【男女の違いシリーズvol.35】女性の脳は男性よりも老化速度が遅い?

女性の脳は男性の脳に比べて老化速度が遅い可能性があることが、米ワシントン大学医学部マリンクロット放射線医学研究所のManu Goyal氏らによる研究から明らかになった。女性の脳は同じ年齢の男性よりも約3歳若いことが分かったという。この研究結果は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」2月4日オンライン版に発表された。

Goyal氏は「女性は高齢になるほど、認知機能検査のスコアが男性よりも高くなる傾向がみられる」と説明する。今回の研究結果は、男性よりも女性の方が、高齢になっても明晰な頭脳が長く保たれる傾向がある理由の一端を説明しうるものだとしている。

Goyal氏らは、コンピュータプログラムを用いて脳の代謝変化による人の年齢の予測能を評価するため、今回の研究に乗り出した。研究では、20~82歳の男女205人を対象に、脳画像検査により脳内の酸素やブドウ糖の流れを測定した。次に、この脳画像データをコンピュータプログラムに取り込んだ。

さらに、男女それぞれの年齢と脳の代謝データをコンピュータアルゴリズムに取り込んで学習させた。その結果、男性の年齢と脳代謝パターンを基準とすると、女性の脳の年齢は実年齢と比べて平均で3.8歳若いと判定された。次に、女性の年齢と脳代謝パターンを基準に設定したところ、男性の脳の年齢は実年齢よりも平均で2.4歳年老いていると判定された。また、こうした脳年齢の男女差は、20歳代の男女を比較した場合にも認められた。

脳は、エネルギー源として大量のブドウ糖や酸素を必要とするが、その取り込み方がこうした差を生んでいるのではないかと、Goyal氏らは推測している。「脳がどのようにブドウ糖や酸素を消費し、脳のどの部位でこれらを最も利用しているのかは、加齢に伴って変化する」と同氏は説明している。

また、Goyal氏らは、このような男女差は思春期に既に生じたものではないかとも推測している。「思春期の脳の変化には男女差がある。男性では脳の血流がわずかに減少するのに対し、女性ではそれほど減少はみられない」と説明し、こうした男女の脳の発達の違いが、その後の脳の老い方に影響しているのではないかと指摘している。ただし、その影響は比較的小さいため、加齢に伴う認知機能の低下度の違いをこれだけで直接説明することはできないとしている。

さらに、Goyal氏は「この研究結果は、男性よりも女性の方が加齢に伴う脳の特定の変化への抵抗力がわずかに高いことを示したものだ。ただし、逆に新たな脆弱性が生じる可能性もある。認知症は複雑な過程をとる疾患であり、この結果がどのような意味を持つのかは、結論を急ぐべきではない」と話している。

今回の研究には関与していない米レノックス・ヒル病院の神経科医であるGayatri Devi氏は「実際には、脳代謝は認知症などにはほとんど影響していないのではないか」と指摘する。同氏は「一般的に男性よりも女性の方が脳は若々しいとされているが、アルツハイマー病を発症するリスクは女性の方が高い。これには、閉経後に急激に減少するエストロゲン以外にも、さまざまな因子が関与している可能性がある」と話している。(HealthDay News 2019年2月4日)Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.

 

【編集部おすすめ記事】
シニアの恋愛事情「認知症ぎみだった女性が恋をして生き生き」
「スマート脳ドック」受診者1万人突破、データ公表 アンファー
化粧品に対する気持ちの変化を脳科学研究で解明 資生堂
VRは脳をどう変えるか?