女性の尿失禁には薬物療法よりも行動療法が有効?

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尿漏れに悩む女性にとって、薬物療法よりも行動療法の方が症状改善に有効なことが、米ニューメキシコ大学女性泌尿器科のPeter Jeppson氏らが実施した研究から明らかになった。研究の詳細は「Annals of Internal Medicine」3月18日オンライン版に発表された。

米国立衛生研究所(NIH)によると、女性のほぼ半数は、生涯に一度は尿漏れを経験する。尿失禁は男性でも見られるが、発症頻度は女性の方が高く、特に妊娠中や出産後、閉経後に発症することが多いという。

今回、Jeppson氏らは、妊娠していない女性を対象に薬物療法と行動療法などの非薬物療法の有効性を検討したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューを実施。基準を満たした84件のRCTを対象にメタ解析を行った。

その結果、全般的な尿失禁の軽減効果は、行動療法が薬物療法を上回ることが分かった。また、行動療法を受けた女性では、未治療の女性と比べて5倍以上の症状改善率を示すことも明らかになった。一方、薬物療法を受けた女性でも症状は改善したが、行動療法ほどの効果は認められず、未治療の女性と比べても改善率は2倍だった

Jeppson氏は「尿失禁が見られる女性には治療を促すべきだ。治療法の選択肢はたくさんあるが、そのほぼ全てについて言えるのは、何もしないよりは治療した方が良いということだ」と話す。

専門家の一人で、米ミシガン・メディシンのウェスト・ショア・ウロロジー(泌尿器専門施設)に所属するBrian Stork氏によれば、利尿作用があるカフェインやアルコールなどの摂取を控えるといった食習慣の是正や、骨盤底筋を鍛えるトレーニングが尿失禁症状の改善に有効な場合がある。また、患者によっては減量により膀胱にかかる圧力が軽減され、尿失禁が改善することもあるという。

一方、米マウントサイナイ・ウエスト病院女性泌尿器科のAnne Hardart氏は「尿意を感じたらすぐにトイレに行かず、膀胱に尿を貯める膀胱訓練も排尿コントロールに役立つ」と話す。なお、尿失禁には主に、咳をする、重い物を持ち上げるなどで腹圧がかかったときに生じる「腹圧性尿失禁」と、突然の制御できない尿意により生じる「切迫性尿失禁」の2つのタイプがある。同氏によると、生活習慣の是正はいずれのタイプの尿失禁にも有効だが、骨盤底筋を鍛えるトレーニングは、特に腹圧性尿失禁に有効だという。

ただ、Hardart氏は「一般に医師はリスクを伴わない行動療法で治療を開始するが、患者本人が主体的に関わる必要があり、決して簡単な方法ではない」と指摘している。一方、Stork氏は、軽度の認知症や脳卒中の後遺症などがある女性では、訓練法を覚えて継続することが難しく、薬物療法が必要になる場合もあるとしている。

なお、尿失禁の治療には、過活動膀胱の治療薬であるオキシブチニン、トルテロジン、darifenacin(ダリフェナシン、日本国内未承認)などが使用される。今回の研究からは、これらの薬物療法は、未治療の場合と比べれば尿失禁の改善に役立つが、切迫性尿失禁の軽減には行動療法の方が有効であることが示された。また、行動変容や薬物療法が効かない場合には、膀胱をコントロールする神経に電気刺激を与えるニューロモデュレーションという治療法も、未治療の場合に比べて症状改善効果が約4倍に上ったという。

これらを踏まえ、Hardart氏は「尿失禁の治療には幅広い選択肢があり、その多くは非侵襲的なものだ。女性は尿失禁に苦しみ続ける必要はない」と述べている。(HealthDay News 2019年3月18日)Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.

 

 

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