まちづくりにも「健康診断」導入、地方都市再生へ処方せん 国が伴走型支援へ
国土交通省は今月19日、地方都市の再生に向けた新たな取り組みを始めると発表した。急激な人口減少や若者の流出に直面する地方自治体に対し、国が客観的なデータに基づいてまちの現状を診断し、具体的な”処方せん”を示す。国と地方が一体となって都市構造の再編を加速させる狙いがある。
地方を中心に人口減少が加速し、仕事やまちの魅力不足から若者の地方離れが深刻化する中、住民向けの生活サービスを維持し続けるのが厳しい自治体が増えている。こうした状況を立て直し、稼げる都市構造への転換を目指す新たな施策「令和の都市(まち)リノベーション」を進める。柱は二つ。都市の現状を客観的なデータで可視化する「まちづくりの健康診断」と、国が現場に出向いて伴走支援する「令和の都市リノベーション全国推進運動」で、診断から改善まで一貫して自治体を支える。
まちづくりの健康診断は、人間の健康診断と同様に、都市の健康状態を数値で可視化する仕組み。国交省は、国勢調査などのオープンデータに加え、各自治体の基礎情報を集めて整理。居住誘導区域内の人口の割合や推移、災害リスクの高い地域に住む人口の割合、地価や固定資産税収の変化など、幅広い指標で分析する。こうした客観的なデータに加え、都市の特性が近い自治体の事例やノウハウを合わせて示し、助言する。自治体は自分たちの課題を客観的に捉え、都市計画の見直しや、より効果的な施策づくりにつなげる。
令和の都市リノベーション全国推進運動は、国が現場に出向き、直接支援したり働きかける取り組み。各地方整備局などが都市計画区域を持つ自治体を訪ね、まちづくりに関する幅広い意見交換を踏まえ、支援事業の活用や計画見直しについて助言する。従来、自治体任せになりがちだった都市計画の運用に対し、国が伴走型で支援することで、実効性の高いまちづくりへと転換を図る狙いがある。
一連の施策の背景には、社会資本整備審議会の都市計画基本問題小委員会での議論がある。同委では、従来の「コンパクトシティ」から一歩進めた都市再編の重要性が指摘されてきた。今回の「健康診断」は、こうした高度なまちづくりを、専門職員が不足しがちな地方自治体でも進められるよう、国がデータ面からバックアップする意味合いがある。国交省は、これらの取り組みを通じて、安全で快適なまちづくりを全国で推し進めたい考えだ。
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