報道各社の「健康の男女平等、ほぼ達成」は本当? ジェンダーギャップ指数2023
世界経済フォーラム(WEF)は先月21日、政治・経済・教育・健康の4分野における男女平等の達成度を指数化した「ジェンダーギャップ報告書」を発表した。今年の日本の総合順位は146カ国中125位で、2006年の発表開始以来、過去最低を更新。「経済」は123位、「政治」は138位と主要先進国の中で後れをとる中、「健康」は59位で達成度97.3%。各メディアは「政治・経済は男女格差が大きい」と問題視した上で、47位で99.7%を達成した「教育」と同様に、「健康の男女平等は、ほぼ達成」と一斉に報じた。だが、本当にそう言えるのだろうか?
そもそも世界経済フォーラムが設定している「健康」の指標は、「出生時の男女の割合(日本:1位)」と「健康寿命の男女差(日本:69位)」の2項目のみ。これだけで男女平等の度合いを測れるものなのか?統計データ分析の専門家は「出産リスクや寿命そのものはスルーして、健康の男女格差をこの2つの指標で代表させるやり方に大きな疑問符をつけたい」と指摘している(引用:プレジデントオンライン)。
日本では例えば「健診・検診受診率(雇用形態の影響から女性が低い)」「自殺率(男性が高い)」「病気のリスク(病気によって異なる)」「要介護・介護のリスク(共に女性が高い)」「性被害(女性に多い)」「健康意識(一般的に女性が高い)」「プレゼンティーズムの損失(女性が大きい)」などで性差が見られ、こういった項目も指標に入ると、健康の男女格差を浮き彫りにできるだろう。もちろん、国によって健康・医療制度、医療水準、生活水準、健康教育などが異なるため、何を指標とするかは複雑な議論になるが。各紙の報道を鵜呑みにして「日本に男女間の健康格差はない」と解釈するのは、早計だ。ランキングの読み取り方には要注意。
なお報告書では、以下4項目の健康データも国別に示している(報告書pp.81-372)。この項目はランキングに影響はしないが、公衆衛生やSRHRの状況を国際比較する手がかりになる。
日本 | 米国 | 韓国 | アフガニ スタン |
|
生涯で性暴力被害にあう女性(%) | 15.4 | 35.6 | 16.5 | 60.8 |
医療従事者の立ち会いでの出産(%) | 99.9 | 99 | 100 | 61.8 |
妊産婦死亡数(出生10万件あたり) | 5 | 19 | 11 | 638 |
合計特殊出生率 | 1.34 | 1.64 | 0.84 | 4.75 |
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