大盛況、介護・医療の展示会で「ファッションウォーク」、要介護者と現役介護士がランウェイを闊歩 ケアショー・ジャパン
介護・医療の専門展示会「ケアショー・ジャパン」が、2月26〜28日まで東京ビッグサイトで開催された(主催:インフィーママーケッツジャパン)。目玉企画は、一般社団法人 KAiGO PRiDE(東京・渋谷)によるファッショオンウォーク「LiNK WALK」。現役の介護士と要介護者が、華やかなファッションに身を包みながらランウェイを闊歩するイベントで、同展示会で初の開催。多くのビジネスパーソンが観覧し、拍手を贈った。
KAiGO PRiDEは、広告業界出身のクリエイター、マンジョット・ベディ氏が主導するプロジェクト。「介護は大変、つらい」という印象を変えることを目指して10年前に活動を始めた。日本の介護は世界的に見て水準が高いにも関わらず、介護業界や介護職のイメージは良いとは言えない。介護職の社会的評価を高めなければ人手不足などの課題は解決できないとの思いから、ファッションウォークや現役介護士のポートレート写真展、現役介護士が本音を語るトークセッションなど、人目を引くコンテンツを企画。全国各地でイベントを開催してきた。
活動の根幹に据えるのは、クリエイティブの力。広告業界で仕事をしてきた経験から、クリエイティブの力で課題を解決できるのではと確信。本メディア記者がベディ氏に、広告業界出身だからこその強みを尋ねたところ、「広告マンとしての考え方や戦略の設計が、プロジェクト推進に活きてきた。企業が、クリエイティブを始めとしたマーケティングの力で商品・サービスを売っていくのと同じで、マーケティングの力を使って、介護業界のリブランディングを図っている。ファッションウォークに関しては、デザイン、ファッション、音楽の力を組み合わせることで、人々の五感を刺激している。そうすることで、要介護者や介護士のイメージ刷新に繋げられると考えている」。
同時に、介護職本人が前面に出て声を発信することも重視しているという。「介護職に就いている本人がどんどん前に出て、自分の言葉で直接発信することに意味がある。介護職の魅力は、介護の仕事をしている人自らが語らないと共感が生まれないし、人々の心は動かない」。同氏によれば、介護士は自分の仕事をポジティブに捉えていても、その魅力をうまく社会に発信できていないという。そこで、現役介護士が本音を語るトークセッションも実施。同展示会内では初日に行われ、現役介護士が介護職に就いた理由や魅力を語った。
その様子を温かい眼差しで見守っていた一人が、同展示会プロジェクトマネージャーの太田浩市氏。「胸が熱くなった」と、感想を述べた。KAiGO PRiDEとのタイアップ開催を決めた理由を尋ねると、「介護業界のリブランディングを図っているKAiGO PRiDEの取り組みを、もっと多くの業界人に知ってほしい」と答えた。「展示会を開催するプラットフォーマーの立場だからこそできる、社会課題の解決方法がある。展示会は多くの企業が集う場所。そういう場所で、KAiGO PRiDEの取り組みを知ってもらう機会を創り出すことで、介護における社会課題の解決に貢献できるのではと思った。介護業界の人手不足に対してはDX強化や外国人雇用などが行われているが、それだけでは足りないという課題認識は我々も持っていて、介護職の社会的地位を高めるための業界全体のリブランディングを図ろうとする点に共感した」。
同展示会内で初開催となったこの取り組み。目玉企画として来場者を呼び込めるのか、ファッションウォークを観覧してもらえるのか、はじめは不安もあったという。だが、それは杞憂に終わったようだ。記者が「多くの人が観覧していましたね。感動で涙を拭う方々の姿も目立ちました」と言うと、「やって良かった」と笑顔を見せた。
ファッションウォークは、これまで全国各地で開催してきたが、BtoBに特化した展示会内で開催するのは、これが初めて。マンジョット・ベディ氏に意図を尋ねたところ、「業界全体のリブランディングに向けて、ここからは本格的なエコシステムの構築が必要。そのためには企業の力が必須。いろんな企業と一緒に取り組んでいきたいとの思いから、BtoB展示会の中での開催を決めた」。
ファッションウォークの観覧者からも、感動の声が続々。「要介護者も介護士もどちらも満面の笑顔で、感動した」「要介護者も介護士も、両方を応援したいと思った」「KAiGO PRiDEなら、本気で介護業界を変えるのでは。明るい未来が待っているかもしれない」など、ポジティブな感想が数多く聞かれた。介護業界に新風を吹き込む存在として、今後の動きに注目が集まる。
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