セルフメディケーション税制とは?導入に伴う消費者の意識変化(3/3)

セルフメディケーション税制がヘルスケアビジネスに与える影響

セルフメディケーション税制の導入による消費者の意識変化

セルフメディケーション税制が導入されたことで、消費者の意識変化にどのような影響がもたらされているのか。日本OTC医薬品協会などが2018年9月に公表した調査結果「セルフメディケーション税制の認知・利用意向に関する第4回生活者意識調査」によると、税制申告群の健康意識の高さが示されており、税制導入によって生活者の意識変化と行動変容が示唆されている。

調査によると、セルフメディケーション税制を申告した約4割がインフルエンザの予防接種を受けていた。さらに約6割が軽い症状においてはOTC医薬品での対処意向を示していた。これらは生活者平均に比べ総じて高い比率で、申告群においてはセルフメディケーションの意識が高まったということができる。

税制を利用することをきっかけに、例えば健康診断を積極的に受ける、軽い症状にはOTC医薬品を利用する、といったような行動変容が起こるかどうか。OTC医薬品の産業界では、今後セルフメディケーション税制がさらに生活者の健康意識向上に寄与するのかどうかを検証していく方針だ。

今後のヘルスケアビジネスの展望

セルフメディケーション税制は、自らの健康管理の取り組みに対してインセンティブを付与しようという理念が根底にある。この理念は、地方自治体が市民のウオーキング実績にポイントを付与して景品と交換する健康ポイントなどに通じるものだ。こうした取り組みは、少子高齢化や社会保障財政のひっ迫を背景に、今後ますます拡大すると考えられる。

経済産業省が推進する「健康経営」の一環として、日本健康会議が認定する「健康経営優良法人」も、健康を支援する企業にインセンティブを付与する意味では同じような考えといえる。さらには自民党の加藤勝信らが参画する「明るい社会保障改革研究会」は、スポーツジムなどに通う費用も所得税の控除にすることを求めたと報道されており、この動きは活発化するばかりだ。

こうした流れがヘルスケアビジネスに与える影響は小さくはない。これまでに健康関心度が高くはなかった生活者も自らの健康維持に関心を持つことで、スポーツジムに通ったり、健康食品を活用する機会が増大していくことが想定される。そしてその取り組みを国がインセンティブを付与するという形で後押しする政策が拡充されていく可能性が高い。予防領域(予防医療)のマーケットの拡大を後押しする流れが強まっていると言えるだろう。

 

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