ブランディングとは?重視される背景と成功へ導くポイント(2/3)

ブランディングが企業と消費者にもたらすメリット

企業にもたらすメリット

  • ビジネスでの優位性を保ちやすくなる
    一番のメリットは価格競争からの脱却。ほかにもブランド名に関する登録商標や特許権、デザインなどの意匠権、著作権などによる法的保護を受けられるようになるため、類似品や模造品の排除が容易にできる。法的整備が整っていなかった頃は一文字違いの粗悪ブランドなどが横行。せっかく企業が作り上げたブランディング戦略も模造品のために浸透が難しいなどの課題があったが、現在は積極的に法を活用して自社のブランドを保護することが可能になっている。これにより商品・サービスに対する信頼性が向上し、顧客から選ばれやすくなっている
  • リピーターの増加につながる
    そのブランド名を冠した商品・サービスは全て共通のブランドアイデンティティを持つことになる。ブランディングが成功すると、ブランドアイデンティティを理解した顧客が増え、ブランド独自のファンの獲得につながる。ブランドを目印に顧客が集まり、商品やサービスを繰り返し利用し、売り上げを支える重要な存在になり得る。例えば女性に大人気の美容家電シリーズ「パナソニックビューティ」。同ブランドではドライヤー、スキンケア家電、ボディケア家電など多数の商品が展開されている。決して安くはないが、同ブランドの一製品を使って同ブランドのファンになる女性は多く、美容家電一式をパナソニックビューティでそろえる女性も。
  • 組織文化に統一感が生まれる
    「シャネル」や「MUJI」のように企業全体が一つのブランドアイデンティティを構築している場合、ブランドイメージの確立により、企業理念やビジョンが全社に浸透しやすくなる。「シャネル」や「MUJI」は一つのブランドで様々な製品を取り扱っているが、そこに関わる社員は全て共通のビジョンをもとに発想しブランドを展開している。また人材採用において自社の組織文化にマッチする人材が集まりやすくなるのも大きなメリット。ブランド体験を通じて会社を知り入社してきた人材は教育の浸透も早く、即戦力になりやすい。反対に、しっかりと定義されたブランド連想から外れることは企業理念やビジョンから外れることを意味するため、ブランドの理解と取り扱いはとても重要なマネジメント業務となる

消費者にもたらすメリット

  • 心理的な欲求が満たされる
    「シャネル」や「グッチ」などいわゆる高級ブランドは典型的な例で、憧れのブランドの商品を身につけて自分の印象を良くしようとすることは、世の中の多くの人の欲求を満たす購買行動だ。ブランドイメージを利用して自己表現ができるのだ。高級ブランドでなくても「MUJI」や「ちふれ」といったシンプルな日用品や基礎化粧品のブランドでももちろん、自己実現は可能だ。「MUJI」や「ちふれ」のユーザーは商品の購入を通じ、「シンプルライフ」「エコライフ」を実現している。品質だけでなく、ブランドの持つアイデンティティそのものが付加価値となって、消費者の購買行動に影響を与えている
  • 購買行動の負担が軽減されやすい
    企業にとって多くの競合品の中から自社商品を選択してもらうことは難しい。それは消費者側にとっても同様で、数ある中から自分に合った商品・サービスを見つけることは、大きな負担となる。そこでブランディングによる付加価値の創造が差別化に有効な方法になる。事前にブランドアイデンティティが消費者に理解されていれば、新製品であっても同一ブランドの基本的なコンセプトや品質的な特徴とポイントが一瞬で理解できるところがブランディングの最大の強み。すでに多くの消費者に認知されているブランドであれば、ブランドアイデンティティが予め理解され、信頼されている。多くの消費者が「信頼できる」と評価しているブランドの商品やサービスを選択すれば、“買い物の失敗”を防げる。購買行動における負担を大幅に削減することができるのは消費者にとって大きなメリット。

自社のブランディングを成功へ導くポイントと事例

自社のブランディングを成功させるポイント

良く見られる例が、その時々のマーケティング戦略でブランドの定義を変えてしまうことだ。同一のブランドであるのに新商品を出すたびに都度ブランドの定義を変えてしまうと、消費者に認知されづらくなるだけでなく、期待を裏切る行為になりかねない。例えば若い世代に人気のコスメ「マジョリカマジョルカ(資生堂)」は、魔法のかかったような神秘的な独特の世界観が特徴のブランドでコアなファンが多い。しかし2017年、ビジュアルやキャッチコピー(=世界観=ブランドアイデンティティ)に大幅な変更を加えたことで多くの女性たちから批判を浴びることとなった。中には「もう買いません」との声もあったほどだ。まさに「期待を裏切ってしまった行為」の一例と言える。

ブランドは無形だからこそ、その時々の事情で簡単に変えることができてしまうが、それは消費者から見るとブランドの定義が曖昧になり信頼を失うことになる。では例えば、同一のブランドで新商品を企画する際に、既存のブランドアイデンティティにそぐわないコンセプトが生まれたらどうするべきか?それは新しいブランドを生み出すチャンスだと捉え、じっくりとコンセプトの持つ本質を捉えブランドイメージに反映させていくことが大切だ。ブランドは企業全体を象徴するものもあれば、そこから枝分かれして商品やコンセプトごとに細分化されたブランドも存在する。天然水ブランドが成功したからといって同じブランド名で天然水を全く使用していない保湿クリームを販売しては消費者の信頼は得られないのだ。

ブランドを維持し続けることは簡単なことではない。ブランディングを成功させ、確固たるブランドを自社に根付かせるためには以下の徹底が必須だ。

  • ブランドアイデンティティは、誰もが分かりやすい言葉や言い回しで表現すること
  • 他社との明確な差別化が反映されたブランドアイデンティティを策定すること
  • ブランドアイデンティティは社会トレンドを反映したものであること(※)
  • ターゲット女性の特性を捉え、彼女たちが好みやすいブランドアイデンティティは何か?を検討すること
  • ブランドアイデンティティは、開発〜販売まで、そして雇用形態や職位に関係なく全ワーカーに浸透させること(マーケティング戦略は正社員だけで進めるケースが多いが、パートやアルバイトにもブランドアイデンティティを浸透させる)
  • 常に全ワーカーがブランドアイデンティティを意識して業務を行うこと
  • 各業務で判断に迷ったら、一人ひとりがブランドアイデンティティに立ち返り、今の戦略や開発、接客などがその要素を満たしているかを考えること

 (※)例えば、今の社会トレンドは「エシカル」「SDGs」。にも関わらず、それらを無視して「(例)動物実験により化粧品開発をする安全安心なメーカーです」「(例)アフリカの貧しい子どもたちなど安い労働力を強みに大量生産しているため、当社の製品は低価格での提供が可能です」といったことをブランディングの要素いしてしまうのが、「社会トレンドを反映していない」ことになる

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