女性従業員の健康課題、どう支援している? 企業事例4選 

女性従業員の健康課題を解決しようと、各社でさまざまな取り組みが実施されている。ヘルスリテラシー向上を目的に男女両方に向けた女性の健康セミナーの開催、生理休暇の改称や適用範囲の拡充、女性トイレの環境整備などが昨今のトレンドで、オンライン診療などのフェムテック活用も進んでいる。プレゼンティーズムやアブセンティーズムの改善に成功した事例も徐々に積み上がっており、こういった成功事例をエビデンスに、女性従業員の健康施策は各産業界で加速度的に進む予感だ。施策が奏功した4社の先行事例を見てみよう参考:経産省「令和5年度 なでしこ銘柄 注目企業」

婦人科のオンライン診療で、プレゼンティーズム改善(ニチレイ)

2022年に「女性の健康づくり方針」を定め、女性の健康づくり推進に取り組む食品のニチレイグループ。従業員アンケートで、生理や更年期などの不調を抱えつつも対処を行わずにパフォーマンスが低下している女性が多いことがわかったことから、「体制整備」「教育・啓発」「支援」の 3 つの視点で取り組みを始めることにした。

「支援」施策として導入したのは、婦人科のオンライン診療。四半期ごとに全従業員に向け生理と更年期に関するセミナーを開催し、その後、不調で困っている女性従業員にオンライン診療への参加を勧めている。参加者はオンラインで婦人科を受診し、生理や更年期の困りごとを医師に相談。必要に応じて低用量ピル、漢方やサプリメントが処方され、自宅に届けられる。費用は全て会社が負担する。

2022 年度のトライアル実施では、生理と更年期が仕事に影響をきたす年間日数の減少が見られプレゼンティーズムも改善するなど、従業員の QOL や仕事の生産性に一定の改善・成果が見られたため、2023 年度に本格導入へ踏み切った。従業員の満足度も高く、「これだけの快適さを得られるなら自己負担でもよい」といった声が上がっているほどだという。

 

女性も活躍できる建設現場に、トイレの環境整備(熊谷組)

女性も活躍できる建設現場づくりを掲げる熊谷組では、女性専用のトイレや更衣室といった設備面だけでなく、従業員のヒアリングもとに、建設現場内での相談しやすい雰囲気づくりなどソフト面の改善にも取り組んでいる。その中で、市街地から離れた建設現場の従業員から「緊急時に生理用品が手に入りにくい」という声があり、女性専用トイレに生理用品ボックスを常備することにした。

また、社内で女性特有の健康課題について意見交換を行ったり、全社員を対象に女性ホルモンに関する健康講演会を実施するなど、社員の意識啓発にも取り組んでいる。2021 年には不妊治療に関する2つの制度を導入。1 つは、男女ともに初期の不妊治療から利用できる有給休暇。もう1つは、特定不妊治療をしている女性社員が仕事を一旦離れ、最大で 1年間治療に専念できる制度。こうした取り組みを通じ、ウェルビーイングを実現できる組織風土の構築に努めている。

熊谷組の女性野健康経営施策

【出典】令和5年度 なでしこ銘柄 注目企業(左:建設現場の環境をパトロールしている様子。右:女性特有の健康課題に関して意見交換などを行う社内の交流会)

 

女性の業務パフォーマンスが17%改善、プログラム参加で(丸紅)

健康経営の柱の1つに、「女性の健康維持・増進に向けた取り組みの強化」を策定している丸紅。これまで女性の健康に特化したサポートとしては、乳がんや子宮がんの予防・早期発見のための検査補助や相談窓口設置などを進めてきたが、生理痛・PMSや更年期症状などには目を向けられていなかった。そこで、ライフステージに応じた健康課題の改善を総合的に支援するフェムテックプログラムを導入。女性の健康課題に関するセミナーの開催や、生理・更年期のオンライン診療・相談・服薬指導・処方等の提供を始めた。プログラムの参加により、従業員の生理・更年期に伴う不調がある時の業務パフォーマンス発揮度は、参加前後で 17%改善した。

フェムテックプログラムの効果検証(丸紅)

【出典】令和5年度 なでしこ銘柄 注目企業(フェムテックプログラムの効果検証)

 

女性に多いがんにも着目、ヘルスリテラシー向上に注力 (オムロン)

オムロンでは、医療費の傾向分析や従業員への健康状態を聞くアンケートを実施しており、その結果、アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムの両方で健康課題が見られたことから、ヘルスリテラシー向上による女性の健康づくりに取り組み始めた。

主な取り組みは、男女両方を対象にしたオンラインセミナー。同社の最多層が 40 代・50 代であることからテーマは更年期とし、産婦人科医による対談セミナーも企画。参加者の質問・相談に医師から具体的なアドバイスを得られる機会を設けている。参加者の満足度は高く、セミナー後のアンケート調査では97%が満足したと回答した。また、アンケートでは「女性特有の病気について知りたい」という声もあったことから、2023 年度は、女性に多いがんについてのセミナーも実施した。

継続的に取組むことで、女性の健康への関心は男性の間でも高まり、男性の参加率は 3 割に上るという。セミナー以外にも、女性ホルモンと体の変化や子宮の病気に関する E ラーニング配信も実施するなど、複数のチャネルでヘルスリテラシー向上を図っている。

 

フェムテックレポート ビジネスモデル、需要性、課題

 

 

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