【展示会レポ】フェムテックトーキョー事務局長に聞いた、「3年間の開催でフェムテック市場はどう変化した?」

フェムテックが一同に集結するBtoB/BtoCの展示会「Fem+(フェムプラス)」が、今月17〜19日まで東京ビッグサイトで開催された(主催:RX Japan)。約150社が出展、ビジネスデー3日間、一般公開は最終日。9,293人が来場した。フェムテックトーキョーを構成展とする「フェムプラス」の開催は、今回で3回目。出展製品の傾向や業界の関心は、3年間で徐々に変化しているという。編集部が、主催者やセミナー登壇者の話を聞いてきた。

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【撮影】ウーマンズラボ編集部(東京ビッグサイト入口)

 

2024年のFem+、出展トレンドは?

フェムプラスは「女性の健康と活躍」をコンセプトにした展示会。構成展は、女性特有の健康課題を解決する製品が出展する「フェムテックトーキョー」と、メンタルヘルスなどの製品が出展する「女性のウェルビーイング推進EXPO」で、2つのエリアで構成される。展示会主催者の事務局長・下田アトム氏に、今年の出展製品の傾向を聞いた。

 

【撮影】ウーマンズラボ編集部(会場マップ)

 

編集部
今年の出展製品の傾向は?第1回目の2022年、第2回目の2023年から、変化はありますか?

下田氏(フェムプラス事務局長)
今年は卵子凍結やタイミング法キット、サプリなど妊活ソリューションが増えました。出展製品のトレンドは毎年変化していて、2022年は吸水ショーツなど生理関連、2023年はデリケートゾーンが目立っていました。製薬企業の出展が傾向として見られるようになってきたのは2023年。今年はさらに製薬企業が増え、全体的に大手が増えたのも印象的です。今年はバイエル薬品、ゼリア新薬工業、ロート製薬、大正製薬、あすか製薬、エステー、花王、西川などが出展しています。

編集部
更年期ソリューションはいかがですか?

下田氏(Fem +事務局長)
更年期領域の出展は増えていませんが、業界の更年期に対する関心は、これまで3回の開催の中で最も高いと感じています。ビジネスデーでは多様なテーマでカンファレンスを企画したのですが、聴講申し込みが最も多かったのは、更年期に関する回でした。

編集部
更年期への関心の高さは、展示会の会場入り口でも感じました。来場者の関心のある健康カテゴリーを色付きシールで貼ってもらうという企画「Femアート」を拝見しましたが、実際に「更年期」のシールが最も多く貼られていましたね。

 

【撮影】ウーマンズラボ編集部(会場入口に設置したFemアートでは、来場者が自分の関心のある健康カテゴリーをシールの色によって表現。貼付枚数が多い順に、「1.更年期」「2.女性の健康全般」「3.女性のメンタルヘル」「4.生理」「5.妊活」)

 

編集部
スタートアップの動向はいかがですか?

下田氏(Fem +事務局長)
フェムプラスの立ち上げ当初はスタートアップの存在が大きく、出展者数も多かったのですが、今年は少なくなりました。当時は注目されていたものの事業から撤退したというケースもあり、市場の牽引者が変化してきたと感じています。ただ、スタートアップは新しい発想のソリューションを持っていますし、業界の発展に向けては重要な存在だと考えていますので、今年はスタートアップが出展できるエリアを新たに設けました。社会実装までは至っておらずアーリーステージの段階のものが多いですが、新たなソリューションが生まれるエリアとして、今後もスタートアップが出展しやすいよう強化していきます。

編集部
フェムテックの位置付けは、市場の中でどのように変化していると感じますか?

下田氏(Fem +事務局長)
以前と比べるとフェムテックは浸透し、市場としては大きくなってきていると感じます。社会的な位置付けも変化していて、単純に”女性の健康課題を解決”というよりは、”女性が活躍するために健康課題を解決する”という文脈で語られるようになりました。また、各社の事業の位置付けやPRにも変化が見られ、以前はフェムテックのブームに乗ろうと、さまざまな切り口から自社製品をフェムテックと定義する企業の出展も目立ちましたが、そういった企業は減り、本質的な製品を持つ企業が残っている、という印象があります。一方、生活者の認知向上や市場の広まりは感じるものの、出展対象となる企業の母数は市場でそれほど増えていない印象です。

編集部
下田さんは、こちらの展示会以外にも、AI、自治体、レジャー&アミューズメント、ライブエンタメなど、他業界の展示会の事務局長も務めています。他業界の展示会と比べ、フェムテックはいかがですか?多様な業界を見ているからこそ俯瞰できる目線もお持ちだと思うのですが、フェムテック市場は今後どうなると見ていますか?

下田氏(Fem +事務局長)
フェムプラスは、他の展示会と比べるとコンパクトです。例えばAIの展示会「NexTech Week」は約7万人が来場するんですが、各社のブースも大きく装飾も派手。関わる企業も多いから、出展者数も来場者数も多いんです。

編集部
その違いは、なぜだと見ていますか?

下田氏(Fem +事務局長)
他業界に比べるとフェムテック業界は、全体的に資金やヒトなどリソースの投資が圧倒的に乏しい。一方でAIなど、業界や市場で明確に”マスト”と認識されている領域では、大きなリソースが投入されていて、出展企業数も年々増えています。フェムテック市場が伸びているとは言え成長が緩やかなのは、企業の投資事情も大きいと感じます。女性の健康は社会的には”マスト”と認識されていますが、企業側の認識や行動はまだまだ追いついていないことが背景にあるのでしょう。”マスト感”や”スピード感”という意味では、各社のフェムテック事業の推進は全体としては弱いかもしれません。単純に展示会の来場者数のみで業界を比較できるものではありませんが、展示会主催者としての目線で言うなら、フェムテックはスピードが遅いだけで、着実に伸びていく市場だとは見ています。そもそも”女性の健康”そのものが消えることはありませんから。

編集部
次回以降の開催では、一般公開をやめビジネスデーを3日間にするとのこと。背景を教えてください。

下田氏(Fem +事務局長)
フェムプラスを立ち上げた当初から、同展のミッションとして「パートナーや家族の方と来ていただき、よりオープンに語れる雰囲気を醸成し、学びの場を提供する」ことを掲げてきました。その実現のため、さまざまな会場内コンテンツを企画してきました。ですが昨今は、生活者がフェムテックを手に取れる場所は全国的に格段に増え、オープンに話せるようにもなってきました。生活者がわざわざこの展示会に出向く必要性は、ポジティブな意味でなくなってきました。こういった市場の変化から、今後本展を継続的に発展させていくためには、我々の役割も変化させるフェーズが来たと感じています。今後は、より業界側のニーズに応えるため、BtoBに特化させることにしました。

編集部
ありがとうございました。

【撮影】ウーマンズラボ編集部(左:カンファレンスに女性の健康総合センターセンター長の小宮ひろみ氏が登壇 中:出展エリアには製薬企業の出展が目立った 右:メディアパートナーによるオープンセミナー)

 

 

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