まちづくりの領域で広がる0次予防、トレンドは「無意識にヘルスケアできる環境整備」

まち・職場・住宅の環境を整備することで、その場で生活・活動する人々を丸ごと健康にしようとする0次予防の推進が、官民で加速している。これまでの健康施策や企業のヘルスケア製品・サービスの開発は、「どんな制度や仕組みを作るか?」「何を開発するか?」という「what」が重点的な論点だったが、昨今は「どうやって人々を健康な状態に導くか?」という「How」に移行している。その有効策が0次予防というわけだ。社会構造や疾病構造の変化を背景に深刻化する社会課題の解決に向けたものでもあり、”まちづくり”の領域では、自治体や都市開発事業者が主導。健康な人から病気・障害のある人まで、多様な健康度の人々を無意識のうちに健康に導こうとするまちづくりの事例を見ていこう。

まちづくり領域の0次予防、取り組み事例

ウォーカブルなまちづくり(全国)

年齢や健康度を問わず、誰もがまちを“居心地が良く歩きたくなる場所”へと転換する「ウォーカブルなまちづくり」の取り組みが官民で全国的に進められている。街路空間をこれまでの“車中心”から“人優先”へと再構築することで、多様な人が訪れたくなる場所へと作り変え、まち全体を活性化させるのが狙いだが、周辺の住人の外出機会やコミュニティ参加機会の創出、訪れた人たちの歩数の増加、グリーンインフラの整備によるリフレッシュ効果、脱自動車依存による環境負荷の軽減など、さまざまな効果が期待されている。ウォーカブルなまちづくりを推進するためのガイドラインは、スマートシティやコンパクトシティの施策でも活用されている。

【出典】国土交通省「ストリートデザインガイドライン」

 

いるだけで健康になるまちづくり(野村不動産×東京医科歯科大学)

野村不動産と東京医科歯科大学は今年、「いる(住む・来る)だけで健康になる街づくり」に向けた共同研究を産学連携で開始した。同大学が保有する土地の有効活用に向け、住宅・商業施設・オフィスの開発や運営ノウハウを持つ野村不動産グループと進めているプロジェクトで、街づくりの主眼に置くのは”健康”。事業コンセプトに「トータルヘルスケア for All Generations 〜全世代の未病予防、健康維持・増進に取り組み、QOL向上に寄与する街づくり〜」を掲げ、各施策による健康効果の検証を進めている。

 

駅が起点のヘルスケアサービスをインフラに「スマート健康ステーション」(JR東日本)

「駅」を「暮らしに関するサービスを提供する場」へと転換する「Beyond Stations構想」の一環として、JR東日本が設置を進めているのが、ホーム上や改札内で受診や薬の受け取りができる「スマート健康ステーション」。通常の対面診療に加え専門ブースでオンライン診療も受けられ、小スペースながらも、まるで総合病院。生活動線上にある駅で隙間時間を利用できるのがユーザーのベネフィットで、「忙しくてなかなか病院に行けない」を解決。在宅勤務や隙間時間を活用したオンライン診療で、医師の育児・介護との両立も後押し。医師の働き方改革にも貢献する。第1号は2022年4月に駅ホーム内で開業した東京・西国分寺駅のあおいクリニック。生活インフラサービスの維持に向け、地方にも順次拡大する。以下はスマート健康ステーションの紹介動画。

 

ドローン輸送で、離島住民の医薬品へのアクセスを向上(JAL×鹿児島県)

過疎地域の買い物困難を解決するドローンを使った実証事業が、各自治体で進められている。JALと鹿児島県大島郡瀬戸内町が共同設立したドローン運航事業会社の奄美アイランドドローンは、島民向けに物資の輸送サービスを今年2月に開始。ドローン輸送を新たな行政サービスとして位置付け、平常時には医薬品や日用品を定期輸送。災害時には救援物資も輸送する。

【出典】奄美アイランドドローン

 

まち全体で暑さ対策、クーリングシェルターやミストシャワー(全国)

真夏の危険な暑さから避難できるクーリングシェルターの設置が、各自治体で進められている。誰でも入れる冷房が効いた避暑施設で、役所や公民館などの公共施設の他、薬局や銭湯、接骨院などを解放。飲料水を提供するところも。バス停や公園など人が集まる空間では、ミストシャワーの設置が進む。噴射される微細な霧が周囲の温度を下げ、猛暑の屋外でも体はひんやり。

 

 

「職場」「住宅」領域の0次予防

0次予防を可能とする環境整備が広がるのは、特にそのコンセプトと相性が良い「まちづくり」「職場」「住宅」領域。各領域で、先進テクノロジーの活用やエビデンスベースドによる取り組みが進んでいる。本稿では「まちづくり」領域の事例を紹介したが、「職場」「住宅」領域については、「女性ヘルスケア白書2024  市場動向予測(※)」内で紹介。0次予防が広がりを見せる社会的背景や導入メリットの解説の他、女性の健康づくりを目指した0次予防の環境整備も紹介。

※「女性ヘルスケア白書2024 市場動向予測」は、女性ヘルスケア領域の生活者動向と業界動向を分析してまとめたもので、本メディアを運営する当社ウーマンズが毎年業界向けに発行している人気のアニュアルレポートです。ぜひご活用ください!

 

 

 

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