女性客の取りこぼしを防ぐ、ル・クルーゼのカラー戦略

長い間女性に支持され続け、その人気が一向に衰えることのない調理器具ブランドのル・クルーゼ。その人気の秘密の一つに「女性の複数の好みに応えているデザイン戦略」が関係しているようだ。

一つの商品だが、複数のカラー(世界観)を用意している

商品種類はそこまで多い方ではないのだが、一つの商品に対して複数のカラーバリエーションを用意している。一つの商品を単純に複数のカラー展開している商品はよくあるが(例えば車だったら、同一モデルでも単純に色だけを変えた黒・白・赤・紺を用意している)、よくある同一商品の複数カラー展開とは少々異なる。ル・クレーゼはカラーを変えると同時に「そのカラーに合った世界観」を一緒に提案しているのだ。

(A)子育てママのニーズに応えた世界観~ピンク~

子育てママは毎日が楽しくバラ色なワケではない。多くのママは時には大きな育児ストレスを抱えたり、あるいは一時的に社会(会社)とのつながりが希薄になる孤独を感じる。だからこそ子育てに関するグッズや子育てする環境を少しでも可愛らしく演出することで「ママの役割」を楽しみたいニーズが高まることを企業側は知っておきたい。

そのため、赤ちゃん・幼児のためのグッズはママのためのグッズともいえる。そんなママたちの「(ストレスや不安が大きい)育児期間を楽しみたい!」というニーズに応えたカラー戦略(世界観)がこちら。

(B)DINKSやキャリア女性のニーズに応えた世界観~ブラック~

※こちらの記事中ではあくまで想定ペルソナとして記載している。読者の皆さんがイメージしやすいようにするための仮設なのでその点をご了承いただき、参考までにご覧頂きたい。
夫婦共働きで子供を意図的に持たないDINKSやキャリア女性は、世帯収入・年収が高く、都会的な街中の高層マンションで静かな暮らしをしている。仕事で日頃バリバリ忙しく過ごしているからこそ自宅での時間や空間は静かで落ち着いた雰囲気を好む。インテリアもシックでモダンなものを好む彼女たちが選ぶのはこちらのカラー。

DINKSやキャリア女性だけではなく、一人暮らしで週末は友人を招いて自宅で男飯を披露するという男性にも好まれるだろう。

ルクレーゼのカラー戦略1

(C)ハウスワイフやロハスを好む女性のニーズに応えた世界観~グリーン~

※こちらの記事中ではあくまで想定ペルソナとして記載している。読者の皆さんがイメージしやすいようにするための仮設なのでその点をご了承いただき、参考までにご覧頂きたい。
ハウスワイフ(高学歴・高キャリアの職を捨て、家庭に入り、家庭で今までのキャリアを活かす専業主婦層のこと)やロハスな生活を好む女性は仕事よりも日々の食事や生活、家族との時間に最も重きを置く。そのため一つ一つの家事に対して(食事づくり・掃除・子供の雑巾縫い・旦那さんの着る服など)時間や労力をかけることを惜しまない。

またこの層は都会で人込みや時間に追われストレスを抱えながら生きていくことに強い嫌悪感を示すため、自然の近くに暮らすことを好む。海の見える丘の上、裏に森がある、川沿い、ビーチ沿いなどを居住場所として選ぶ傾向にある。窓からは緑や海、青空が見え、その景色を大切にした暮らし方をしている彼女たちが選ぶのはこちらのカラー。

ルクレーゼのカラー戦略2

(D)女子であることをとことん楽しみたい女性のニーズに応えた世界観~ピンク~

※こちらの記事中ではあくまで想定ペルソナとして記載している。読者の皆さんがイメージしやすいようにするための仮設なのでその点をご了承いただき、参考までにご覧頂きたい。
同じ女性でも選択するライフコースや育ってきた環境などで性格や好み、価値観は大きく変わっていく。サバサバした人間関係を好み自分を「おっさん」と呼び「趣味はプロレス観戦」という強めのキャラクターの女性もいれば(キャリア女性や自立した女性に見られがち)、恋活や婚活を重視し「結婚するなら男性の条件は経済力」と男性に人生を依存することに抵抗を感じない(つまり自活の人生より、男性の経済力に依存する人生を選択する)キャラクターの女性もいる。

どちらかというと後者の女性の場合は「カッコよさ」「自立した女性」よりも「かわいらしさ」「女子らしさ」を好む。そんな彼女たちが選ぶのはこちらのカラー。

ルクレーゼのカラー戦略3

世界観を好むペルソナをイメージする

4つを比較してみると、一つの商品でこれだけの様々なターゲットを設定できていることに驚く読者も多いのではないだろうか。上記はウーマンズがセグメントする20のライフコースの女性とすり合わせた上で、仮説を立ててみたのだが、どれもその仮説に登場するターゲットが好む世界観がしっかりと表現されている。

ユニクロやコンビニ、ドラッグストアのようなオールジャンルの客層をターゲットにしたビジネスを除いては、たいていは商品は絞られたターゲットへの訴求が行われる。しかし、ル・クルーゼの場合は、一つの商品でも様々なタイプの女性の好みやライフスタイルに合わせたカラー戦略(世界観戦略)が実施されており、それが多くの女性に支持され続けている要因の一つとなっている。

カラー戦略で見込み客の取りこぼしを防ぐ

女性はスペックだけでは満足しない。「そのフライパンをキッチンに並べたとき、私の部屋全体のインテリアを壊したりしないかしら?」「おいていて、料理したくなるようなカワイイデザインかしら」と様々な視点から商品を検討する。

(D)の女性がル・クルーゼの商品を購入したいと思ったとき、(B)のブラックバージョンしかなかったら(D)の女性は購入するだろうか?その女性はインテリアに徹底したピンクのこだわりを持っているのだ。機能面の魅力からル・クルーゼを「欲しい」と思っていても、他のピンクの商品を探しに行ってしまうかもしれない。

ル・クルーゼはこういった「見込み客の取りこぼし」を徹底したカラー戦略で防いでいるのだ。単純に複数の色を用意しただけではないようだ。一つの商品でも複数の見込み客を開拓したい、あるいは見込み客の取りこぼしを防ぎたいという場合は、ル・クルーゼのカラー戦略は参考になるだろう。

関連記事
■時短コスメブランドが爆発的ヒット!発想もデザインもカワイイ!
■販売数量、目標の300%超えのトロピカーナはボトルもHPもカワイイ
■シニア女性の顔の悩みとは?シニアの心を掴む資生堂のデザイン

一緒に読まれている記事