの。

レベル3: 低~中程度にデザインされたランダム化比較試験が1つ以上あるもの 等

5.今年も失敗が続いた認知症治療薬

2月、米製薬大手メルクは、アルツハイマー型認知症治療薬「ベルベセスタット」の臨床試験を一部打ち切ることを発表した。昨年11月のイーライリリー社の「ソラネズマブ」の失敗に続き、残念な結果となった。

バイオジェンジャパン社が、開発中の「アデュカヌマブ」が厚生労働省の先駆け審査指定品目に指定されたことを発表するなど期待がもてるものもあるが、当面根本治療薬がない状況が続く以上、認知症予防の必要性がますます浮き彫りになった1年と言える。

6.「睡眠負債」流行語大賞トップテンに

昨今、認知機能との関連が明らかになり注目される睡眠。今年も「スタンフォード式 最高の睡眠」など睡眠関連の本がヒットしたり、睡眠アプリや快眠グッズが普及、質の良い睡眠をとるための研修を導入する企業も増えるなど睡眠関連産業は活況を呈した。

そして「睡眠負債」というキーワードが流行語大賞にノミネートされ、トップテンに選出された。「睡眠負債」はスタンフォード大学の研究者が提唱したもので、わずかな睡眠負債が日々積み重なることで、脳や体に悪影響を及ぼすという考えのことをいう。ペンシルバニア大学の、「1日6時間の睡眠を2週間続けたグループは、一晩徹夜したグループ以上に注意力が低下する」(※)という研究内容と併せて紹介され、インパクトを与えた。

※Van Dongen, H. P., Maislin, G., Mullington, J. M., & Dinges, D. F. (2003). The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleeprestriction and total sleep deprivation. Sleep, 26(2), 117-126.

7.マインドフルネスがさらに普及〜初の国際フォーラム「Zen2.0」開催

海外ではグーグルやゴールドマンサックス、アップル、日本ではヤフーやDeNAなど、多くの大手企業が以前から導入していたマインドフルネスが今年は特に注目を浴びる年となった。マインドフルネスをテーマにした特集記事や、「最高の休息法」などマインドフルネスに関する書籍が注目され、自宅で実践を始める人も徐々に増えてきた。また、大手フィットネスクラブやヨガ教室での導入も増えており、身近に体験できる場所が続々と増えている。9月には日本の禅の中心地でもある鎌倉 建長寺で初のマインドフルネス国際フォーラム「Zen2.0」が開催された。禅とマインドフルネスについて語り合う国際会議に、のべ500名を超える人が参加し、マインドフルネス人口の増加が示された。

8.東北大・日立ハイテクノロジーズ等が、脳科学の産業応用を目指し株式会社「NeU」を設立

東北大の認知脳科学の知見と、日立ハイテクノロジーズが開発した日常生活の中で簡単に脳血流量変化が計測できる携帯型脳活動計測技術を軸に、脳科学の産業応用事業を行う新会社「株式会社NeU(ニュー)」が設立された。11月にはNeU Brain Forum 2017が開催され、脳科学を活かした新たなマーケティングの事例や、脳の活動状態を示す新製品などが発表された。脳科学の産業応用が進むことが期待される。

9.記憶力などの認知機能維持・改善を目的とした商品が多数発売

ロッテの「歯につきにくいガム<記憶力を維持するタイプ>」や、明治の「チョコレート効果」の高カカオチョコレートなど、認知機能維持に効果的とされる商品がコンビニでも手軽に手に入るようになった。また、ロート製薬「キオグッド(R)顆粒」・小林製薬「ワスノン」・クラシエ薬品「アレデル顆粒」など、遠志エキスを使用した、もの忘れの改善を目的とした薬も次々とリリースされ、脳の健康維持や認知症予防がより身近なものとなり始めている。

10.認知症保険の契約者が急増

昨年3月に発売された太陽生命保険「ひまわり認知症治療保険」が異例のヒット商品となり、今年9月には販売件数が25万件を超えた。昨年4月に発売された朝日生命保険の「あんしん介護 認知症保険」も今年7月までに4万7000件を突破するなど、今年は認知症保険の契約者数が急増した。認知症に特化した保険がこれだけヒットしているのは、自分や家族が認知症になった場合の費用負担に対する強い不安を表していると言える。

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