シニア女性のデジタル行動調査から見えた、シニアマーケティング戦略
本稿は、企業のシニアマーケティングを支援するOmelette株式会社(東京・港)による連載記事です。310万人の会員を抱えるシニア向けSNS「らくらくコミュニティ(※)」の運営支援に携わる中で得た、シニア女性向けのデジタルマーケティングの知見を共有します。前回の「シニア女性向けのデジタルマーケティング、成功事例と失敗事例」に続き今回は、シニア女性のデジタル行動の特徴から、効果的な広告戦略を見ていきます。デジタル接点が年々拡大しているシニア女性に向けたデジタルマーケティングの秘訣は、「健康インサイト×生活文脈×デジタル施策」にあると言います。(※)運営:FCNT合同会社
目次
シニア女性×デジタル、シニアマーケティングの現在地
シニア女性は「健康」「美容」「暮らしやすさ」への関心が高く、購買や情報収集の意思決定において大きな影響力を持っています。シニア世代の情報接点は、従来はテレビや新聞といったオフラインメディアが中心でしたが、近年はインターネットや動画サービスを活用する姿も顕著になっています。本稿では、会員数310万人のシニアSNS「らくらくコミュニティ」のアンケート調査をもとに、男女別のデジタル行動を比較。とりわけ女性の特徴に焦点を当て、シニアマーケティングの可能性を探ります(調査は2025年8月に実施,60~80代の男女113人)。
健康情報源の性差から考察、「広告設計のポイント」
女性は口コミ+二大チャネル、男性は幅広い媒体を利用
健康情報源について、女性は「テレビ(68.9%)」と「インターネット(68.9%)」の二大チャネルが突出して高く、そこに「新聞・雑誌(35.6%)」や「家族・知人(24.4%)」が加わるのが特徴です。特に「家族・知人」は男性の約4倍と大きな差があり、口コミや人からの紹介が女性の意思決定を大きく左右している可能性を読み取れます。一方で男性は、「テレビ(56.1%)」と「インターネット(51.5%)」に加え、「新聞・雑誌(31.8%)」や「動画(28.8%)」も一定の割合で利用しており、比較的幅広い媒体を組み合わせていることが分かります。
シニア向け広告、女性はクロスメディア戦略、男性はメディアミックス戦略
女性はテレビやネットで強い接触を持ちつつ、VOCや口コミを介した間接的な情報源を重視する傾向が強いことから、レビュー記事やコミュニティを活用してナーチャリングするといった、情報取得段階別に訴求内容を変化させるクロスメディア戦略が成果につながります。一方、男性は新聞や動画も含め幅広くチャネルを活用するため、検索や記事型広告や動画コンテンツを組み合わせて同じ内容を訴求する、メディアミックス戦略が有効です。
デジタルサービス利用の性差から再考、「デジタルマーケティング戦略」
女性は利用経験が豊富、男性は未利用が多数
デジタルサービスとの接点や利用状況を把握するため、シニア層の関心が高い「認知症や脳トレ」をテーマにしたアプリやデジタルサービスの利用状況について、聞いてみました。認知症予防や脳トレ関連アプリについて、男性は「使ったことがない」が56.1%と過半数を占めています。女性も48.9%と依然として高い数値ですが、注目すべきは「時々(17.8%)」や「使ったことがあるが続かなかった(17.8%)」といった利用経験者の割合が、男性を上回っている点です。つまり、女性は「まず試してみる」姿勢が強く、デジタルサービスに対する心理的ハードルが相対的に低いといえます。
体験型や口コミ連動で拡張する、シニア女性向けマーケティング
この結果は、女性の方が健康デジタルサービスに前向きで、チャレンジ経験を持つ層が厚いことを示しています。脳トレアプリや認知症予防アプリはまだ普及過渡期にありますが、動画や記事を通じて「生活習慣に組み込みやすい」体験を提示することで、 利用拡大を期待できます。シニアマーケティングの観点では、女性を起点に体験型プロモーションや口コミ連動施策を展開することが、新しい市場開拓につながります。男性に比べて女性は「新しいものを試す」傾向が強いため、体験型プロモーションや口コミ連動の施策が特に有効です。
購買行動の性差から見えた、「シニア女性のEC利用と日常消費の親和性」
店舗依存は男女共通、女性はEC活用度が高い
食料品など日常品の購入場所を聞いた質問では、男女ともに「店舗」が9割以上と圧倒的。しかし女性は、日常品の買い物のインターネット利用(31.1%)はもとより、日常品の買い物以外でも「インターネット(62.2%)」の値が有意に高く、オンライン購買を男性より積極的に行っていました。男性のインターネット利用は、日常品の買い物時は24.2%、日常品の買い物以外では54.5%と、いずれにおいても女性との差が際立っています。
女性のオンライン購買は健康・日用品が中心
インターネットでよく購入する品目を見ると、男性は「家電・電子機器(25.8%)」や「趣味用品(25.8%)」が目立つ一方、女性は「日用品・生活雑貨(55.6%)」「健康食品・サプリメント(24.4%)」が中心でした。女性の購買行動は、家族全体の生活や健康を支える日常消費に直結しています。店舗での購入が中心だった日用品もECサイト利用が進んでおり、複数の接触ポイントを活かしたO2O施策との親和性が高いと考えられます。
動画視聴行動の性差から考える、「動画マーケティング活用法」
女性は生活・健康志向、男性は趣味・娯楽中心
動画視聴のジャンルを聞いた質問では、女性は「旅行・グルメの紹介動画(20.0%)」や「趣味(46.7%)」も視聴しているものの、「生活お役立ち動画(46.7%)」と「健康や医療関連動画(37.8%)」が男性と比べて突出して高く、生活や健康に直結する実用情報を重視していることが分かります。一方、男性は「趣味(47.0%)」や「音楽・歌番組(28.8%)」「旅行・グルメの紹介動画(24.2%)」といった、娯楽系や趣味的要素の強いコンテンツを好む傾向が見られました。また「ニュース・時事解説(22.7%)」など、社会情報系も一定数視聴しています。
動画を活用した女性向けシニアマーケティング
女性の動画視聴の傾向は、日々の生活を改善したり健康を維持するための情報に関心があることを示しています。したがって、女性向けのシニアマーケティングにおいては「役立つ情報+商品紹介」型コンテンツが効果的です。例えば、レシピ動画に健康食品を自然に組み込む、スキンケア手順の解説に美容商品を取り入れる、生活習慣改善のアドバイスと健康グッズを連動させるといった形です。こうした生活文脈に沿った訴求は、女性の共感を呼び、購買意欲を高める導線になります。
シニア女性とデジタルの未来
本調査から見えたシニアのデジタルマーケティングの要点は、以下の3つです。
- 女性の情報収集は「二大チャネル+口コミ」を重視
テレビとインターネットの利用率が突出して高く、さらに新聞や家族・知人からの情報も活用。多角的な接点の中で「人からの紹介」に強い影響を受ける。 - EC利用が多いのは女性、購買は生活必需品と健康商材が中心
女性は男性以上にECを利用し、日用品や健康食品を積極的に購入。購買行動は「家族全体の健康や生活」を意識した意思決定に基づく。 - 動画は生活改善・健康維持が主眼
男性が趣味や娯楽系を好むのに対し、女性は「生活お役立ち」や「健康・医療情報」への関心が高く、実用的なコンテンツを重視する。
総じて、シニア女性は従来のマスメディアを軸にしながらも、確実にデジタル接点を拡大しています。シニアのデジタルマーケティングを成功に導くためには、「健康インサイト×生活文脈×デジタル施策」の組み合わせが重要で、テレビやネットだけでなく口コミや動画も取り込んだ戦略設計が不可欠です。
【提供元】 Omelette株式会社
当社は、シニア向け事業開発コンサルティング事業・デジタルマーケティング事業を展開しています。会員数310万人の「らくらくコミュニティ」を基盤としたシニアマーケティングDXでは、メーカーや製薬会社を中心に100件以上のプロジェクトを支援してきました。健康食品メーカーの購買促進、大手製薬会社の脳トレアプリ導入支援、自動車メーカーの福祉車両販売促進など、多様な業界での成功事例を蓄積しています。60〜80代のリアルなデータ分析と生活者インサイトに基づき、認知獲得からコンバージョンまで一気通貫で支援します。シニア向け商材をお持ちの企業様、商品開発をご検討の企業様は、豊富な知見とデータを活用したソリューションをご提案いたします。
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