女性マーケティングで「女性客を増やす」 戦略設計の基本
消費全体の8割に関与すると言われる女性の消費パワーは「働く女性/未婚女性/長寿女性の増加」により年々高まっており、女性客を獲得・ファン化させることによる売り上げ増は期待大。女性市場は数少ない成長市場の一つとして今、注目されています。
目次
女性市場のビジネスチャンス
ボストンコンサルティンググループは、女性市場について次のように述べています。
女性による消費、ウーマン・エコノミーの規模は、全世界の消費の64%を占めるほどになっている。今後の成長を秘めた数少ないポケットとして新興国に注目する人も多いが、BRICs諸国の市場を足し合わせても、女性市場のビジネスチャンスには遠く及ばない。日本が今日、低い経済成長性に苦しみ、市場の成熟、出生率の低さ、低迷する国内経済などの問題に頭を悩ませているのは確かだが、イノベーションと女性消費者への深い理解と情熱をもってすれば、世界で一番難しい消費者マーケットといわれる日本はチャンスを世界中に広げることができる。(引用:「ウーマンエコノミー世界の消費は女性が支配する」ボストンコンサルティンググループ)
当稿では、女性ヘルスケア女性市場専門のシンクタンクとして活動を行う当社ウーマンズの「女性マーケティング」の基本の考え方を解説します。
女性視点のマーケティング見直しは、課題の発見へ
多くの企業では売上や新施策の反応が想定以下だった場合、「価格が高かった/販促費が不十分だった/クリエイティブの問題」などに原因を見出しがちですが、「女性マーケティング視点」から、その原因を模索すると、これまでに気づかなかった、あるいは見落としていた施策の発見につながります。
「女性マーケティンス視点で施策を見直すこと」は、「消費の8割(※)に女性が関与している」という市場環境に対応できるためです。(※)市場全体の消費の8割に女性が関与しているという根拠は様々な企業の調査結果で明らかになっているため本稿では詳細は割愛します
ターゲットが女性にしていても「ターゲットである女性の理解を深める(消費行動の特徴・トレンド・ニーズ・価値観・心理など)」ことに重きを置く企業はいまだ少ないのが実際です。「電通(または博報堂)×トレンダーズ×当社ウーマンズ 合同の女性マーケテイング講座」は人気講座としてすでに3年以上にわたり、計20回以上開催していますが(2020年6月現在)、毎回ご参加企業様からは「新しい視点だった」「女性マーケティングの手法を初めて知ることができた」との感想を頂きます。
女性マーケティングとはつまり何?
女性マーケティングとは、女性視点でマーケティング戦略を考えていくことです。女性視点で考えるというのは「女性ならではの生き方の多様化(ライフコース)、価値観の変化を理解し、その都度どのようなニーズや不満、悩みが生まれるか?変化するのか?を考慮して戦略設計を行うこと」を指します。
女性視点でマーケティング戦略を設計する、というのは「今現在、そして直近の未来で、ターゲット女性の人生に何が起きているか?(=ライフコース)」という点を最も重視する考え方と言い換えることもでき、これは女性マーケティング戦略の基本の考え方になります。
女性マーケティングの基本 ライフコース
女性マーケティング戦略で最も重要な考え方が「女性の人生において、過去・現在・未来に何が起きるか?=女性のライフコース」。女性のライフコース理解があいまいな状態で戦略設計を行うと、期待通りの成果につながらない、という結果になってしまいます。
近年は女性のライフコースが多様化したことで、価値観の多様化が起きていますが、様々な企業様からご相談を頂くウーマンズとしては「従来のマスマーケティング施策を今もなお継続している」「ライフコースを反映させた戦略をとっていない」といったケースが今もなお多いように感じます。「思うような結果が出なかった…」「他社との差別化ができない」「低価格戦略での勝負に陥っている」場合は、女性市場に対する理解不足が原因かもしれません。
ライフコースについて知る
女性のライフコースの多様化は、価値観の多様化へ
資金が潤沢な大企業でも、最近は広告出稿による以前のような反響獲得が難しくなっています。当社ウーマンズに寄せられる企業様からのご相談で多い内容の一つが「マス広告(テレビ、ラジオ、雑誌、新聞)を使わずに女性客の獲得につながる戦略を一緒に開発してほしい」といったものです。
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マス広告による効果は今でも確かに大きいのですが(例えばライザップのテレビCMは成功事例の一つでしょう)、マス広告全盛期と比較すると広告効果が低下していることは周知の事実です。それは、消費者のマス離れも要因の一つですが、もう一つの要因は「女性の生き方が多様化したことによる、女性の価値観・消費行動が多様化・複雑化したこと」にあります。以下図は、高度経済成長期の頃最も一般的だった女性のライフコースです。結婚・子供の誕生に伴い多くの女性は退職し専業主婦の道を選びました。当時は、女性の生き方(ライフコース)は男性同様にシンプルだったため、企業のマーケティングも極端に表現すると「未婚か既婚かの2パターンのみ」で十分に消費者の反応を得ることができた時代でもありました。
しかし、今は女性の人生の選択肢(ライフコース)が多様化しています。例えば以下です。
- 結婚、出産しても正社員として働き続ける
- 結婚、出産したら専業主婦になる
- 結婚するが子供を産まずに共働き
- 結婚せずシングルとして生きていく
- 結婚・出産で一度離職するが、その後期間を置いてパートとして復職
など
近年の女性のライフコースの一部を図で表現すると以下の形態になります。上記図と比較すると女性の生き方が多様化していることが分かります。
女性の生き方(ライフコース)が多様化すると当然、女性のニーズや不満、価値観、価格に対する考え方も多様化します。以前のような、全国一律のマスマーケティングでは反応を得られなくなっているというのは、そういった「女性の生き方の多様化」が大きく影響しています。
ライフコースごとに異なる女性の価値観
「女性のライフコースの多様化による価値観の多様化」の事例として4人の女性(36歳共働き子有女性,36歳独身正社員女性,36歳専業主婦,73歳単身専業主婦)を事例に挙げます。どんなライフコースを歩んでいるか?によって、それぞれの価値観が異なること、そして響く商品・サービスが異なることがお分かりいただけます。
【例1】時短を求める女性、求めない女性
同じ30代女性でも上記3名の女性は全く異なる価値観を持っています。「36歳共働き子有」は毎日仕事・家事・育児に追われ、毎日大忙し。常に家でも会社でも誰かと繋がっているため、一人になって落ち着く時間もない彼女は、時短を実現する商品やサービスに惜しみなくお金を使います。例えば「宅配スーパー」「家事代行」「ベビーシッターサービス」などです。そんな「共働き子有女性」に対し「73歳一人暮らし専業主婦」は、自宅で一人暮らしで就業していないめ、時間を持て余し、さらには一日誰とも会話をせずじまいのこともしばしば。そのため、人との交流(会話できる時間)や時間消費できるモノ・コトに価値を感じやすいのが特徴です。「人を介さずに買い物ができて且つ時短の宅配スーパー」に対するニーズは低い一方で(スーパーが遠方にある、体が不自由などの場合を除く)、他者との会話や交流ができるサービスや商品を好みやすい傾向にあります。
【例2】自分消費を優先する女性、しない女性
次に「36歳独身正社員」と「36歳専業主婦子有」を比べます。前者の女性はシングル(独身)のため稼いだお金全てを自分のために自由に使えるのに対し、後者の女性、つまり結婚して夫や子供がいる女性は自分消費の優先順位が下がり、子供や家のこと、夫関連の消費の優先順位が高くなります。ということは、例えば「美容商品」を販売している場合は、前者のライフコース女性をターゲットに策定する方が、購入してもらいやすくなります。
さまざまなライフコースを歩む女性のうち、上記でご紹介した4人の女性は一例にすぎませんが、このようにライフコースの違いによって、女性たちは異なる価値観を持ち、異なる消費行動をとることを前提に考えると、どういったマーケティング施策だと、施策の反応を上げることができるか?を検討しやすくなります。
女性客を増やす、戦略設計の基本構造
女性マーケティング戦略で最も重要なのが「ターゲット女性をライフコースで捉えること」であることを解説してきました。次に、その点を踏まえた上で「女性客を増やす、戦略設計の基本構造」について考えます。これまで、大手企業様を中心に女性マーケティング支援を行ってきている当社ウーマンズでは「女性客を増やす、女性マーケティング戦略設計の基本構造」を以下のように捉えて、戦略設計のアドバイザリーを行っています。
【Aの解説】
「女性特有の考え方や行動」といった“普遍的な女性の特性”を理解することが女性マーケティングの基本です。こちらは、社会情勢やトレンドにさほど影響されることがありません。例としては「男性と比較して女性は共感力が高い」「理論より感情で行動・判断することが多い」「シングル女性は自由に使えるお金が多いが、既婚の専業主婦は自由に使えるお金が限られている」などが挙げられます。
【Bの解説】
【A】の次に、戦略に反映すべきことは「1~3年単位で変化していく女性のトレンドや消費傾向」です。【A】は“普遍的な女性の特性”であるため、短期間でその特性が変化することはありませんが、【B】は社会情勢が強く影響するため、短期間で変化していきます。例としては「購入よりも、シェアリングの方がコスパが良い」「SDGsを意識した買い物をしたい」などが当たります。数年前までは、シェアリングやSDGsといった概念は、消費者の間ではほとんど知られていませんでしたが、ここ1~2年で一気にキーワード認知率は上がり定着してきました。このように短期間で変化していく「女性のトレンドや消費傾向」が【B】にあたります。
【Cの解説】
【A】と【B】の戦略設計が終わったら、自社の業界のマーケティングやトレンドを反映します。フィットネス施設を例に挙げると「マンツーマンフィットネス教室」「無人の24時間利用可能なフィットネス施設」、などが該当するでしょう。
A⇒B⇒Cの順番で女性マーケティング戦略を設計することで、ターゲット女性の心を掴む施策を策定しやすくなりますので、ぜひ上記流れで戦略設計を検討していただければと思います。
女性マーケティング戦略を体系的に学ぼう
当稿では女性マーケティングの基本についてお伝えさせて頂きましたが、本来は「女性トレンド」「女性市場における社会課題」「社会情勢」など多岐にわたる視点から分析を行った上で、女性マーケティング戦略の設計を行います。投稿ではお伝えしきれなかった内容を「7日間のメール講座(無料)」としてご用意しておりますので、「女性ヘルスケア市場について網羅的に・体系的に学びたい」方はぜひ「7日間のメール講座」をご活用ください。7日間の内容は以下です(女性ヘルスケア業界に特化した内容です)。
- 【1日目】ヘルスケア市場概況 〜市場規模、参入状況、注目のブルーオーシャン領域〜
- 【2日目】フェムテックはなぜ社会現象に?10年の女性生活者動向を振り返るとわかる興隆のワケ
- 【3日目】世界的にやってきた変革の波、ヘルスケア業界の新潮流とは?
- 【4日目】男女の違いから考える、ヘルスケアマーケティングの基本
- 【5日目】女性ヘルスケア市場の消費トレンド&ニーズ、最新動向
- 【6日目】女性の健康問題一覧(保存版)
- 【7日目】自社のヘルスケア商品をより多くの女性に届けるには?
女性マーケティング関連のセミナー・講演
他、当社ウーマンズは各地で女性マーケティングに関する講演・セミナーを担当させて頂いております。各回「分かりやすい」「事例が豊富で現場にすぐ活かせる内容が多い」といったお声を頂いております。最新情報は随時こちらに掲載しています。ぜひご参加いただければと思います。
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