訪日・在留外国人が過去最多に、新たな医療・健康需要を取り込む各社の取り組み 〜m3キャリア・メディハオ・JIIの事例〜
今年上半期の訪日外国人客が2,151万人で過去最多となり、在留外国人も過去最多の395万人に(今年6月末時点)ーー。日本に滞在する外国人が年々増える中、言語や制度面の違いから、体調不良時の解決策に迷ったり医療機関の受診に難しさを感じる人が増えている。一方、人手不足の状況下で対応を迫られる医療機関や宿泊施設側にも負担が。こうした両者の課題を解決しようと、各社からさまざまなサービスが生まれている。
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ホテルフロントの負担軽減、訪日外国人向けオンライン診療(M3キャリア)
訪日外国人の増加で課題が顕著となっているのが、外国人観光客が体調不良になった際の対応。これまで宿泊施設では、訪日外国人の体調不良時にはフロントスタッフが、症状の聞き取りや医療機関の手配や救急車の手続きをしており、施設側に多くの負担がかかっていた。そういった課題を解決するのが、医療人材ビジネスを展開するエムスリーキャリア(東京・港)が今年4月に本格展開を始めた、訪日外国人向けオンライン診療サービス「HOTEL de DOCTOR 24」。医療通訳付きのオンライン診療を即時提供する仕組みで、24時間対応。
同社が宿泊施設に実施したヒアリングでは、「宿泊客の言語に対応可能な病院の捜索に労力がかかる」「フロントスタッフが症状をヒアリングするものの、正確に理解できているか不安」「深夜・早朝の体調不良対応に苦慮している」といった声が聞かれ、同サービスはこうした負担軽減に貢献する。西武プリンスホテルズ&リゾーツなどの宿泊施設で導入が進み、今後は、鉄道会社や航空会社など、観光のあらゆるタッチポイントで提供していきたいとしている。
国内の医療機関向け、中国人患者のためのサイト制作に特化(メディハオ)
訪日中国人の増加に伴い中国語対応の重要性も高まっているものの、英語対応は進む一方で、中国語サイトの整備が遅れている医療機関は多い。そんな課題に着目したのは、医療機関支援のメディハオ(東京)。中国語に特化した医療機関向けのサイト制作サービス「Chiweb(チャイウェブ)」を、今年10月に開始した。中国人患者に最適化した情報を届けるため、ユーザー視点を取り入れたデザイン設計や、医療分野に特化した翻訳体制に重点を置いており、中国のトレンドや視覚的嗜好にも配慮して制作する。翻訳は、医療通訳者、中国人の一般消費者、同社専門スタッフによる三重チェックを実施。医療用語の専門性を損なうことなく、読み手に確実に伝わる中国語表現を提供する。
外国人の妊婦向け、日本での出産に備えるワークショップ(JII)
在留外国人の増加で共生社会の実現が叫ばれる中、外国人の産前産後の不安に寄り添う取り組みも。外国人を支援する特定非営利活動法人JII(東京・目黒)が2023年から開催しているのが、日本での出産や産後の生活を実践的に学ぶ、英語でのワークショップ。対象は外国人妊婦とそのパートナーで、日本の病院での出産の流れ、母子保健制度、産後の身体の変化や赤ちゃんとの生活、パートナーの支援などを、教材や育児グッズ、ビデオなどを使ってわかりやすく解説する。言語や文化の壁により、外国人妊婦は出産や制度理解に不安を抱きやすいといった課題に対応するもので、これまで15カ国以上の人が参加してきた。「安心して出産に臨めた」と好評を得ているという。直近では、11月29日に聖路加国際大学で開催。
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