【男女の違いVol.44】 更年期の症状・意識・症状改善緩和のための行動
男性更年期の社会的関心が高まっている。厚生労働省が昨年、国として初めて実施した両性の更年期症状に関する調査結果(更年期症状・障害に関する意識調査,2022.7.26)を各メディアが報じた影響が大きく、以後、男性にも焦点を当てた更年期の民間調査を目にする機会が増えた。
SNSの浸透による情報の流通や女性の健康ブームを背景に、女性更年期はここ10年ほどで認知が進み、女性自身の更年期に対する向き合い方や受け止め方もだいぶ変わってきた。一方で男性更年期は、具体的な症状はおろか男性にも更年期があることを知らない人はいまだ多い。花王が昨年11月に実施した調査によると「更年期を認めたくない」と思うのは男性に多く女性の3倍というから、男女間の意識差についてもだいぶ開きがあるようだ。
女性更年期と男性更年期、一体何が違う?女性と男性、それぞれの症状・意識・症状改善緩和のための行動の違いを見ていこう(幸年期マチュアライフ協会,2023.2,調査対象:30〜60代の男女2,000名)。
目次
更年期の認知・関心・知識
認知・関心
質問は「更年期の知識や関心について」。女性更年期については、女性の認知は高く8割越えだが、男性の認知は低く約5割。男性更年期については男女ともに認知・関心は5割ほど。男性であっても約半数は男性更年期に関心がないことが明らかに。
知識
質問は「更年期について知っていること」。全体的に女性の方が知っていることが多く、更年期の知識がある。「知っているものはない」と回答したのは男性に多く、男性3割、女性1割。
更年期の症状
慢性的な症状
質問は「更年期に感じる慢性的・定期的な症状」。総じて女性の方が症状を挙げる人が多く、特に男女差が大きいのは、女性更年期によく見られる「発汗・のぼせ」「冷え性」「頭痛」や、「肌のたるみ・フェイスラインの崩れ」「肌の黄ぐすみ・シミ・肝斑」といった美容面。反対に男性に多いのは「腰痛」「高血圧」や、男性特有の「精力低下」「勃起力低下」。
<女性>
- 1位:老眼(38.7%)
- 2位:首や肩などのコリ(37.0%)
- 3位:精神不安定(イライラ・不安)(33.3%)
- 4位:肌のたるみ・フェイスラインの崩れ(32.5%)
- 5位:睡眠不良(不眠・寝不足)(29.4%)
<男性>
- 1位:老眼(35.6%)
- 2位:精神不安定(イライラ・不安)(28.4%)
- 3位:腰痛(27.9%)
- 4位:睡眠不良(不眠・寝不足)(27.9%)
- 5位:首や肩などのコリ(27.5%)
最もつらい症状
質問は「最もつらいと感じる更年期の症状」。男女ともに最多は「情緒不安定」で、割合も同程度。2位以降を見ると、更年期症状における男女の違いがわかる。
<女性>
- 1位:精神不安定(イライラ・不安)(16.5%)
- 2位:発汗・のぼせ・顔の赤み(12.0%)
- 3位:倦怠感(6.7%)
- 4位:頭痛(6.2%)
- 5位:睡眠不良(不眠・寝不足)(5.9%)
<男性>
- 1位:精神不安定(イライラ・不安)(16.2%)
- 2位:腰痛(9.5%)
- 3位:睡眠不良(不眠・寝不足)(5.9%)
- 4位:首や肩のコリ(5.0%)
- 5位:便秘や下痢、おなかのハリなど便通の不調(5.0%)
日常に支障をきたす症状
質問は「日常生活に支障をきたすような更年期障害だと思う症状」。男女ともに「精神不安定」「睡眠不良」「痛み(女性は頭痛、男性は腰痛)」が上位に。
<女性>
- 1位:精神不安定(イライラ・不安)(31.7%)
- 2位:睡眠不良(不眠・寝不足)(24.1%)
- 3位:頭痛(21.3%)
- 4位:倦怠感(21.0%)
- 5位:首や肩などのコリ(20.4%)
<男性>
- 1位:精神不安定(イライラ・不安)(27.5%)
- 2位:睡眠不良(不眠・寝不足)(19.8%)
- 3位:腰痛(18.5%)
- 4位:倦怠感(15.8%)
- 5位:便秘や下痢、おなかのハリなど便通の不調(14.9%)
更年期がもたらす支障
質問は「更年期の症状によって、あなたが普段の生活で『つらい・支障を感じる』こと」。男女ともに、精神的にも体力的にも活発になれないことを更年期による支障として挙げている。男女差が見られるのは「家事」「仕事」で、「家事に支障が出る」と挙げた人が多いのは女性で、「仕事に支障が出る」は男性に多い。
<女性>
- 1位:すぐ疲れてしまう(39.8%)
- 2位:何事も億劫になる(38.9%)
- 3位:活発に活動ができない(31.9%)
- 4位:夜眠れない/熟睡できない(29.1%)
- 5位:家事の効率が悪くなる・ミスが増える(27.7%)
<男性>
- 1位:活発に活動ができない(33.8%)
- 2位:仕事の効率が悪くなる・ミスが増える(31.1%)
- 3位:何事も億劫になる(27.9%)
- 4位:すぐ疲れてしまう(25.2%)
- 5位:何事も集中できない・集中力が続かない(23.9%)
更年期のニーズ
最も改善したい症状
質問は「最も改善したい更年期の症状」。男女ともに最も改善したいのは、前問の「最もつらい症状」「日常に支障をきたす症状」でも1位だった「精神不安定」。
<女性>
- 1位:精神不安定(イライラ・不安)(14.6%)
- 2位:発汗・のぼせ・顔の赤み(11.2%)
- 3位:PMS(月経前症候群)、月経随伴症状(生理中に起きる症状)(7.8%)
- 4位:便秘や下痢、おなかのハリなど便通の不調(6.4%)
- 5位:頭痛(5.9%)
<男性>
- 1位:精神不安定(イライラ・不安)(16.2%)
- 2位:腰痛(8.6%)
- 3位:睡眠不良(不眠・寝不足)(7.2%)
- 4位:鬱(6.3%)
- 5位:便秘や下痢、おなかのハリなど便通の不調(5.9%)
周りに更年期の人がいたら、どうしてあげたい?
質問は「あなたのまわりに更年期症状だと思われる人がいた場合、どんな気持ちになる?」。女性は更年期・生理・PMS・出産の経験を通じて共感できるからか、約半数が「理解して、できるだけサポートしたい」と答えている。一方で男性は3割にとどまり、2.4割は「理解はできないので、周りがなんとかできる問題ではない」と、サポートの意向が見られない。更年期に対する理解不足が背景にある可能性もある。更年期当事者をサポートする空気を社会全体で醸成するには、男性の理解が必要であることを読み取れる。
更年期の症状改善緩和のための行動
対処法の認知・実行 〜医療・専門サービス〜
まずは、医療・専門サービスの解決策の”認知”について。質問は「更年期の症状の改善・緩和・予防のための対処法について、知っているもの」。女性は男性よりも多様な解決策を知っていることがわかる結果に。一方で男性が知っているのは「医師の診断・治療・相談」。女性更年期の症状は多岐にわたるため、本人も医師も解決策の判断がつきづらく、いわゆる”病院ジプシー”に陥りやすいことが指摘されているが、実は男性の方が”病院ジプシー”に陥りやすい可能性も。
<女性>
- 1位:定期的な医師の診断・治療・相談(43.7%)
- 2位:更年期向けの市販薬・市販の漢方薬服用(31.0%)
- 3位:男性/女性ホルモン補充療法(29.1%)
- 4位:医師による処方薬(漢方含む)の服用(29.0%)
- 5位:更年期症状緩和サプリメントの服用(27.3%)
<男性>
- 1位:定期的な医師の診断・治療・相談(34.6%)
- 2位:不定期な医師の診断・治療・相談(15.3%)
- 3位:医師による処方薬(漢方含む)の服用(13.9%)
- 4位:整体・マッサージ(11.9%)
- 5位:男性/女性ホルモン補充療法(9.5%)
続いて、医療・専門サービスの解決策の”実行”について。質問は「更年期の症状の改善・緩和・予防のための対処法について、過去に行ったことがあるもの」。男女ともに「定期的な医師の診断・治療・相談」が最多。だが最多とは言え、全体で見ると1割程度。症状改善のために、医療機関や専門サービスといった方法で対処を試みるのは少数派のようだ。
<女性>
- 1位:定期的な医師の診断・治療・相談(11.0%)
- 2位:医師による処方薬(漢方含む)の服用(5.8%)
- 3位:更年期向けの市販薬・市販の漢方薬服用(5.5%)
- 4位:整体・マッサージ(5.2%)
- 5位:更年期症状緩和サプリメントの服用(4.8%)
<男性>
- 1位:定期的な医師の診断・治療・相談(15.0%)
- 2位:整体・マッサージ(6.1%)
- 3位:不定期な医師の診断・治療・相談(3.8%)
- 4位:医師による処方薬(漢方含む)の服用(3.3%)
- 5位:針治療(2.2%)
対処法の認知・実行 〜医療・専門サービス以外〜
次に、医療・専門サービス以外の解決策の”認知”について。質問は「更年期の症状の改善・緩和・予防のための対処法について、知っているもの」。男女ともに1位は「睡眠をしっかりとる」だが、前問同様に、全体的に女性の方が多様な対処法を知っていることがわかる。
<女性>
- 1位:睡眠をしっかりとる(33.3%)
- 2位:休養をとる(家事・仕事を休む)(29.4%)
- 3位:ストレッチやウォーキングなどの軽い運動(27.0%)
- 4位:身体を温める(湯舟に浸かる・温かいものを飲む等)(25.2%)
- 5位:水分をしっかり摂る(23.7%)
<男性>
- 1位:睡眠をしっかりとる(19.6%)
- 2位:ストレッチやウォーキングなどの軽い運動(19.5%)
- 3位:休養をとる(家事・仕事を休む)(15.2%)
- 4位:水分をしっかり摂る(13.7%)
- 5位:買い物や旅行等で気分転換をする(12.8%)
- 5位:趣味等の好きなことに没頭する(12.8%)
続いて、医療・専門サービス以外の解決策の”実行”について。質問は「更年期の症状の改善・緩和・予防のための対処法について、過去に行ったことがあるもの」。健康行動者率は一般的に女性の方が高いからなのか、あるいは、対処法を知らない男性が多いせいか、全体的に女性の方が対処を試みた経験がある人が多い。選択する対処法にも性差が。男性は運動や趣味など体を動かす方法を選ぶ傾向があるのに対し、女性は体を休める方法を選ぶ傾向に。
<女性>
- 1位:睡眠をしっかりとる(19.9%)
- 2位:休養をとる(家事・仕事を休む)(15.5%)
- 3位:身体を温める(湯舟に浸かる・温かいものを飲む等)(15.3%)
- 4位:ストレッチやウォーキングなどの軽い運動(15.0%)
- 5位:水分をしっかり摂る(14.7%)
<男性>
- 1位:ストレッチやウォーキングなどの軽い運動(14.1%)
- 2位:睡眠をしっかりとる(13.3%)
- 3位:趣味等の好きなことに没頭する(9.8%)
- 4位:水分をしっかり摂る(9.4%)
- 5位:休養をとる(家事・仕事を休む)(8.4%)
調査項目
本稿で取り上げた他、当調査では更年期の情報源や相談ニーズ、医療サービスの満足度などについても調べている。特に参考になるのは対処行動に関する質問。「過去に行ったもの」「現在行なっているもの」「今後も行いたいもの」、それぞれで聞いており、商品開発やマーケティングの参考になる。詳細は幸年期マチュアライフ協会のHPから問合せを。全調査項目は以下。
- 普段の生活で「カラダやココロの調子」が優れないと感じること
- 普段の生活で「身心の健康のために気をつけていること」
- 女性更年期の知識や関心について
- 男性更年期の知識や関心について
- 更年期について知っていること
- 更年期による不調が普段の生活へ影響をもたらすと思うこと
- 更年期による不調が普段の生活へ最も大きく影響をもたらすと思うこと
- 現在「更年期」にあてはまると思うか?
- 普段「更年期特有の症状」と言われる症状を感じることはあるか?
- 「更年期の症状」の悩み度合い
- 「定期的・慢性的」に感じる更年期の症状
- 「不定期」に感じる更年期の症状
- 「最もつらい」と感じる更年期の症状
- 最も改善したい更年期の症状
- 日常生活に支障をきたすような「更年期障害」だと思う症状
- 「更年期の症状」によって、普段の生活で「つらいと感じる/支障を感じる」こと
- 「更年期の症状」が楽に感じられるのはどんな時?
- 今抱えている更年期の症状や将来の体調不安が緩和したら、日頃どのような気持ちになる?
- 「更年期の症状」の改善・緩和・予防のための対処法について知っているもの
- 「更年期の症状」の改善・緩和・予防のための対処法について、過去に行ったことがあるもの
- 「更年期の症状」の改善・緩和・予防のための対処法について、現在、行っているもの。
- 「更年期の症状」の改善・緩和・予防のための対処法について、現在、最も行っているもの
- 「更年期の症状」の改善・緩和・予防のための対処法について、今後(も)、行いたいもの。
- 「更年期の症状」の改善・緩和・予防として、あなたが行ったことがあるものについてどの程度満足しているか?
- 「更年期症状」の改善・緩和・予防対処法に効果を感じた際に、同じように更年期に悩む他の方に共有したいと思うか?その際、どのような方法で共有すると思うか?
- 「更年期症状」の改善・緩和・予防のために、今後、医療サービスを利用したいと思うか?
- 更年期症状の改善・緩和・予防の情報を見聞きしたことがあるもの
- 更年期症状の改善・緩和・予防の情報を最もよく見聞きするもの
- あなたご自身の更年期や、更年期症状の改善・緩和・予防の情報に関して、これまでに相談したことがある人は誰?
- 前問の、これまでに更年期や更年期症状の改善・緩和・予防について相談した人について、あなたがその人に相談した理由は?
- 勤め先や家庭内で、更年期による不調時に配慮があると思うか?
- あなたのまわりに「更年期症状」だと思われる方がいた場合、あなたの気持ちに最もあてはまるものは?
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