フィメイル・セントリシティ(女性患者中心)を目指す富士製薬工業の取り組みとは? 森田社長に取材
製薬業界向けのカンファレンス「Ubie Pharma Summit 2025」が今月14〜15日に都内で開催された(主催:Ubie Pharma Summit 2025 実行委員会)。製薬企業の経営・マネジメント層やマーケティング部門など延べ約1,000人が参加。製薬業界が取り組む、患者の視点やニーズを重視する「ペイシェント・セントリシティ(患者中心)」をテーマに、業界のリーダーらが議論を展開した。
初日の基調講演には、岸田前首相が登壇。日本の医療政策の未来と製薬業界への期待を語る中で、「ペイシェント・セントリシティは社会課題の解決の核となる考え方」とした上で、「社会課題の解決を経済成長のエンジンにする、という考えに基づいた経済モデルに一致する」と述べた。
製薬企業3社の代表取締役が登壇したパネルディスカッションでは、各社のペイシェント・セントリシティの位置付けや取り組み状況を紹介した。ペイシェント・セントリシティの実現は容易ではないものの、3社は共通して「重視している」と強調。バイオジェン・ジャパンの傳幸諭氏は「ペイシェント・セントリシティは、経営判断の一丁目一番地と考えている」、ブリストル・マイヤーズ スクイブの勝間英仁氏は「製薬企業が持続的に成長していくためには、患者中心での価値創造が必要」、産婦人科領域を中心とした医療用医薬品を開発する富士製薬工業の森田周平氏は「“ペイシェント・セントリシティ”というより、“フィメイル・セントリシティ”の考え方。女性のアンメットニーズを捉えて、新たな価値を提供していきたい」と述べた。

【撮影】ウーマンズラボ編集部(3社の代表取締役によるパネルディスカッション。左から主催者ユビーのモデレーター、富士製薬工業の森田周平氏、バイオジェン・ジャパンの傳幸諭氏、ブリストル・マイヤーズ スクイブの勝間英仁氏)
森田氏が言う「フィメイル・セントリシティ(女性患者中心)」とは何なのか?実現を目指し、具体的にどのような取り組みを進めているのか?本メディアの記者が森田氏に尋ねたところ、「“女性患者中心”の実現に向けては、社内の女性従業員の声を反映することが重要だと感じている」と答えた。男性従業員だけの会議よりも女性従業員を交えた方が、取り組むべき女性のアンメットニーズをしっかり拾うことができるため、事業化の可能性が広がるという。実際にそういった経験を現場で感じてきたことから「“女性患者中心”を実現するための第一歩が、社内の女性目線を活かして事業化を検討することだと考えている」とのこと。
ただ、患者中心の実現はそう簡単ではないとした上で、「今後アンメットニーズを捉えていく中で、対象患者数が小さい市場においては、企業経営とどう両立させていくかが課題」と述べた。また現状は、月経困難症や更年期障害、不妊症など女性ホルモンに関連した治療薬が事業の中心だが、今後は、男女共通疾患のうち女性の患者数が多い病気や、女性に特有の症状に焦点を当てるなど、性差医療にも注目していきたいと語った。
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