60歳以上の女性の7割が「実年齢より若い」、シニア女性の意識から探るセカンドライフ消費
本稿は、女性インサイト総研の株式会社ハー・ストーリィによる連載記事です。女性視点マーケティングで30年以上にわたり企業の商品開発やマーケティングを支援する同社では、女性インサイトを探るため、さまざまな視点から消費行動を分析しています。今回のテーマは、「セカンドライフ消費」。シニア女性の消費行動や意識を紐解きます。
目次
従来のイメージとは別物?シニア女性のアクティブな実態に迫る
近年、60歳以上の女性たちの暮らしぶりは、従来のイメージとは異なり、より自分らしくアクティブに楽しむ姿が目立ちます。こうした変化を明らかにするため、60歳以上の女性を対象に「暮らしと興味関心」に関する調査を実施。その結果、年代ごとに異なるライフスタイルや消費行動が浮き彫りとなりました(調査概要:60歳以上の女性268人にインターネット調査を2025年7月に実施)。
「実年齢より若い」と思う女性は7割
「自身の『気持ちの年齢』は実年齢と比べてどのように感じるか?」という質問では、66.8%の女性が「実年齢より若く感じる」と回答。特に70〜74歳では「10歳若い」と感じる人が最も多く、加齢に関わらず自己認識はポジティブであることが浮き彫りになりました。
60代は毎日外出、75歳以上は週2〜3回に減少
普段の外出頻度を見ると、60代女性の7割は「ほぼ毎日外出する」と、日常的にアクティブな生活を送っていることが分かりました。しかし、70代以降では「ほぼ毎日」が減少し、「週2〜3回」や「月に数回」という回答が増加。年齢を重ねるにつれて外出頻度が減り、買い物や通院といった生活に直結する用事や、健康のための散歩などに絞られていく傾向が見られます。
外出理由、60代は「人と会うため」、70代は「学びや社会参加」
外出の目的は、全体の9割が「食料品などの買い物」でした。さらに年代別でみると、60〜64歳は「外食やカフェ(40.7%)」「家族・友人と会う(44.1%)」といった、“人と会うための外出”が中心でした。一方、65〜69歳では「健康のための運動(43.6%)」「通院(38.5%)」「趣味(35.9%)」「習い事(21.8%)」「ボランティア活動(14.1%)」など、”健康と学び”に軸足を置く行動が拡大。70〜74歳になると、買い物に加えて「旅行(33.3%)」や「習い事(30.0%)」「ボランティア活動(16.7%)」といった社会参加的な活動が広がっています。
健康習慣は「食事・運動・会話」、70代は“新しい挑戦”にも意欲的
健康維持の取り組みとして全体で最も多かったのは、「食事に気をつけている(54.1%)」。続いて「散歩・ウォーキング(43.9%)」「人と話す(38.5%)」、「健康食品やサプリの利用(25.8%)」が挙がりました。特に70代前半は「新しいことに取り組む」と答えた人が30.0%と高く、心身の健康を維持するために新たな挑戦を積極的に取り入れている様子がうかがえます。
不安の中身が変化、60代は「お金」70代は「健康と安全」
現在、不安に感じていることについては、60代前半では「お金・老後資金」「自身または家族が働けなくなること」「持病の悪化」など、将来設計や経済面に関する回答が目立ちました。これに対し、65〜69歳では「認知症・物忘れ」「自分の足で歩けなくなること」「配偶者・家族の介護」など健康面への不安が顕著。70〜74歳では「認知症・物忘れ」「自分の健康状態や病気」「自宅での事故や災害」「詐欺やネット被害」など、健康と生活安全を幅広く懸念する傾向が強まっています。
スマホ利用9割超、70代は「紙×オンライン」のハイブリッド型
普段、よく利用している情報機器やサービスについては、60代前半から70代以上まで、いずれの世代でも「スマートフォン」の利用率は9割を超えており、「ガラケー」の利用はわずかにとどまりました。特に65〜69歳はスマートフォンの普及率が97.4%と最も高く、タブレットや新聞・雑誌と、多様なものを利用。一方、70〜74歳ではスマホ率92.9%に加え、PC利用64.3%、オンラインショップ利用54.8%と高水準を維持しつつ、新聞やテレビショッピングなど紙媒体も組み合わせる「ハイブリッド型」の消費行動が特徴的です。
「やりたいこと」は世代で変化、60代は「備え」・70代は「身近な楽しみ」
これからやってみたいと思うことで最も多かったのは「健康的な生活を続けたい」で、70〜74歳では63.3%と特に高い結果となりました。60代前半は、「習い事や講座に通う」「投資・資産運用」「人の役に立つことをしたい」など、退職後を見据えた“備えと学び”への関心が中心。65〜69歳は「今やっている趣味の継続」「新しい技術や機会に触れてみる」など、日常生活を充実させる行動が多くみられました。70代では「家庭菜園・ガーデニング」や「日帰りツアー参加」「家族や孫との時間を取る」など、より“身近な楽しみ”に軸足を置いたライフスタイルが浮かび上がりました。
「年齢に縛られない」女性たちが拓く新しい市場
今回の調査から、60歳以上の女性たちは「年齢に縛られず、今を前向きに生きたい」という意識が非常に強いことが明らかになりました。7割が「実年齢より若い」と答えるなど、彼女たちは自分らしい時間を大切にし、ファッションや学び、旅行や趣味といった体験を積極的に楽しんでいます。こうした姿勢はそのまま消費行動に反映されており、60歳以上女性の市場は今後も大きな可能性を秘めています。
【提供元】 株式会社ハー・ストーリィ
本稿詳細を無料でダウンロード頂けます「法人クラブ inher会報誌 HERSTORY REVIEW 2025年9月号アンケート調査資料「60歳からの暮らしと興味関心についてのアンケート」。
女性顧客のインサイトを見える化する日本で唯一の専門コンサルティング会社、女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィです。1990年の創業以来、女性の消費行動や深層心理を継続的に研究・分析し、 企業のマーケティングや商品開発における課題解決を支援しています。職業や家族構成などの「ライフコース」と、年齢や年代といった「ライフステージ」の2軸で女性を分類し、実態に基づくデータを体系的に分析。得られた知見をもとに、企業の戦略設計や施策の最適化を行っています。
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