食の3大消費基準は変わらないも、物価上昇で「経済性思考」が13年ぶりに4割越え

食の3大消費基準は価格・健康・手軽さの3点だが、止まらない物価上昇やアフターコロナへの移行により、人々の食消費のマインドに変化が生まれてきたようだ。日本政策金融公庫が、食に関する「消費者動向調査」の結果を公表した。今年7月に20〜70代の男女2,000人を対象に実施したもので、食の志向や食品の値上げなどについて聞いた日本政策金融公庫 農林水産事業本部 情報企画部「消費者動向調査(令和5年7月)」,2023.9

「現在の食に対する志向として、特に強いもの」を聞いたところ(2つ選択)、これまでに継続実施してきた調査結果と変わらず、トップ3は「経済性志向(42.5%)」「健康志向(42.3%)」「簡便化志向(35.9%)」だった。その他の「安全志向」「手作り志向」「国産志向」「ダイエット志向」などはいずれも20%を下回り、食の消費基準としては優先度が低いことがわかった(※)

 

【出典】日本政策金融公庫 農林水産事業本部 情報企画部「消費者動向調査(令和5年7月)」2023.9

 

「経済性志向」は前回比で+4.2%と大きく上昇。リーマンショック後の不況で消費者の節約志向が高まっていた2010年1月調査(43.2%)以来、13年ぶりに40%を超えた。相次ぐ値上げに、節約志向が強まっていると考えられる。

2021年7月から2022年7月まで、3回連続減少していた「健康志向」が今年の1月以降で上昇に転じたのは、アフターコロナへの移行が背景にありそうだ。コロナ禍は生活者の健康意識が高まったことが各所の調査で明らかにされたが、一方で雇用不安から、割高になる健康志向の食消費を抑えていた人たちも多い。今年に入り日常の暮らしに戻り始めたことから、健康志向が復活してきたのかもしれない。同社に話を聞いたところ、「直接的な因果関係は掴めていないが、その可能性はある」とのこと。

続いて以下は、「経済性志向」「健康志向」「簡便化志向」を年代別に集計してまとめたもの。「経済性志向」と「簡便化志向」は、年齢の上昇とともに低下していく。働き世代・子育て世代で大型消費も多いからだろう、コスパとタイパを重視する傾向は若い世代に顕著に見られる結果となった。一方で、現役世代よりも時間とお金にゆとりがある60代・70代は、圧倒的に「健康」を重視していることがわかった。

 

【出典】日本政策金融公庫 農林水産事業本部 情報企画部「消費者動向調査(令和5年7月)」2023.9

 

(※)各志向の定義

  • 経済性志向:食費を節約したい
  • 健康志向:健康に配慮したい
  • 簡便化志向:料理や後片付けの手間を省きたい
  • 安全志向:食の安全に配慮したい
  • 手作り志向:食材とこだわって手作りの食を摂りたい
  • 国産志向:原材料など国産品にこだわりたい
  • 美食志向:味の美味しいものを追求したい
  • 地元産志向:原材料など地元産にこだわりたい
  • ダイエット志向:できるだけカロリーの高くないものを取りたい
  • 外食志向:家ではなく外で摂りたい
  • 高級志向:高価なものを摂りたい

 

女性の健康食品の選択基準は?

小林製薬の紅麹サプリを巡る問題で、健康食品への不信感や動揺が消費者の間で広がっています。特に男性よりも健康意識・健康行動者率が高い女性による “健康食品の摂取控え” が懸念されることから、健康食品を普段摂取している20〜70代女性を対象に、健康食品に対するイメージの変化や、今後の摂取意向、今後の健康食品の選択基準を調査しました。女性たちのリアルな声からは、今後の健康食品の開発・販促・コミュニケーション設計のヒントを見つけることができます。詳細は「紅麹サプリ問題で、健康食品の選択基準に変化 女性消費者分析でわかった88キーワード」へ。

紅麴サプリ問題 女性消費者動向分析

 

 

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