酷暑で生まれた新たな美容ニーズ、化粧品の開発トレンドから探る女性の悩みトレンドと製品開発事例
本稿は、化粧品の原料販売やOEM・ODM事業を行うホシケミカルズ株式会社による連載記事です。初回と2回目では化粧品市場の全体像を見てきましたが、今回は、近年注目の”酷暑”をテーマにお届け。長期化する夏と猛暑で、生活者の美容ニーズは大きく変化。それに伴い化粧品の開発トレンドにも変化が生まれているようです。
目次
最新の“肌悩みトレンド”を総括、酷暑で変化する美容ニーズ
一年を通じて高温多湿の期間が長く続く日本の環境において、近年「酷暑」という過酷な使用シーンを想定したコスメが増えています。高い気温や湿度に耐えるため、皮脂や汗に強い製品設計が求められるだけでなく、皮脂の過剰分泌に悩む女性がメンズコスメを使用するといった新たな消費パターンも生まれています。四季が二季化するほどのここ数年の大きな気候変動は、これまで皮脂や毛穴の悩みがなかった肌質の人にも新たな肌悩みを発生させ、そのケア方法を模索する人が増えています。
顔については、強い日差しに加え空調によるインナードライも深刻化しています。日中用では、紫外線防御機能とスキンケア効果を兼ね備えた多機能なUVケア品やベースメイクが注目を集め、顔汗によるメイク崩れや不快感を軽減する対策も必須です。実は髪も紫外線によってダメージを受け、頭皮は汗をかくことによるニオイやかゆみなどの不調に悩まされがちです。清潔で健康な頭皮環境を保つため、スカルプケアの重要性も増しています。
体については、薄着で過ごす期間が長くなることから、ムダ毛処理、全身の日焼け対策、日焼け後の保湿ケアや美白といったボディケアへの意識が高まっています。シャワーを浴びられない状況で活躍するドライシャンプーや、デオドラント・制汗アイテム、汗をかいた後でも塗り直しやすい日焼け止めなどが夏の必需品となりました。
化粧品の開発依頼トレンドから見る、夏の悩みトレンド
近年、酷暑が続いていることから、生活者の美容ニーズもそれに伴う変化がみられます。当社にも1年を通して酷暑を切り口とした製品開発の依頼が増えていることから、今回は夏にまつわる肌悩みをテーマにピックアップしました。昨年5月から今年4月までの直近1年間に当社に寄せられた化粧品OEM開発に関する問い合わせデータを元に、特に相談が多い顔・髪・体の3カテゴリーを悩み別に分類して集計しました。集計結果からは、生活者の悩みトレンドと合わせ、業界人が注目する商品カテゴリーの開発トレンドをうかがい知ることができます。
顔悩み:夏の長期化でUVケアの需要が拡大
顔悩みを訴求する製品開発の依頼で最も多いのは、約23%を占めた「紫外線によるダメージ、日焼け」。紫外線による日焼けだけでなく、日焼け後の赤み・ほてりなどアフターケアができる製品に仕上げたい、と言う要望もありました。2位は約16%の「乾燥、カサつき、ごわつき、つっぱり」です。湿度の低い冬場の乾燥に加え、夏場の空調によるインナードライ対策として、ベタ付かないけど保湿感のあるスキンケアを開発したいといった要望がありました。約7%と同数で続くのは「シミ、そばかす、ニキビ跡の色素沈着」と「ほうれい線、たるみ」です。これら上位に並んだ悩みは、紫外線を浴びることに起因するもので、夏の長期化で紫外線を気にする生活者が増えていることを示しています。

【画像】ホシケミカルズ作成。2024年5月から2025年4月までの問い合わせデータを元に、製品開発依頼の相談カテゴリーを顔の悩み別に分類。「その他」に含まれるのは、「【リップケア】血色感、ボリューム不足など唇悩み」、「【フェムケア】ホルモンバランスの乱れによる肌荒れ、生理前の肌トラブル、ゆらぎ肌」、「【冷感】肌のベタつき、火照り」などです。
髪悩み:紫外線や暑さによるダメージで、ケアニーズが増加
髪悩みを訴求する製品開発の依頼で最も多いのは、約20%を占めた「抜け毛、薄毛、分け目が気になる、髪の量が少ない」。夏は紫外線や発汗によって頭皮がダメージを受けやすく、抜け毛や薄毛の一因となります。男性では薄毛悩み、女性向けでは分け目の目立ちや、髪の量が少ないなどの悩みをカバーする育毛・養毛アイテムの開発依頼がみられました。
2位は、約14%の「髪の乾燥、パサつき、広がり、まとまらない」。原因の一つに、紫外線による直接的なダメージが挙げられます。紫外線は髪の表面にあるキューティクルを傷つけ、髪内部の水分やタンパク質を失わせる原因となります。エアコンによる室内外の急激な温度変化も髪の水分バランスを崩し、乾燥を助長します。髪は手触りや見た目で変化を実感しやすく生活者のニーズも具体的です。この明確な悩みが解消できれば、顧客満足度の高さから継続的な利用に繋がりやすいため、効果実感のある製品の開発依頼が増加しています。
3位は約11%の「フケ、かゆみ、ベタつきなど頭皮の悩み」です。頭皮の汗を放置すると雑菌の繁殖を招き、フケやかゆみなどの悩みを引き起こします。頭皮環境を整えることが、フケやかゆみの軽減だけでなく、抜け毛や薄毛の予防、さらには髪のハリ・ツヤ・ボリュームアップにも繋がります。こういったスカルプケアの重要性やメリットは生活者にも認識されてきており、新たな商機と見出している業界人が多いことが分かります。

【画像】ホシケミカルズ作成。2024年5月から2025年4月までの問い合わせデータを元に、製品開発依頼の相談カテゴリーを髪・頭皮の悩み別に分類。「その他」に含まれるのは、「【速乾】髪を早く乾かしたい、ドライヤーの時間短縮」、「【エイジングケア】年齢による髪の衰え」、「【メンズケア】頭皮のベタつき、ニオイなど男性特有の髪悩み」などです。
体悩み:酷暑特有の健康・美容悩みが顕在化
体悩みを訴求する製品開発の依頼で最も多いのは、約14%を占めた「デリケートゾーンのニオイ、かゆみ、乾燥など」。夏場は汗による蒸れに加え、尿や生理時の経血・おりものなどの汚れもニオイやかゆみの原因となります。また、デリケートゾーンの皮膚は薄く摩擦に弱いため、肌荒れや炎症が生じやすい傾向にあります。そのほか、更年期世代を中心とした乾燥悩みなど、近年、顕在化してきた切実な悩みをケアするフェムケア製品の開発依頼が増えています。
次は、約13%の「口臭、歯の黄ばみ、虫歯予防など」。夏場は、暑さによる口腔内の乾燥、冷たい飲み物の過剰摂取が口臭や虫歯のリスクを高めます。近年は、口腔内の健康が全身の健康に繋がることが生活者にも知られてきており、単なる審美的な訴求だけでなく、シニア世代を中心とする健康志向をとらえたオーラルケア製品への要望も寄せられました。
約13%と同数で続くのは「紫外線によるダメージ、日焼け」。顔だけでなく体も日焼けする期間が長期化したことで、紫外線によるダメージを受けています。さらに、約10%で4位にランクインした「汗のニオイ、ワキ汗、体臭など」も夏の代表的な体悩みです。
これらの結果から、酷暑を経験した生活者は、美肌づくりやメイクを楽しむ前に、まずは「不快感」や「不安」を和らげてくれる製品を求めている様子が見えてきます。

【画像】ホシケミカルズ作成。2024年5月から2025年4月までの問い合わせデータを元に、製品開発依頼の相談カテゴリーを体の悩み別に分類。「その他」に含まれるのは、「【肌荒れ・アクネケア】背中ニキビ、お尻の荒れなど」、「【ウォータープルーフ】汗や水に弱い、 日焼け止めが落ちやすい」、「【ダイエットサポート】体重増加、ボディラインの崩れなど」です。
酷暑で生まれた新たなニーズに対応、最新の開発事例
ここからは、当社に実際に相談のあった個別の要望に対し、生活者の夏の悩みトレンドをどのように反映して製品開発を支援したのか?その事例をいくつかご紹介します。
顔悩み:顔汗による化粧崩れを解決する多機能な制汗UV
「顔汗」は、メイク崩れやテカリ、ヨレといった悩みに直結し、紫外線防御効果を低下させる要因にもなります。そうした顔汗の悩みに対応するため、制汗有効成分「パラフェノールスルホン酸亜鉛」を配合した日焼け止めを開発しました。汗孔にフタをすることで汗を抑え、メイク崩れを防ぐ設計です。ノンケミカル処方(紫外線吸収剤不使用)ながら、レジャーシーンも見据えた高いSPF・PA値も取得しました。従来の制汗・汗臭予防のあるUVケアアイテムから進化した、スキンケア効果も兼ね備えた多機能性を実現しました。
髪悩み:紫外線と熱ダメージから髪を守る高機能ヘアケア
顔や体の紫外線対策は常識になりつつありますが、実は、髪も日差しを浴びることで、乾燥やパサつき、キューティクル損傷によるヘアカラーの退色といったダメージを受けています。こうした毛髪への「紫外線によるダメージ」悩みに対応するため、肌にやさしい“アミノ酸”をキー成分としたシャンプーとトリートメントを開発しました。トリートメントは毛髪の熱ダメージ保護に着目した「ヒートケア」設計です。ドライヤーやヘアアイロンの熱を利用することで毛髪表面に被膜を形成し、熱ダメージからの保護・保湿効果を発揮します。また、撥水効果のある成分による速乾効果で、ドライヤーにかかる時間も短縮。熱風による発汗を抑える役割も果たす設計としました。
体悩み:夏の悩みを同時ケア、体臭・汗臭・ニキビを防ぐラグジュアリーなボディソープ
汗による体臭は、多くの女性にとって悩ましい問題です。特に夏場は高い頻度で体を洗うため、従来のデオドラントボディソープでは洗浄力が高すぎて抵抗を感じる方もいます。そこで、毎日使いたくなるようなラグジュアリーな製品を目指しました。体臭への多角的なアプローチとして、体臭や汗臭の原因となる「ニオイ菌」と、肌荒れの原因となる「アクネ菌」を殺菌する成分を配合し、植物エキスによる消臭効果も付与しました。また、肌の炎症を抑える有効成分の働きで、汗による肌荒れやかゆみを防ぎ、健やかな肌状態を保ちます。高いデオドラント効果と、つっぱり感のないしっとり保湿感のある洗い上りを両立するため、肌のうるおい感を意識した成分も配合しました。
【提供元】 ホシケミカルズ株式会社
化粧品の原料商社として1975年に創業。国内外の企業様に向け、“オリジナル化粧品・医薬部外品(薬用化粧品)・健康食品の企画・製造・技術を提供”する提案型OEM/ODM企業です。研究所は東京・埼玉の2拠点、国内4工場体制(化粧品GMP取得)、インドネシア(PT. KEMAS INDAH MAJU)では容器製造も手掛けます。メイクとスキンケアを融合したコスメや、安全性を重視したフェムケアシリーズなど、すぐに商品化も可能なオリジナル開発品も充実しています。
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