企業が狙う「働く独身女性」は金持ちか貧困か?
(記事公開2016年8月,最終更新2017年6月)
女性のライフコースの多様化で様々な生き方をする女性が増えている。一般的に男性は、学校卒業後就職、結婚、妻の出産、育児を経ても、定年退職するまで消費行動や価値観、生き方が大幅に変化することはない。しかし女性の場合は様々なライフコースがある。「結婚退職して専業主婦になる女性」「生涯独身で仕事をバリバリこなす女性」「出産を機に退職し、現在はパート務めしながら子育てをする女性」などだ。そして各ライフコースの選択により、生き方や価値観、消費行動は大きく変わっていく。(ウーマンズでは、20~70代の女性を20のライフコースにセグメント)
華やかで消費も旺盛に見えがちな独身女性
近年、働く女性の増加と共に「一人で生きていくこと」を選択する女性が増えている。
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故に貯蓄も多く、稼いだお金はほぼ全て自分自身のために使える。消費行動が活発で、かつ高額商品に対するハードルが低く、時間を自由に使える。そんな実態から(あるいは印象から)、マーケティング上で「働くシングル女性」をターゲットにするケースは多い。
確かに、子育てママや結婚した女性など他のライフコースの女性と比較すると、お金も時間も自由に使える彼女たちの人生は華やかに見えるし、マーケティングやメディアでも注目の的だ。
しかし、それは「正規雇用の女性である」という前提を理解したい。正規雇用、非正規雇用では、年収に大きな開きがあり、同じ「働くシングル女性」といっても、価値観や生活スタイル、消費行動、ニーズ、心情などは大きく異なる。
増加する非正規職の女性 3割が貧困層
あまり意識していないかもしれないが、各社がマーケティングでターゲットとしている「シングル女性」とは、「正規雇用の女性」を想定している場合が多いのではないだろうか。非正規雇用の女性にスポットが当たることはあまりないが、増え続ける非正規雇用労働者の7割は女性であること、そして2002年は16万人だった35~44歳の非正規雇用シングル女性は2014年には3倍の52万人に増えている現状を考慮すると、無視できないマーケットの一つになっている。
1997年において初職が正規雇用であった女性は68.3%であったが、2007年には45.3%と、最終学歴を終えた後、正規に就く割合が確実に低下している。およそ6割近い女性が卒業後、非正規もしくは無業となっている。(引用:女性のひろば 2016年7月号 P.56)
更に、非正規雇用のシングル女性35~54歳未満の層のうち3割は年収150万円以下で貧困層だという。非正規雇用で働くパート主婦の場合は、夫が柱となって稼いでいると考えられるので、収入が少なくても深刻な問題にはなりにくい。しかし、すべての支出を自分ひとりの収入で賄わなければならない非正規雇用シングル女性の場合は話が違ってくる。死活問題だ。これを「非正規雇用シングル女性の新たな問題である」、と同誌に寄稿する福岡女子大学教授の野依氏は問題提起している。
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未婚率が上昇している背景も考慮すると、今後ますます非正規雇用シングル女性は増えていくと考えられ、このマーケットは無視できなくなってきている。しかし非正規雇用のシングル女性をターゲットにする場合、必ずしも「消費行動が活発!」とは言えず、企業としても「非正規雇用のシングル女性をターゲット」と決定するには不安があるだろう。
では、この層を(特に非正規雇用シングル女性のうち年収が低い層)マーケティング上から外すべきなのか?というと、そうとも言い切れない。この層を狙う企業が少ないからこそ、ブルーオーシャンとも言える。同教授によるこの度の調査によると、彼女たちには以下のニーズがあったという。
・同じ立場の人たちとの交流の場(28.4%)
・話を聞いてもらえる場(27.2%)
・非正規職シングル女性の交流サイト(25.7%)
(引用:女性のひろば 2016年7月号 P.58)
悩みが深刻であるが故に、彼女たちのニーズに応えるサービスが登場すれば高い顧客ロイヤリティを得られるはずだ。
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