止まらぬ虐待、施設・在宅ともに「SOS」増加
施設職員による虐待と、家庭内での虐待。場所は違えど、共通するのは「余裕のなさ」と「知識不足」。過去最多となった高齢者虐待の背景には、安全の確保を名目に身体拘束へと走ってしまう現場の認識不足や、介護者が追い詰められ、警察に通報されるまで発覚しない在宅介護の限界が垣間見える。人材の質の確保や介護者の孤立防止といった、個人の努力だけでは解決できない構造的な課題が横たわっている。
今回の調査結果からは、介護現場と家庭の双方で高齢者の尊厳が脅かされている現状が明らかになった。施設での虐待認定、家庭での相談件数がいずれも過去最多を更新した背景には、介護人材の質の確保や、在宅介護の限界といった要因が複雑に絡み合っている。
■施設虐待:増加の背景に「身体拘束」への認識不足
施設職員による虐待認定が1220件まで膨れ上がった要因の一つに、身体拘束に対する現場の認識不足がある。内容別で過半数を占めた身体的虐待の多くは、単なる暴力だけでなく、ベッド柵で囲ったり、ひもで結んだりする身体拘束が含まれる。多くは転倒防止や安全確保といった名目で行われるが、適切な手続きを経ずに実施すれば虐待となる。この認識が薄いまま現場に出る職員が後を絶たない。
発生要因の上位を、教育・知識・介護技術等に関する問題が独占している点も深刻だ。慢性的な人手不足で十分な研修時間が取れず、管理職のマネジメントも機能不全に陥っている実態が透けて見える。施設種別では特別養護老人ホーム(28.9%)、有料老人ホーム(28.4%)が多く、重度者が多い施設ほどリスクが高い傾向にある。
●家庭内虐待:警察通報による発覚が最多
家族ら養護者による虐待認定が高止まりする中、注目すべきは虐待発覚のプロセスが変容している点にある。
相談・通報ルートは、警察が最多の35.6%。かつて主流だったケアマネジャー(24.4%)を大きく引き離した。これは、介護保険サービスにつながっていない未認定の高齢者や、サービスを拒否している世帯(セルフ・ネグレクト含む)で事態が深刻化し、警察沙汰になって初めて発覚するケースなどが考えられ、支援の空白地帯の広がりが懸念される。虐待者の属性は「息子」が約4割で最多。背景には本人の認知症と介護者のストレスが複雑に絡み合う。
今回の結果を受け、厚労省は施設側に対し、身体拘束廃止の徹底やストレスマネジメント研修の実施を求めている。また、24年度の介護報酬改定で、虐待防止措置を講じていない事業所への報酬減算が強化された影響も今後、注目される。家庭内の虐待については、警察との連携強化に加え、介護者が追い詰められる前にSOSを出せるよう、地域包括支援センターなどの相談体制をより周知し、孤立させない支援が求められる。
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