2025年の女性市場、トレンドキーワードは「わたしLOVER」 インサイト視点で読み解く女性の消費行動

本稿は、女性インサイト総研の株式会社ハー・ストーリィによる寄稿記事です。女性視点マーケティングで30年以上にわたり企業の商品開発やマーケティングを支援する同社が毎年発表する、女性市場のトレンドキーワード。今年は2月に発表しました。2025年のトレンドキーワード「生活マージ」「倫理消費」「時産ウェル」を紐解きながら、最新の女性インサイトを解説します。

2025年の女性市場のトレンドキーワードを発表

当社では毎年2月に女性インサイトセミナーを開催し、その年の女性の消費行動のカギとなる「トレンドキーワード」を発表しています。これは、定点的に女性の消費行動を調査・研究している当社が導き出した生活者視点のキーワードです。近年の女性の消費行動や価値観の変化を反映し、企業が今後のマーケティング、PR、商品開発に活かすべき重要な視点を示しています。本稿では、女性市場の今を確認しながら、セミナーで発表した2025年のトレンドキーワードをご紹介していきます。

 

女性市場の今

環境や社会全体の価値観の多様化により、女性たちの消費行動にも大きな変化が見られています。企業がこれからの市場で支持を得るには、表面的なターゲティングではなく、生活者の背景や心の動きに寄り添った深い理解が欠かせません。まずは、2025年の女性市場を読み解くために押さえておきたい6つのポイントを簡単に説明します。

人口減少と少子化が進む市場環境

日本では人口減少が予想以上のスピードで進行しており、2035年には労働力人口が2020年比で9.4%減少する見込みです。人口構成の変化により、消費の中心層は40〜50代の女性へとシフト。若年層向けの商品開発だけでは限界があり、企業はターゲットを拡張する必要があります。加えて、「童心」に着目した提案が効果的です。たとえば60〜70代の世代が、自らの子ども時代に親しんだキャラクター商品を手に取るケースが増えています。既存顧客が繰り返し購入し、その先の家族や孫へとつなげるような連鎖型マーケティングが、今後の鍵を握るでしょう。

ハー・ストーリィ(総務省 国勢調査及び国立社会保障・人口問題研究所 将来推計人口、総務省 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数を基に作成)

【出典】ハー・ストーリィ(総務省 国勢調査及び国立社会保障・人口問題研究所 将来推計人口、総務省 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数を基に作成)

 

顧客が企業を選ぶ時代へ

過剰供給の時代において、消費者は商品そのものだけでなく「企業そのもの」を評価対象としています。SNSなどを通じて企業姿勢や社会的メッセージが可視化されるなかで、顧客は企業に「生涯価値」があるかを判断しています。これまでの「購入後にファン化」という流れではなく、購入前から顧客の評価は始まっています。企業からの一方的な発信ではなく、消費者が自らの価値観で企業を選別する段階にあると言えるでしょう。企業は商品機能だけでなく、ブランドの姿勢や社会的な意義を伝えることが求められています。

【出典】ハー・ストーリィ(必要とされるのは女性インサイトを起点としたマーケティング)

【出典】ハー・ストーリィ(必要とされるのは女性インサイトを起点としたマーケティング)

 

「買う意味」を見つけるインサイト視点の重要性

顧客は商品に「自分にとっての意味」を見いだせなければ選びません。たとえば、還暦を迎えた夫婦が長野への旅行を選んだ背景には、「初めて一緒にスキーをした場所だから」という個人的なストーリーが存在します。こうした背景=インサイトを捉えることが、消費者との接点を生むカギです。特に女性は、縁(血縁・地縁・職縁・友縁・交縁)を重視する傾向があり、自分だけでなく周囲の人にも喜ばれる選択を心がけています。企業は、単なるターゲティングを超えた「意味提案型」のマーケティングが求められています。

ハー・ストーリィ(ターゲット・クラスター・ペルソナ・インサイトの関係図)

【出典】ハー・ストーリィ(ターゲット・クラスター・ペルソナ・インサイトの関係図)

 

消費者が求めるのは「楽しさ」と「節約性」

当社が15歳以上の女性647人に行ったインターネット調査では、「買い物で求めること」として「楽しい気持ちになれる」が66.5%で最も多く、次いで「節約できる・安い」が61.5%という結果になりました。物価高や不安が続く中で、女性たちは日常に「小さな幸せ」を見つけたいという思いと、「賢く節約したい」という意識の両方を持ち合わせています。さらに、品質や安全性も重視しており、単なる低価格志向ではない、納得感のある買い物を求めています。企業としては、機能や価格だけでなく「買う楽しさ」や「満足感」にも配慮した提案が必要です。

ハー・ストーリィ(買い物に求めるものの調査結果グラフ)

【出典】ハー・ストーリィ(買い物に求めるものの調査結果グラフ)

 

穏やかな幸せを続けることが女性たちのキモチ

続いて「2025年の女性たちが期待すること」を聞いたところ、「穏やかな幸せの継続」が浮かび上がりました。大きな成功よりも、身近な楽しみや日常の充実感を重視する傾向が見られます。企業は例えば、誕生月にちょっとしたギフトを届けるなど、小さな驚きや喜びを提供することで、消費者との間に長期的な信頼関係を築くことができます。女性顧客は「心が満たされる瞬間」を重視し、企業にはこうした日常の幸せに寄り添う提案が求められています。

 

10クラスターから読み解く女性インサイト

当社では、女性をライフコースとライフステージの交差から10のクラスターに分類しています。たとえば、就職氷河期世代の40代は安定志向が強く、投資にも慎重です。一方で、20代は将来を見据えて積極的に投資する傾向があります。企業は、それぞれのクラスターが歩んできた時代背景や価値観を理解した上で、「なぜその生活をしているのか」「どんな気持ちで商品を選ぶのか」を深掘りすることが必要です。女性たちは、自らの暮らしをマージ(統合)しながら、自分の幸せを自ら選び取る姿勢を強めています。

ハー・ストーリィ(ライフコースとライフステージの交点から女性を10のクラスターに分類した早見表)

【出典】ハー・ストーリィ(ライフコースとライフステージの交点から女性を10のクラスターに分類した早見表)

 

2025年、女性たちの消費行動は「わたしLOVER」を軸に多様化

2025年の女性市場では、消費者の価値観や行動の変化により、企業が適応すべき新たな潮流が生まれています。

生活マージ

自分らしい価値観を大切にしながら、自分の暮らしを主体的に組み立てる「生活マージ(統合)」。日々の暮らしの中で、仕事、家事、趣味など複数の要素を上手に組み合わせ、自分らしいライフスタイルを築こうとする動きです。消費行動でも、価格や機能性だけでなく、商品やブランドが提供する体験やストーリーが「個人の価値観やライフスタイルに最適化できるか」を重要視するようになっています。(例:カスタマイズ可能なスキンケアアイテム、ライフスタイルに合わせたサブスクリプションサービス)

倫理消費

「善い買い物が世界を変える」という考え方から、価格や機能だけでなく、企業の姿勢や製品の背景まで考慮して商品を選ぶ「倫理消費」も重要視され、中でも、CSRやサステナブルな取り組みが消費の意思決定に大きく影響を与えています。SNSの発展により、消費者は企業の誠実さや価値観に敏感になっています。(例:エシカル消費を意識したサステナブルブランド、企業理念や製造過程の可視化)

時産ウェル

効率化による時短だけでなく、心の余裕やリラックスを重視する「時産ウェル(時短×心のウェルビーイング)」のニーズが拡大しています。時間を賢く使い、そこで生まれた余白を「自分をいたわる時間」として大切にする。そんな心豊かな暮らしに、女性たちは価値を見出しています。そのための消費行動も注目されています(例:家事の手間を省く時短家電、隙間時間でリフレッシュできるウェルネスサービス)。企業は、こうした女性たちの価値観や行動の変化を捉え、「インサイト」を起点にした提案型マーケティングを展開することが求められています。

当社は今後も女性インサイトを基に、企業とともに女性市場の可能性を広げてまいります。

2025年女性インサイトセミナー潜入レポ 女性消費キーワード『わたしLOVER』

会報誌 HERSTORY REVIEW 2025年4月号「2025年女性インサイトセミナー潜入レポ 女性消費キーワード『わたしLOVER』」

【提供元】 株式会社ハー・ストーリィ

 

【資料無料ダウンロード:本稿詳細をダウンロード可能】法人クラブ in her 会報誌 HERSTORY REVIEW 2025年4月号「2025年女性インサイトセミナー潜入レポ 女性消費キーワード『わたしLOVER』」

女性インサイトマーケティング業歴・実績共にNO.1の専門会社、女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィです。日本の女性5,515万人をオリジナル分析した10クラスター・29ペルソナで女性インサイトを定点的に追い続けています。最新の統計データと独自の定量調査、定性調査、トレンド分析、SNS分析に基づき、生活者の潜在ニーズ(インサイト)を的確に捉え、企業のビジネス機会に繋げることで、社会課題解決と企業発展の両立を目指しています。

 

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