増加する孤独死 年間で推計3万人へ突入(1/3)

単身世帯が増加している日本では、家族以外との交流をほとんど持たない“孤立度”が他国と比べて高い。そして、この孤立度が招く「孤独死」がいま社会問題化している。死後日数が経過してから発見される孤独死の件数は、年間で推計3万人に突入した。そのような事態を防ぐため、人生100年時代にそなえた孤立予防が急がれている。

増加する孤独死

高齢化がすすみ単身世帯も増え続ける日本では、自宅で一人で最期を迎える「孤独死」が社会問題化。最近では孤独死する世代が働き世代にまで広がり、いまや「孤独死」は独居老人だけの問題ではなくなってきている。

孤独死の定義

孤独死とは

一般的には、自室内で誰にも看取られることなく、突発的な疾病などで死亡することを指す。特に、重篤化しても助けを呼べずにそのまま亡くなってしまう状況のこと。警察の死因統計では「変死」に分類される。早い段階で適切な救命処置が行われれば助かる可能性のあったケースに関して集計される。しかし心肺停止状態から死に至るまで若干の時間差が存在する突然死との見分けが難しく、突然死でも「孤独死」に分類される場合がある。また、国による「孤独死」の明確な定義は示されておらず、現状は様々な解釈で定義されている。「孤独死(孤立死)の定義と関連する要因の検証及び思想的考究と今後の課題」では、孤独死の定義に共通するキーワードとして5つの要素が挙げられている。以下を、孤独死の定義と捉えて良いだろう。

  • 《孤独死を定義するキーワード》
    ・自宅(敷地内)での死亡
    ・看取りなし
    ・一人暮らし(配偶者との死別を含む)
    ・社会的孤立
    ・自殺の有無

孤独死に関係する語

日本の行政機関は、社会的に孤立してしまった故に周囲に気付かれず放置される状況が起こることから「孤立死」という表現を使う。ほかにも独居者が住居内で亡くなることがほとんどのため、「独居死」と呼ぶことも。さらに無縁死という言葉も使われるが、それらにおいて明確な使い分けはない。

孤独死に関するデータ

ニッセイ基礎研究所の推計によると、全国の65歳以上の孤独死者数は年間で26,821人(このデータでは「自宅で死亡し、死後2日以上経過」していることを孤独死の定義としている)。平成11年から平成21年の10年間で3倍にも増えた。総務省統計局のデータでは、2030年にはさらに3世帯に1世帯が単身世帯となることが予想されており、孤独死の件数も比例して増えていくことが考えられる。

都道府県別の孤独死のデータはない。朝日新聞によると、2018年時点で孤独死の発生状況を調査しているのは北海道(2013年から)と鹿児島県(2015年から)のみだった。なお、孤独死の定義についてはそれぞれ以下の通り。

  • 北海道
    死後1週間を超えて発見された人
  • 鹿児島
    65歳以上の一人暮らしで誰にもみとられずに亡くなり、2日以上経った人

一方、調査が行われていない自治体でその理由をみてみると、「国に定義がないことに沿っている」のほか、「孤立状態をどうとらえるかが難しい」「正確に把握する方法がない」といった孤独死を定義する難しさが挙げられていた。

また孤独死は女性よりも男性に多く、特に中高年齢に多いことが各調査で明らかになっている。その理由はかつて「男は仕事、女は家庭」といった性別役割分業のもと育ってきた男性たちの、家事全般への苦手意識(=低い生活力)やコミュニケーション能力の低さが挙げられる。配偶者との離婚や別居、死別によって、一人となった男性の栄養状態や住居の衛生環境は悪化。地域コミュニティーへの参加も遠慮しがちな男性は孤立しやすい傾向にある。

孤独死は高齢者に多いイメージがあるが、最近では働き盛りの若い世代にも増えている。NHK「おはよう日本『現役世代 なぜ孤立死?』」では30代や40代で孤独死した男性のケースを紹介。家族や友人がいても、仕事の忙しさや両親の他界によって、徐々に連絡が途絶えて孤立していく実情が取り上げられた。

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