化粧品事業への新規参入が増加、OEMのデータ分析から見る最新の参入動向と異業種5社の成功事例
本稿は、化粧品の原料販売やOEM・ODM事業を行うホシケミカルズ株式会社(東京・千代田)による寄稿記事です。創業から50年、長年にわたり企業の化粧品ビジネスを支援してきた中で、近年顕著な動向が見られると言います。それは、異業種から化粧品市場への新規参入。特にここ5年ほどで活発化しており、成功事例も多数出てきているようです。同社が保有する顧客データを紐解きながら、異業種からの参入動向と成功事例を紹介します。
異業種から化粧品事業への新規参入が増加
ここ10年ほどの異業種から化粧品事業への参入傾向を振り返ると、2016~2017年頃に、化粧品業界と近い医薬品メーカーや大手化学メーカー、小売大手が化粧品のPBブランドを販売する動きが見られ、直近では2020年頃から増えている印象です。
その理由のひとつに、コロナ禍によりデジタル化・オンライン化が加速度的に進み、店舗を持たない「D2Cブランド」が急成長した点が挙げられます。サイトの立ち上げから情報発信、マーケティング・PR・販売に至るまでデジタルを活用し、自社のファンに響くコスメを双方向で開発する点も特長です。この時期、動画による商品紹介も浸透し、消費者がコスメをECで買う土壌も整いました。D2CブランドによるSNS等での発信が化粧品ビジネスに興味がある潜在層を喚起しただけでなく、OEM企業サイドが、webサイトの充実やメルマガ配信の強化を図るなどして顧客との接点を増やした、という背景も大きいと感じています。
どんな企業が化粧品事業に参入?3タイプの構成割合と内訳
問合せデータから見る、3タイプの化粧品開発企業
2024年度の1年間に、当社に寄せられた化粧品OEM開発に関するお問合せデータをもとに、化粧品市場への参入状況を3タイプに分類したところ、「美容院や美容系クリニックなど美容事業を行なっているが、化粧品事業に未参入の企業」が約60%、「美容事業にも化粧品事業にも未参入の企業」が約38%、「化粧品事業に参入済みの既存の化粧品メーカー企業」が約3%という結果でした。
「化粧品事業に未参入の企業」の内訳
全体の約60%を占める「美容院や美容系クリニックなど美容事業を行なっているが、化粧品事業に未参入の企業」の内訳を見ると、トップには「美容関連」の企業が12%、インフルエンサーブランドの運営や美容関連企業のSEO対策、広告運用などを手掛ける「マーケティング支援会社」が12%と並びました。
他には、自社栽培した素材を元にオリジナル原料化して化粧品メーカーや専門商社に販売する「食品メーカー」や、美容整体・美容鍼などをメニューに持つ「施設等の運営事業社」など、自社事業や自社ブランドを活かして何かしらの美容事業を行う企業も見られました。

【画像】2024年1月1日~12月31日までの一年間のお問い合わせデータを元にホシケミカルズ作成。「その他」に含まれる事業者は、何かしらの美容事業を既に行なっている農家、農園運営、水産などに携わる六次産業、コンサルティング業(EC・通販、医療)、ホテルや道の駅を運営する観光業など
「美容事業にも化粧品事業にも未参入の企業」の内訳
全体の約38%を占める「美容事業にも化粧品事業にも未参入の企業」の内訳では、「マーケティング支援会社」が19%と最も多く占めています。これまで培ってきたマーケティングの知見や競合分析のノウハウを活かして、消費者のニーズを的確に捉えた商品を開発したり効果的な販売戦略を設計することに長けているため、化粧品事業の成功をイメージしやすいのかもしれません。実際にそのような声が一定数聞かれます。

【画像】2024年1月1日~12月31日迄の1年間のお問い合わせデータを元にホシケミカルズ作成。「その他」に含まれる事業者は、地方自治体や官公庁などの行政関係、専門・総合商社、研究機関、各種コンサルティング業などです
美容領域と親和性が高いアパレルや食品メーカーだけでなく、マーケティング支援、医療機関、メディア、介護・福祉など、業界の垣根を越えたあらゆる業種が化粧品とのシナジーを生み出せると考えられるのではないでしょうか。
新規参入で成功、異業種5社の事例
ここからは、実際に異業種からの参入にあたり当社が開発を支援させていただいた企業の中から、事業が成功した事例をいくつかご紹介します。
マーケティング支援会社:企業支援の経験をもとに開発、スポーツ・介護・ホームケアで使える実用派アイテム
介護福祉事業、整体院・整骨院、フィットネス領域のマーケティングを支援する会社が、スポーツトレーニング時のサポート商品として炭酸泡状のボディーマッサージジェルを開発しました。商品には、血行促進効果のある炭酸ガスを含有しているため、時間をかけてマッサージを行う必要がなく、簡単に血流や巡りを改善できます。施術やトレーニング時だけでなく、介護の現場、スポーツ前後のケア、気になる肩・腰・脚のホームケア用としても販売に至りました。
生活雑貨メーカー :トレンドを捉えた的確な商品開発でヒット、ラインナップ拡充へ
生活雑貨をメインに、近年はキャンプやサウナといったトレンドを捉えたこだわり商品を展開するブランドが、アウトドア使用を想定した日焼け止めクリームを開発しました。天然アロマの香りで虫を寄せ付けにくくする忌避効果が確認されている精油を配合し、運動やレジャーなどアクティブな趣味を持つ顧客層へヒットしました。2品目は、日常生活やジム、旅行での持ち歩きを想定し、髪やボディ、爪にも使えるマルチオイルを開発し、ラインナップを拡充しました。
食品メーカー:食品と化粧品の共通素材で“内外美容”を提案、自社リソースの活用で定番商品へと成長
日本酒やアルコール飲料、健康食品等を販売する食品メーカーが、米由来原料など既に取り扱っている食品の栄養成分を切り口にしたラグジュアリーなスキンケアラインを開発しました。スキンケアはブランドチェンジが難しいと言われる中、まずは気軽に抵抗なく試してもらえるよう、企業資産である通販基盤を活かして販売しました。普段の食生活から美を意識する会員にアプローチできたこと、また、ブランドへの高い信頼感とともに、その信頼感から「自分のお肌にも合うはず」という期待値も奏功し、定番品へと成長しました。
アパレルメーカー:ブランドの世界観を表現、ファッションとメイクのトータル提案でリピーター獲得
働くママ世代へ向けた、都会的で洗練された世界観を持つEC専業アパレルブランドが、美容成分を高配合したクッションファンデーションを開発しました。子育てや仕事でゆっくり化粧品を選ぶ時間がないユーザーの悩みを反映し、下地やパウダーが不要で単品使いできる剤型を選定。ブランドの空気感を表現した色味や香り、容器デザインを追求したほか、サイト上でのファッションとメイクのトータル提案も行いました。一般的にベースメイクは、タッチアップなしで購入してもらうにはハードルが高い商品ですが、こういった随所の工夫がターゲットに刺さり、レフィルを販売するほどまでにリピーターを増やしています。
医療機関:歯科医の知見と患者の声を反映、強みは市販品にはない独自性
複数の歯科クリニックを運営する企業が、院長の知見や患者からの声を反映したオリジナルの歯磨き粉を開発しました。それまでは、仕入れた歯磨き粉を販売していましたが、市販品にはないこだわりの「味」「泡立ち」「配合原料の選定」で独自性を確立。訪問治療での使用と、自社クリニックでの販売・通販でスタートしました。知る人ぞ知るアイテムというブランディングで、現在は、口腔ケアの意識が高い層と接点を持てる大手ECモールへと販路を拡大しています。
【提供元】 ホシケミカルズ株式会社
化粧品の原料商社として1975年に創業。国内外の企業様に向け、“オリジナル化粧品・医薬部外品(薬用化粧品)・健康食品の企画・製造・技術を提供”する提案型OEM/ODM企業です。研究所は東京・埼玉の2拠点、国内4工場体制(化粧品GMP取得)、インドネシア(PT. KEMAS INDAH MAJU)では容器製造も手掛けます。メイクとスキンケアを融合したコスメや、安全性を重視したフェムケアシリーズなど、すぐに商品化も可能なオリジナル開発品も充実しています。
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