最新技術で閉じ込め症候群でもタブレット操作が可能に?

電子メールやネットサーフィンは多くの人にとって日常生活に欠かせないものになっているが、病気や怪我による麻痺のために腕や手を使えない人にはこうしたテクノロジーを利用することは難しい。こうした中、米スタンフォード大学のPaul Nuyujukian氏らは、頭で考えるだけでタブレットを操作できる脳に埋め込むタイプのインプラントを開発した。麻痺患者を対象とした研究では、実際にこのインプラントによって既製のタブレット操作が可能になったという。この研究結果は「PLOS ONE」11月21日オンライン版に発表された。

Nuyujukian氏らが開発したインプラントは、脳波を読み取ってタブレット上のカーソルを動かしたりマウスをクリックしたりすることを可能にした。研究では、インプラントによって麻痺のある患者が一般的なタブレットのプログラムを操作したり、家族や友人にメッセージを送ったり、ウェブ検索や天気予報のチェック、ネットショッピングなどができるようになった。また、参加者のうちミュージシャンの患者はデジタルピアノのインターフェイスでベートーベンの「歓喜の歌」の一部を演奏できるようになったという。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)のために手足を動かせない患者2人と、脊髄損傷による麻痺患者1人の計3人を対象とした今回の研究では、患者の脳の運動皮質に電極のインプラントを埋め込み、また頭蓋骨に固定したプラグにつながる細いワイヤーの束も留置した。インプラントは低用量アスピリンの錠剤と同程度の大きさだという。

脳に埋め込まれたインプラントは脳のパターンをモニターし、その情報をコンピューターのアルゴリズムに入力する。それに基づき患者の考えが解読され、ワイヤレス信号に翻訳されてタブレットに送信されるという仕組みだ。「カーソルを左右、あるいは上下に動かすことを思い描く時にみられる神経活動パターンは、実際にそのように行動している時にみられるパターンとかなり似ている」と同氏は説明する。

今回の研究に参加した麻痺患者たちは、さまざまなアプリを使用してマウスのポイント・アンド・クリック操作(マウスのボタンを押して放す操作)を1分間に22回できるようになり、標準的な電子メールやショートメッセージのアプリを使用して1分間に最高で30字のテキスト入力もできるようになった。

Nuyujukian氏らは昨年にも同じ麻痺患者を対象に、頭で考えたことを文字入力する能力を評価した研究に関する論文を発表している。研究には関与していない米マウントサイナイ病院のThomas Oxley氏によれば、今回の研究ではそのシステムにスマートコンピューターの技術を組み合わせることで、操作の幅が広がった。例えば、入力する文字の予測機能を利用することで麻痺患者の文字入力のスピードが速まり、ソーシャルネットワークによる他者との交流にもつながったという。

Oxley氏は、このシステムが麻痺のために話すことができない閉じ込め症候群の患者の生活を大きく変えるのではないかと期待を寄せている。しかし、Nuyujukian氏は「脳深部刺激療法のデバイスや人工内耳のような他の埋め込み型デバイスのように、誰にでも使いやすいものに改良する必要がある」と話し、「このシステムを多くの患者が利用できるようになるまでにはかなり時間が必要だ」と付け加えている。(HealthDay News 2018年11月21日)Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.

 

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