商品開発のプロセスと、女性向けヘルスケア商品の開発ポイント(2/3)
女性向けヘルスケア商品の開発ポイントと事例
女性向けヘルスケア商品の開発のポイント
女性向けヘルスケア商品の開発には以下5つのポイントを抑えておきたい。
1.ターゲット女性の策定
(1)中間層か富裕層か?
所得の二極化が進む昨今、商品開発前の段階でどちらをメインターゲットにするかを策定しておきたい。品質や価格、想定流通経路などに大きな違いが出てくるからだ。働く女性、資産運用に積極的に取り組む女性、ユーチューバーやブロガーに代表されるネットで収入を得る女性たちの登場で、収入を積極的に増やす女性が増えており、各調査では実際に富裕層の割合が年々増加傾向にあることが分かっている。従来は中間層をターゲトにした商品開発に取り組む企業が多かったが、二極化の流れを受け、富裕層をメインにした商品開発を行う企業が徐々に増えている。
(2)ライフコース
女性マーケティングにおけるターゲット策定では、ライフコース視点で考えるのが必須。例えば、同じ30代女性でもライフコースが「ママ」か「シングル」かによって消費傾向や価値観が異なるからだ。ライフコースの考え方は以下の記事をチェック。
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2.行動変容ステージモデル
行動には心の状態や実践の程度に応じて5段階のステージがあり、人はこのステージを前進したり後退したりする。ステージごとに心境や実践の程度が異なるので、指導やアドバイスをする前に対象者がどのステージにいるか?を見極める必要がある。この考えをヘルスケア領域における商品開発に活かすことで、より的確にターゲットにアプローチできる。
スポーツジムにおけるフィットネスプログラム開発を例に考えてみよう。以下の図のうち「無関心期」の女性に対するプログラムと、「実行期」の女性に対するプログラムでは、プログラム内容を変えるべきである。
- 無関心期の女性への有効なプログラム
エンターテイメント性が高く、フィットネス要素が低いプログラム開発が良い。理想的なのは例えばポケモンGO。「ポケモンGOで遊んでいるうちに、気づいたら毎日たくさん歩くようになった」というのは、無関心期女性へのアプローチとして最適。 - 実行期の女性への有効なプログラム
上記のような「結果よりもエンタメ要素が強い」プログラムはNG。理由は、実行期にある女性の場合、「結果」を求めているからだ。結果につながる本格的なフィットネスプログラムが好まれる。
商品開発を進める前に「どの行動変容ステージモデルにいる女性をターゲットにするか?」を決めておきたい。より「売れやすい商品」を開発することが可能になる。
3.年代ごとの女性疾患や不調を考慮
ヘルスケア関連商品の開発では、その商品の根幹となる主力機能だけでなく、ターゲット女性の年代特有の疾患や不調もセットで考慮したい。
例えば40~50代女性向けのダイエットアプリを開発する場合。単純に10~30代女性向けのダイエットアプリのようなダイエットサポート機能を詰め込むだけでなく、更年期症状の時期や閉経を迎える時期であることを考慮したダイエットサポート機能を入れたい。
エステサロンの場合。エステサロンが50~60代の女性向けに痩身のためのボディケアメニューを提供しようと思ったら、あわせて食事指導や生活指導をセットで行うことで顧客満足度を向上できる。閉経を迎えた女性は生活習慣病の罹患リスクが上がったり、男性のようなメタボ体型になりやすく、エステサロンで提供するボディケアだけで痩身効果を出すことは難しくなる。もし「年代ごとにあらわれやすい女性疾患や不調を考慮する」発想がなければ、50~60代女性に対しても、20~40代女性に提供しているのと同じボディケアメニューを提供することになり、結果、痩身効果を出すことができず顧客満足度の低下を招く原因になりかねない。
主力機能だけを商品に入れ込むのではなく、年代ごとにあらわれやすい女性疾患や不調までセットで考えて商品開発を行うことで、「より効果を実感してもらえるヘルスケア商品」の開発が可能になる。年代ごとにあらわれやすい女性疾患・不調は開発段階で確認しておこう。
4.ヘルスリテラシ―レベル
ヘルスリテラシーは収入や学歴と、相関関係にあることが知られており、実際、富裕層と低所得者層を比較するとヘルスリテラシ―が高く健康ゴトに時間・労力をかけるのは富裕層だ。ヘルスリテラシ―レベルが高い層を狙うほうが健康行動は促しやすい、つまり自社開発のヘルスケア商品に興味を持ってもらいやすいが、どちらを狙うのがベストか?は、各社開発の商品ジャンルや狙いたい市場によって異なるため一概にヘルスリテラシ―レベルが高い層を狙うのがベストとは言えない。ヘルスリテラシ―が高い層を狙うのか、低い層を狙うのか?によって開発すべき商品も、その後の販売戦略も大幅に変わってくる。ヘルスリテラシ―レベルも商品開発を進める前段階で確認しておきたい。
5.デジタル度合
特に医療・ヘルスケア産業ではデジタル技術が急速に進み最先端技術がてんこ盛りのヘルスケア商品が増えているが、女性のデジタル利用率は未だに高いとは言えず、使いこなせない女性も多い。これは一部特別な女性や高齢女性だけの話ではなく、20~30代の若い女性でもデジタルを苦手とする女性は多く、ある30代女性はこのように言っている「facebook、instagram、メルカリの違いが全く分からない」。ウェアラブル端末の利用率に関する調査では女性の利用率はわずか数%という結果も出ている。商品開発する際、アナログ商品を目指すのか?それともデジタル100%商品を目指すのか、それともデジタル50%+アナログ50%商品を目指すのか。デジタル度合の割合は事前に検討したい。