【生活者の疑問vol.3】百貨店の過剰接客

【生活者の疑問】シリーズでは、日々の生活や買い物の現場で女性たちが感じる、企業に対する「疑問・不満・不思議」について掲載しています。ウーマンズラボ編集部は日々女性たちの声を収集していますが、彼女たちの声が企業になかなか反映されない・届かないと感じています。そこで、メーカー・流通・メディア・総合商社・広告代理店など多くのビジネスパーソンの方々にご覧頂いているウーマンズラボを通じて女性たちの声を企業にお届けできるよう、ウーマンズラボ編集部が女性たちの声を収集・再構成・編集しました。多くの企業が「生活者の疑問」を知り、改善のきっかけにして頂ければ幸いです。

買う気があったけど、過剰接客が不快で退散…

百貨店だけとは限らないが、いわゆる“百貨店型接客=過剰接客”が原因で買い物をする気がなくなってしまった、という経験をお持ちの方は多いのではないだろうか。例えば次のような例だ。

  • 百貨店の婦人服売り場。通路を歩くと、各店舗の店員さんがいっせいに「いらっしゃいませ」と熱視線。通路を歩いてると、暇そうな店員たちが次々に声・視線を投げかけるものだから気まずくて店に入れない。結果、どこにも入らずそのフロアから退散。
  • 素敵な服を発見。店舗に入った瞬間から数人の店員の視線がつきまとう。右に移動すれば店員もさりげなく移動、左に移動すれば店員もさりげなく移動。服を手に取れば、待ってましたとばかりに「そちらの服は〇〇なんですよ」と急接近。どの服を手に取っても都度話しかけてくる。終始 “監視” されているからゆっくり見ることもできない。居心地が悪くなり何も買わずに店を出た。
  • 試着をしてみた。しかしカーテンの向こうにはうっすら人影が。そう、それは店員。しっかり待機し、試着した頃を見計らって「どうですか?」と声をかけてくる。仕方なくカーテンを開けるが、20㎝横でぴったりと寄り添って「素敵ですね!」「このブラウスと合わせると春っぽいですよね」としきりに話しかけてくる。一人で鏡を確認したいのに…。これではじっくり鏡を見て、検討することすらできない(鏡で自分の姿を見てる様子を、見ず知らずの他人にじっと見られるのは気まずいことこの上ない)。ゆっくり検討できない上に、あからさまなお世辞に嫌気がさして、欲しかったのに、買わずに退散。

他にも挙げたらきりがない。一方でファストファッションと呼ばれる店舗は完全放置型接客として知られる。困ったときにだけ客は店員に声をかける。用件が済めば、店員もあっという間に自分の業務に戻るため、客も心ゆくまで買い物を楽しめる。時に、完全放置型接客が行き過ぎて、あるいは企業文化なのか対応が悪い店員が多くいる店舗もあるが、程よい完全放置型接客でありながらも、困ったときに声をかけると丁寧な応対をしてくれるユニクロの接客バランスはちょうど良い。

過剰接客が招くのは、「その店、行かなくなった」

実店舗と通販は、しばしば「実店舗VS通販」と描かれ、「実店舗はどうすれば通販に勝てるか?」という論争が巻き起こるが、実店舗は通販を意識しすぎているのか「通販にはないリアルな体験、接客を大切にしよう」と躍起になり、客が不快になってしまいかねない“過剰接客”をするところが増えている印象がある。しかし、前述のような接客をしている限り、女性たちの足は遠のくばかり。やがては、実店舗派の女性も、自分のペースでゆっくり買い物ができる通販を選択するだろう。あるいは今後は、接客のない無人店舗を意図的に選択する女性も増えるだろう。実際にネット上には次のような声を多く見かける。以下はほんの一例にすぎない。

・美容室で話しかけられるのって、正直しんどい。ゆっくり雑誌を読みたいのに。
・「いらっしゃいませ」を10秒に1回くらい叫んでて、うるさい。そんなに言う必要ってある?
・レジの近くを通り過ぎるとじーっと見てくるコンビニ店員。感じ悪いから最近は行かないようにしてる。
・店の奥から店外をずっと直視する店員たち。怖くて店に入れない…
・店員が踊ったり歌ったりする居酒屋。誰も喜んでない雰囲気なだけに見てて悲しくなった…。
・店員たちの “監視する目” が怖い。
・商品を店の出口まで運ぶサービスっていらない。会計した後も店内を見たいのに、出口まで見送られたらそのまま出るしかない。

目の前の新規顧客を失うだけではない。共通して多く投稿されている意見が「過剰接客がうざくて・不快で・面倒で・居心地悪くて、その店には行かなくなりました」。過剰接客は新規顧客ばかりか、リピート客すら失いかねない。

「会社の方針だから仕方ない」

では、企業はなぜ多くの人たちがこのような不満を漏らしているのにそのような接客を続けるのか。店員だって、一消費者として買い物をしているときに、「洋服を手に取った瞬間から永遠に話しかけてくる」「終始、店内での動きを複数の店員が監視してくる」といった過剰接客をされたら、不快に感じたり、買い物がしづらいと思う人はいるはずだ。

原因は、企業の方針・マニュアルだ。様々な掲示板やコミュニティサイトには、「店側の人間です」という女性による投稿を確認できた。「私もそういう接客はいかがなものか、と疑問に思っているが、会社の方針としてマニュアルに『店に入った瞬間に天気の話題をする』『客がいるときや、店に入りそうな瞬間は、自分の作業は一切しない』『店にいる間中は、常に話しかけ続ける。それが心のこもったおもてなしだ』などと書かれているんです。私たちも仕方なくやっているんです…。」とのこと。

企業の多くは全店舗同一のマニュアルで統制を図るが、ではそのマニュアルをつくったり、GOサインを出す上層部は、なぜその過剰接客に疑問を抱かないのだろうか?代々受け継がれてきた社内方針だから誰もその点に関して疑問を持たないのかもしれない。あるいは、その方法が良しとされていたかつての時代の接客が今もなお正解と思い込んでいるのかもしれないし、ひょっとしたら、買い物という行為をあまりしたことがないのかもしれない。それか「真に喜ばれる接客スタイルはどんなものだろう?」と突き詰めて考え抜くのが面倒なのか…。

女性ワーカーも交えて、接客レベルを改めて考え直したい

ある企業のプロジェクトにウーマンズが参加したときのこと。集まっていた約20人の幹部たちは全員が男性だった。しかし、その企業が抱えるユーザーは9割が女性。他、ある会議に参加したときは、プロジェクト責任者の男性が「恥ずかしながら、女性向け商品を男性陣だけで一生懸命考えていたんです。全く売れなかったのですがね…」と一言。この他にも、日本企業が依然として男性が主体であることを痛感させられる場面を、ウーマンズは多く見てきた。そういった企業・団体・チームに、主婦感覚を持った女性ワーカーが一人でもいれば、そして女性ワーカーの声に耳を傾ける体質が企業上層部に少しでもあれば、過剰接客は必要か否か?どの程度の接客が心地良い買い物体験になるか?を考えられるのかもしれない。

接客レベルは企業ブランド・提供価格帯などにも依存するため、すべての接客場面において「過剰接客はNG」とは言えないが、接客レベルの加減について、マニュアルを見直すなど再検討は必要かもしれない。時代は様々なモノコトに関して「華美・過剰」から「シンプル」に変化し始めているのだから。なおマニュアルの再検討を試みる際は、特に客との距離が近い女性ワーカーを交えるのはマストだ。

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