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「摂取カロリー」検索、ヘルスケア企業が知っておきたい成人女性のカロリーのこと

通年ダイエットに励む女性が年齢問わず多い割には、実は適正摂取カロリーをきちんと数値で理解できている人はわずか。「痩せすぎず、太り過ぎず、健康を維持できる体重」に必要な摂取カロリーはどれくらいなのか?厚労省が昨年末に公表した「日本人の食事摂取基準2020」をベースに、適切な摂取カロリーの考え方を見ていこう。

成人女性のカロリーの考え方

摂取カロリーと消費カロリー

  • 摂取カロリー
    食べ物や飲み物から摂るエネルギー摂取量のことで、3大栄養素である「炭水化物」「脂質」「たんぱく質」の各エネルギーを合計した数値を指す。エネルギーがあるのはこの3大栄養素だけなので、3大栄養素の含有量=総カロリー摂取量、という事になる。
  • 消費カロリー
    エネルギー消費量のこと。基礎代謝(覚醒状態の生命活動を維持するために最低限必要な熱量)、食後の熱産生、身体活動の3つそれぞれでカロリーが消費されている。なお、身体活動は「運動・日常の生活活動・自発的活動」の3つに分類される。
  • カロリーの収支バランス
    摂取カロリーと消費カロリーの収支バランスは「摂取カロリー」-「消費カロリー」で求められ、摂取カロリーがプラスの状態が続けばカロリーオーバーとなって太り、マイナスの状態が続けばアンダーカロリーとなって痩せる。つまり、痩せたい場合は摂取カロリーより消費カロリーを多くし、太りたい場合は消費カロリーより摂取カロリーが多くなるようコントロールすればよい。カロリー摂取量は、食品入手の利便性、ストレス、摂食速度、美味しさ、食欲関連ホルモン、性別など、さまざまな因子の影響を受けて増減するため、同じ年齢でも個人差が大きく、また同一人物であっても常に収支バランスが年中一定しているわけではない。

 

健康を維持するための適正体重とは?

健康体重を知るのに役立つ指標、BMI

日々の体重に大きな変動が見られない成人は、カロリーの収支バランスはほぼゼロに保たれている。しかし、体重を維持できているから健康とは言い切れない。大切なのは、健康の保持・増進、生活習慣予防のために必要な体重を維持すること。

そこで指標となるのが、BMI(Body Mass Index)。肥満度を表す体格指数として用いられている国際的な指標で、日本では男女ともに目標とすべきBMIは18.5〜24.9に設定されている(以下表)。この範囲内であれば、健康を維持し生活習慣病の発症を予防しやすい、ということになる。なお「18.5以下なら痩せすぎ」「25以上なら肥満」となる。65歳以上の目標BMIが若年世代より高めに設定されているのは、低栄養によるフレイルを予防するため。

年齢(歳) 目標とするBMI (㎏/㎡)
18~49 18.5~24.9
50~64 20.0~24.9
65〜74 21.5~24.9
75以上 21.5~24.9

表1:目標とするBMIの範囲  〜18歳以上/男女共通〜
(出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版)

 

自分は健康体重の範囲内?BMIの計算方法

BMIは身長と体重で算出できる。今現在の自分の体重が健康を維持できる適正体重かどうか、例を参考にチェックしてみよう。

  • BMI(㎏/㎡)=体重(㎏)÷身長(m)2

例えば、身長160㎝・体重55㎏・40歳の女性のBMIは、55kg÷(1.6m×1.6m)≒21.5。目標BMI(20.0〜24.9)の範囲内なので、彼女の体重は健康を維持できる適正体重と言える。もし彼女のBMIがこの目標BMIより低ければ痩せすぎ、高ければ太り過ぎ、となる。

自分が目標とすべき健康体重

前述のBMIの算出は、今現在の体重が健康面で適正範囲内かどうかを確認する方法。範囲外であれば、自分が目標とすべき体重はどれくらいなのか?それも簡単に計算できる。表1に記載の目標BMIを用いる。

  • 健康体重=身長(m)×身長(m)×目標BMI

例えば、身長160cm・30歳女性の場合。30歳の目標BMIの範囲は18.5~24.9なので、以下の計算となる。

  • 下限:1.6×1.6×18.5≒47.4kg
  • 上限:1.6×1.6×24.9≒63.7kg

つまり、彼女の健康維持に必要な体重の範囲は47.4〜63.7kgということになる。

日本人女性が理想とする体重

前述の女性の例を見て、「健康体重って、ぽっちゃり体型」「上限が63kg?太っているのでは?」と感じる人は多いはず。目標BMIから算出した体重では、世界的に見て痩せている人が多い日本では「ぽっちゃり」「太っている」という印象を持つのが普通だろう。日本女性が一般的に「スリム」「スタイルが良い」「細い」「理想」といった印象を持つBMIは17〜18。

いわゆる“モデル体重”の算出に指標とされる数値で、前述の160cmの彼女にこのBMIを当てはめると、体重は43〜46kg。日本人女性の中でもとりわけ痩せ志向の強い10〜20代が理想とするのはこのあたりだ。だが健康面から言うとBMI17〜18は「痩せ」に入り健康リスクを抱える可能性があるので、本来であれば目標とすべきではない。最低でも目標はBMI18.5とするのがベスト。

プラスサイズの体重の上限

近年、世界的なダイバーシティの広がりや女性のエンパワーメントを背景に“プラスサイズ”モデルが人気を集めているが、健康面から見ると、プラス過ぎるのはそれはそれで健康リスクを抱えるので危険。プラスサイズを目指すにしても、BMI24.9は超えないようにしたい。前述の彼女が健康リスクを抱えずにプラスサイズを目指すなら、63.7kgは超えないのが安心。

 

成人女性の一日の摂取カロリー(年代別)

健康体重の維持に必要な摂取カロリーは「年齢」で異なり、さらに「身体活動レベル」別で異なる。日本人の食事摂取基準2020(厚労省)で定義されている身体活動レベルを確認した上で、適切な摂取カロリーをチェック。(日本人の食事摂取基準2020年版では、男女別・年齢別に摂取すべきカロリーを「推定エネルギー必要量」として記載している。「目標」ではなく「推定」と表現しているのは、体格や体質などに個人差があり摂取すべきカロリーを統一することは難しいため)

 

身体活動レベルの定義

 

身体活動レベルI 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心
身体活動レベルⅡ 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツ、のいずれかを含む
身体活動レベルⅢ 移動や立位の多い仕事への従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている

表2:身体活動レベルの定義
【出典】厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版

女性の摂取カロリー、年代別

身体活動レベル
20代 1,700 2,000 2,300
30代 1,750 2,050 2,350
40代 1,750 2,050 2,350
50代 1,650 1,950 2,250
60〜64歳 1,650 1,950 2,250
65〜69歳 1,550 1,850 2,100
70〜74歳 1,550 1,850 2,100
75歳以上 1,400 1,650

表3:年齢別、身体活動レベル別、女性の推定エネルギー必要量
【参考】厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版

 

カロリー摂取に注意が必要な成人クラスター

年代別・身体活動レベル別に摂取カロリーが異なるのは前述の表3の通りだが、適切なカロリー摂取のためにもう一つ配慮が必要なことがある。妊娠中、授乳中、高齢者、持病のある人だ。ライフステージや持病の有無も、摂取カロリーを決める上で大切な要素。

妊婦・授乳婦

妊婦や授乳婦は、胎児や乳児に必要なカロリーも摂取する必要があるため、必然的に必要カロリー量が多くなる。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、妊婦・授乳婦が摂取すべきカロリーも掲載している。年齢と身体活動量からチェックした摂取カロリーに、以下表に記載の付加量を加える、という考え方。例えば30代で身体活動レベルⅡの女性が授乳婦に必要な摂取カロリーは、2,050kcal +350kcal=2,400kcalとなる。なお妊婦の場合は、妊娠期で付加量が異なる。(参考:厚労省「日本人の食事摂取基準<2020年版>」p.16)

身体活動
レベル
妊婦 授乳婦
初期(※) 中期(※) 後期(※)
50 250 450 1,650
50 250 450 1,950
50 250 450 2,250

表4:妊婦・授乳婦の推定エネルギー付加量
【出典】厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版)

※初期:妊娠成立~13週6日
※中期:14週0日~27週6日
※後期:28週0日~出産

 

高齢者

高年齢層の摂取カロリーは、表3の通り「65〜74歳」と「75歳以上」の2つに区分して定められていることにまず注意。そしてこの年齢層は、咀嚼能力の低下、消化・吸収率の低下、運動量の低下に伴う摂取量の低下、何らかの持病などが見られるものの個人差が大きいので、摂取カロリーを確認する際には、年齢だけでなく個人の特徴に十分に注意する必要がある。(参考:厚労省「日本人の食事摂取基準<2020年版>」p.16)

 

高血圧

肥満を是正するだけで高血圧が改善されることは多い。カロリーオーバーすることのないよう、摂取カロリーと消費カロリーの収支バランスを意識することが重要。摂取カロリーは表3を参考にする。肥満者の場合は、BMI 25kg/㎡未満となるようにカロリー制限を行う。

 

脂質異常症

高血圧同様に、肥満の是正で脂質異常症が改善されることもある。飽和脂肪酸、コレステロール、糖質の過剰摂取、エネルギー摂取過多による肥満は脂質異常症を悪化させやすいため、これらの摂取を控えながらカロリー制限を行うのが望ましい。摂取カロリーは、標準体重(㎏)×身体活動量(軽い労作:25~30kcal,普通労作:30~35kcal,重い労作:35kcal~)を目指すが、まずは1日250kcal程度減らすことから始める。(参考:厚労省「日本人の食事摂取基準<2020年版>」p.445,日本動脈硬化学会「脂質異常症診療ガイド<2018年版>」)

 

2型糖尿病

2型糖尿病は過食や運動不足などの生活習慣が関連しているので、適切なカロリー摂取が必要。特に糖質の過剰摂取に気をつける。具体的には、炭水化物の摂取比率は総エネルギーの50~60%。摂取カロリーは、標準体重(㎏)×身体活動量(軽い労作:25~30kcal,普通労作:30~35kcal,重い労作:35kcal~)を目指す。肥満がある場合は、BMI 25kg/㎡未満を目指す。(参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準<2020年版)」p.461,日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド<2018-2019>」pp.44-47)

 

慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病の進行度合い(CKDステージ)によって栄養素の摂取基準値が異なる。ステージの上昇とともにたんぱく質摂取量が制限されるため、その分のカロリーを脂質と糖質から補うなど、3大栄養素のバランスが変化していくことに注意が必要。とは言え、合併症の1つに糖尿病があるため、糖質の過剰摂取にも気をつけなくてはいけない。肥満は進行リスクを高めるため、BMI 25kg/㎡未満を目指す。日本腎臓学会では慢性腎臓病の全ステージにおいて、25~35kcal/標準体重/日を推奨している。(参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準<2020年版>」p.476,日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事摂取基準<2014年版>」p.2」)

 

 

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