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「トイレシャワー症候群」メーカー各社・クリニックが注意喚起 女性は要注意

Tags: #医療
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温水で局部を洗浄することができるトイレシャワーの普及率が上昇する中、使い過ぎによる「トイレシャワー症候群」が問題視されている。

トイレシャワー症候群とは?

自宅、駅、店舗など、ほとんどのトイレで温水洗浄機能が付いているのが当たり前になった今、知らないうちに「トイレシャワー症候群」を経験している人は少なくない。

トイレシャワー症候群とは?

トイレシャワー症候群、別名「温水洗浄便座症候群」は、過度に温水洗浄(トイレシャワー)を使うことで、お尻や膣に痒みや炎症が起きてしまうこと。大阪肛門科診療所の佐々木みのり副院長は、過剰な衛生管理により引き起こされることから「過剰衛生症候群」と名付けている。

トイレシャワー(温水洗浄便座)の普及率は80%

海外から国内に温水洗浄便座が持ち込まれたのは1964年。1967年には国産品が登場し、50年を迎えた2017年には、一般世帯での普及率は約80%まで上昇している。100世帯当たりの保有数量は100台を突破した一般社団法人 日本レストルーム工業会

女性は膣炎に要注意、トイレシャワーに関する研究結果

トイレシャワーによるリスクには、女性特有のものも。国立国際医療センター戸山病院産婦人科の荻野満春氏が飯野病院の飯野孝一氏と共同で行った調査一般社団法人 関東連合産科婦人科学会「習慣的温水洗浄便座使用と細菌性膣症」により、トイレシャワーと膣内環境の関係が明らかになった。対象者をトイレシャワーの使用頻度で振り分けた結果、使用者は未使用者に比べ膣内の善玉菌である乳酸菌が著しく消失。本来膣内にいるはずのない腸内細菌による汚染も目立ち、細菌性膣症にかかりやすい状態となっていた。

トイレシャワーの使い方、メーカー各社・レディースクリニックが注意喚起

トイレシャワーについて、メーカー各社も使用注意の呼びかけを開始。膣炎、外陰炎と女性患者が急増していることを懸念し、レディースクリニックも出産時の諸注意とともに温水洗浄便座の正しい使い方を指導している。

トイレシャワーの使用注意、各社が呼びかけ

トイレシャワー製品を販売する各社は、トイレシャワーの過度の使用について注意喚起を開始。その内容は日本レストルーム工業会により統一され、会員各社の取扱説明書に同様のものが記載されている。それぞれの企業名・製品名は以下の通り。

  • 【温水洗浄便座の商品名】
    ・サンウォッシュ(アサヒ衛陶)
    ・シャワンザ(SANEI)
    ・サワレット(ジャニス工業)
    ・クリーンウォッシュ(TOSHIBA)
    ・ウォシュレット(TOTO)
    ・ビューティ・トワレ(Panasonic)
    ・シャワートイレ(LIXIL)

【ご注意】
長時間の洗浄や洗いすぎに注意してください。また、局部内は洗わないでください。
※常在菌を洗い流してしまい、体内の菌バランスが崩れる可能性があります。
習慣的に便意を促すためには使用しないでください。また、洗浄しながら故意に排便しないでください。
局部に痛みや炎症などがあるときは、使用しないでください。
局部の治療・医療行為を受けている方のご使用については、医師の指示を守ってください。
引用:トイレナビ「温水洗浄便座の使用上のご注意について」

 
痔の薬「ボラギノール」も、商品紹介ページのなかでトイレシャワー症候群について注意を呼びかけている。

外陰部の洗いすぎに注意、レディースクリニックが注意を呼びかけ

妊娠中・産後のトイレシャワー利用を禁止

いそいち産婦人科(宮崎・都城)では、トイレシャワーの利用によって子宮内へ細菌が入り込むことを懸念し、妊娠中・産後はトイレシャワーを使わないよう指導している。細菌の侵入によって絨毛羊膜炎(卵膜炎)が引き起こされれば、早産の原因となる。また同院では、院内感染予防のためにトイレシャワーは使用できないようにしている。

トイレシャワーがかゆみを悪化させる

咲江レディスクリニック(名古屋)は、外陰部にかゆみがあるときトイレシャワーによる洗いすぎが症状を悪化させる可能性について指摘。過度な使用は控え、かゆみがある際は受診することをすすめている。

トイレシャワーの正しい使い方

トイレシャワーの過度な使用で引き起こされる痒みは、肛門周囲にある皮膚の皮脂が取れてしまうことが要因。正しい使い方は以下。

クリニック推奨、トイレシャワーの使い方

痔・肛門を専門とする宮崎そらのクリニック(宮崎)では、HP内でトイレシャワーの正しい使い方を13ステップで解説。通常使用のほかに、お尻手術後のケースについても解説。

  1. ズボンなどを下ろす
  2. 便座のフタをあけ、なるべく背筋を伸ばして便座にすわる
  3. 排便をする
  4. 排便が終わったら、水勢のレベルを確認し最弱に設定(レベル設定がない場合はお尻を少し持ち上げておく)←慣れてくれば自分好みの設定でOK。
  5. 「やわらか」ボタンを押す。(「やわらか」がない場合は「おしり」を押す)
  6. 水または温水が出てくるので水勢レベルを少しずつ上げていきます。
  7. お好みでムーブボタンを押して肛門の周りを満遍なく洗浄するか、自分で腰を動かして肛門の周りを洗浄するかはお好みです。※ここで注意点!!肛門内に水流が直撃すると、いわゆる「ウォシュレット浣腸」のようになり、便意が再来するので少しお尻を締め気味にするか、周囲に当たるようにします。特に「おしり」使用時に注意が必要です
  8. 1分程洗浄したら、止めるボタンを押す
  9. トイレットペーパーを手に取る
  10. 財布などポケットに入ったものが便器内に落下しないように立ち上がり水滴を取るためだけにトイレットペーパーを押し当てる。決してゴシゴシ拭かない
  11. トイレットペーパーを便器に捨てた後、乾燥機能が付いていれば、再度便座に座り5秒ほど乾かす。残便感が出る可能性があるので乾かしすぎないように注意する
  12. 財布などポケットに入ったものが便器内に落下しないように立ち上がって排泄物を流す
  13. 流れきったことを確認し便座のフタを閉める
    引用:宮崎そらのクリニック「正しいウォシュレットの使い方」
    ※ウォシュレットはTOTOの商標登録

トイレシャワー症候群を取り上げる各メディアの記事

トイレシャワーの普及がすすむにつれ、トイレシャワー症候群の症例は増えており、各メディアが積極的に取り上げている。

トイレシャワーに潜む、膣炎のリスク

「プレジデントオンライン」では、トイレシャワーと膣炎の関係に焦点を当てている。膣炎になってしまう要因として、女性たちによる過剰なビデ機能の利用があげられた。

トイレシャワーとの正しい付き合い方

生活総合情報サイト「オールアバウト」は、トイレシャワーのリスクや安全性を説明した上で、その正しい使い方を解説。メリットとデメリットも紹介。

便利さが招くトイレシャワー症候群

「文春オンライン」では、東南アジアへの出張が多いビジネスパーソンを例にトイレシャワーを利用することによるリスクを紹介。出張先にトイレシャワーがないといつも通りの洗浄がままならず、過度に洗浄を行ってしまい痒みを招く。「洗わないと汚い」と思い込んでしまうことによるストレスも関係している。

トイレシャワー症候群は現代病に

これまでは紙で済ませていたことを温水で対処できるようになったことが、かえって「温水で洗わなければ清潔になれない」との思い込みを招いてしまったのかもしれない。過剰な衛生観念の結果、トイレシャワー症候群という新たな現代病が登場した。くわえてスマホを持ち込むことで、いくらでもトイレ内に長居ができるようになったことも一因に。便利さが引き起こしたリスクの周知には、もう少し時間がかかりそうだ。

 

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