コロナ太りで続く「摂取カロリー」検索、ヘルスケア企業が知っておきたい成人女性のカロリーのこと(2/2)

成人女性の一日の摂取カロリー(年代別)

健康体重の維持に必要な摂取カロリーは「年齢」で異なり、さらに「身体活動レベル」別で異なる。日本人の食事摂取基準2020(厚労省)で定義されている身体活動レベルを確認した上で、適切な摂取カロリーをチェック。(日本人の食事摂取基準2020年版では、男女別・年齢別に摂取すべきカロリーを「推定エネルギー必要量」として記載している。「目標」ではなく「推定」と表現しているのは、体格や体質などに個人差があり摂取すべきカロリーを統一することは難しいため)

身体活動レベルの定義

 

身体活動レベルI 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心
身体活動レベルⅡ 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツ、のいずれかを含む
身体活動レベルⅢ 移動や立位の多い仕事への従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている

表2:身体活動レベルの定義
(出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版)

女性の摂取カロリー、年代別

 

身体活動レベル
20代 1,700 2,000 2,300
30代 1,750 2,050 2,350
40代 1,750 2,050 2,350
50代 1,650 1,950 2,250
60〜64歳 1,650 1,950 2,250
65〜69歳 1,550 1,850 2,100
70〜74歳 1,550 1,850 2,100
75歳以上 1,400 1,650

表3:年齢別、身体活動レベル別、女性の推定エネルギー必要量
(参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版)

カロリー摂取に注意が必要な成人クラスター

年代別・身体活動レベル別に摂取カロリーが異なるのは前述の表3の通りだが、適切なカロリー摂取のためにもう一つ配慮が必要なことがある。妊娠中、授乳中、高齢者、持病のある人だ。ライフステージや持病の有無も、摂取カロリーを決める上で大切な要素。

妊婦・授乳婦

妊婦や授乳婦は、胎児や乳児に必要なカロリーも摂取する必要があるため、必然的に必要カロリー量が多くなる。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、妊婦・授乳婦が摂取すべきカロリーも掲載している。年齢と身体活動量からチェックした摂取カロリーに、以下表に記載の付加量を加える、という考え方。例えば30代で身体活動レベルⅡの女性が授乳婦に必要な摂取カロリーは、2,050kcal +350kcal=2,400kcalとなる。なお妊婦の場合は、妊娠期で付加量が異なる。(参考:厚労省「日本人の食事摂取基準<2020年版>」p.16)

身体活動
レベル
妊婦 授乳婦
初期(※) 中期(※) 後期(※)
50 250 450 1,650
50 250 450 1,950
50 250 450 2,250

表4:妊婦・授乳婦の推定エネルギー付加量
(出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版)

※初期:妊娠成立~13週6日
※中期:14週0日~27週6日
※後期:28週0日~出産

高齢者

高年齢層の摂取カロリーは、表3の通り「65〜74歳」と「75歳以上」の2つに区分して定められていることにまず注意。そしてこの年齢層は、咀嚼能力の低下、消化・吸収率の低下、運動量の低下に伴う摂取量の低下、何らかの持病などが見られるものの個人差が大きいので、摂取カロリーを確認する際には、年齢だけでなく個人の特徴に十分に注意する必要がある。(参考:厚労省「日本人の食事摂取基準<2020年版>」p.16)

高血圧

肥満を是正するだけで高血圧が改善されることは多い。カロリーオーバーすることのないよう、摂取カロリーと消費カロリーの収支バランスを意識することが重要。摂取カロリーは表3を参考にする。肥満者の場合は、BMI 25kg/㎡未満となるようにカロリー制限を行う。

脂質異常症

高血圧同様に、肥満の是正で脂質異常症が改善されることもある。飽和脂肪酸、コレステロール、糖質の過剰摂取、エネルギー摂取過多による肥満は脂質異常症を悪化させやすいため、これらの摂取を控えながらカロリー制限を行うのが望ましい。摂取カロリーは、標準体重(㎏)×身体活動量(軽い労作:25~30kcal,普通労作:30~35kcal,重い労作:35kcal~)を目指すが、まずは1日250kcal程度減らすことから始める。(参考:厚労省「日本人の食事摂取基準<2020年版>」p.445,日本動脈硬化学会「脂質異常症診療ガイド<2018年版>」)

2型糖尿病

2型糖尿病は過食や運動不足などの生活習慣が関連しているので、適切なカロリー摂取が必要。特に糖質の過剰摂取に気をつける。具体的には、炭水化物の摂取比率は総エネルギーの50~60%。摂取カロリーは、標準体重(㎏)×身体活動量(軽い労作:25~30kcal,普通労作:30~35kcal,重い労作:35kcal~)を目指す。肥満がある場合は、BMI 25kg/㎡未満を目指す。(参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準<2020年版)」p.461,日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド<2018-2019>」pp.44-47)

慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病の進行度合い(CKDステージ)によって栄養素の摂取基準値が異なる。ステージの上昇とともにたんぱく質摂取量が制限されるため、その分のカロリーを脂質と糖質から補うなど、3大栄養素のバランスが変化していくことに注意が必要。とは言え、合併症の1つに糖尿病があるため、糖質の過剰摂取にも気をつけなくてはいけない。肥満は進行リスクを高めるため、BMI 25kg/㎡未満を目指す。日本腎臓学会では慢性腎臓病の全ステージにおいて、25~35kcal/標準体重/日を推奨している。(参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準<2020年版>」p.476,日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事摂取基準<2014年版>」p.2」)

「コロナで太った=ダイエットが必要」ではない

新型コロナによる生活変化で太った女性は約半数という調査結果を冒頭でお伝えしたが、なんせ痩せが多い日本。「太った」とはいえ、BMIで見れば「痩せ」あるいは「目標」の範囲内で、そもそもダイエットをする必要がない女性も一定数いると考えられる。

特に、痩せ志向が強い10〜20代女性はその可能性が高い。コロナ禍の運動不足解消や体重増加に着目して、ダイエットを過度に促す企業が最近目立つが、単純に「痩せる」ことを訴求するのは健康上避けるべき 。そもそも、最近は筋肉女子やプラスサイズな体型がトレンドなので、減量ではなくボディメイクに着目して「筋力アップ」や「スタイルアップ」の訴求に切り替える方が今ドキ感が出る。

コロナ時代のダイエットニーズに便乗して女性たちの「痩せたい!」にむやみに応えようとするのではなく、もともと痩せが多い日本女性がきちんと健康を維持できる体重とカロリー摂取を理解した上で、適切なマーケティングを展開しよう。

 

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