最優秀賞は3COINS、顧客層を見直し商品デザインを一新した取り組みで売上増 女性のあした大賞

本稿は、女性インサイト総研の株式会社ハー・ストーリィ(東京・港)による寄稿記事です。女性視点マーケティングで、30年以上にわたり企業の商品開発やマーケティングを支援する同社が毎年開催する、優れた女性向け商品・サービスを表彰する「女性のあした大賞」。2月14日に都内で授賞式が行われました。その時の様子を元に、今年の受賞企業の取り組みを紹介します。

女性のあした大賞を開催

当社が主催する女性のあした大賞は、「女性のあしたが輝く社会に貢献する商品やサービス」を創出し、普及を目指す企業を表彰するアワードです。一時的な流行に留まらない、未来に必要とされ続ける技術や志を評価し、女性を取り巻く家族や地域、社会全体を考慮した次世代の幸せにつながる取り組みを推進する企業を称えることを目的としています。

今年は最優秀賞1社と優秀賞9社が選ばれました。いずれの企業も独自の視点で、女性特有のライフコースやライフステージの悩みやニーズを深く捉え、時代のトレンドを巧みに反映した商品やサービスを提供しています。女性たちの期待や共感を呼び起こし、日々の生活に心地よさと彩りを加える取り組みが高く評価されました。授賞式にはアワード公式アンバサダー20名も参加し、企業・アンバサダーの互いの視点を共有する交流会も行われました。最優秀賞を受賞した3COINS(株式会社パル)が示した顧客の声を形にする姿勢は、多くの企業に影響を与えています。本記事では、受賞企業のうち3社を取り上げ、各社の取り組みやキーワードを通じて、女性の未来を彩る新たな可能性を探ります。

第9回女性のあした大賞 受賞企業10社の集合写真

【出典】ハー・ストーリィ(第9回女性のあした大賞 受賞企業10社の集合写真)

 

【選考方法】
下記のメンバーにて、事前に自薦・他薦の候補企業を募集し選考委員会で選考しています。
・女性インサイト&トレンド月刊レポート「HERSTORY REVIEW」編集委員
・女性インサイト総研HERSTORY特別フェロー(学識者・専門家)
・一般女性モニター1,000名へのアンケート調査

【6つの選考基準】
1.便宜性:女性の生活を助ける、よりよくする便宜性、実用性の高さ
2.情緒性:女性の気持ちが上がる、わくわくする五感、情緒性の印象度
3.行動化:女性の社会進出や活躍、参加、共創などの行動化
4.直感性:女性が買いやすく手に取りやすく使いやすい直感性の配慮
5.クチコミ:女性が他にクチコミしたいと主体的に感じるインパクト
6.ソーシャル:地球に、未来に、次世代に、SDGS、ソーシャルな配慮

【出典】ハー・ストーリィ(6つの選考基準を表すグラフ)

【出典】ハー・ストーリィ(6つの選考基準を表すレーダーチャート)

 

受賞企業の取り組みと評価ポイント

顧客層を見直し商品デザインを一新、ニーズに合わせた商品展開と新規制で売上増(3COINS)

最優秀賞は、株式会社パルが運営する「3CIONS」。女性のライフスタイルに寄り添い続ける姿勢が評価され、満場一致で最優秀賞に選出されました。月800点近くを開発する商品企画力やデザイン、色使いは、長年にわたり幅広い女性たちの支持を得ています。当社の女性インサイト調査でも常に名前が挙がるブランドです。

【出典】ハー・ストーリィ/パル(左から、3COINSブランド長・角屋悠太様/3COINSの店舗/3COINSの商品)

【出典】ハー・ストーリィ/パル(左から、3COINSブランド長・角屋悠太様/3COINSの店舗/3COINSの商品)

 

■取り組み内容(授賞式での発表より)
アパレルブランドを運営する株式会社パルの雑貨部門として、「3COINS」は誕生しました。 全国に344店舗(2024年12月時点)、そしてEコマースの両方で展開し、今年で30周年を迎えます。「3COINS」のもっとも大きな強みは、アパレル会社が母体となっているため、商品のデザイン性が高く、センス、色味が他の均一価格店と一線を画している点です。

しかし、1994年に大阪・梅田で立ち上げたばかりの第1号店は、現在の「3COINS」とは全く異なるデザインの商品を扱う店舗でした。転機となったのは2020年。ブランドのバージョンアップを行った際、実際の顧客層と弊社のターゲット層が合致しているのかという分析を行ったことです。分析の結果、私たちは20代女性をターゲットにしていたにもかかわらず、実際お買い上げいただいているお客様は、30代~40代だったことが分かりました。そこで商品改革を行い、これまでのポップなカラーから、インテリアになじみやすい落ち着いたカラーを採用したところ、売上を大きく伸ばすことができました。

また、女性に向けた商品開発の1つとして、モバイルアイテム(イヤホンや充電器など)でも女性好みのカラー展開に注力し、好評を博しました。2つ目の強みは、1カ月に700~800点の新商品を展開し、毎週新商品が店頭に並ぶようにしている点です。「いつ行っても新しい発見がある」というワクワク感を持ってもらうため、バイヤーも誇りを持って取り組んでいます。3つ目の強みは、全国で90名いるショップインフルエンサーが、個々に商品情報を発信していることです。中には30万人のフォロワーを抱えるスタッフもおり、よりお客様との距離が近い中でコミュニケーションを取るようにしています。来年度も新たなチャレンジを続けていく予定ですが、将来的には「3COINSでいい」ではなく「3COINSがいい」と言ってもらえるような、日本で当たり前のブランドになることを目標にしていきます。

 

ママの声を参考に開発! シンプル、簡単、おしゃれなミシンで子育てにちょうどいいミシン(アックスヤマザキ)

フェロー特別優秀賞(ファミリー部門)は、家庭用ミシンメーカー株式会社アックスヤマザキ(大阪) の「子育てにちょうどいいミシン」。忙しくても手作り品を子どもに渡したい、手軽にお直ししたいという母親たちのニーズを的確に捉えています。使いやすい設計、洗練されたデザイン、コミュニケーションを促す点などが高く評価されました。

【出典】ハー・ストーリィ/アックスヤマザキ(左から、株式会社アックスヤマザキ 代表取締役・山﨑一史様/子育てにちょうどいいミシン/QRコードで読み込みスマホで見られるミシンを使った作り方動画)

【出典】ハー・ストーリィ/アックスヤマザキ(左から、株式会社アックスヤマザキ 代表取締役・山﨑一史様/子育てにちょうどいいミシン/QRコードで読み込みスマホで見られるミシンを使った作り方動画)

 

■取り組み内容(授賞式での発表より)
私たちは創業70年を超える家庭用ミシン一メーカーで、私は3代目として2005年に入社しました。昔はミシンが「一家に一台」ありましたが、使い捨ての時代や女性が社会進出する時代の流れに付いていけず、ここ20年でミシン市場は半分以下に縮小しています。でも、何とかしたいと思い悩んでいた頃、自分の子どもが生まれました。その時、全く下手くそなのですが自分で何かしてあげたいという気持ちになり、生地を選び、「似合うかな」と思いながら服を作ってみたら、これが楽しかったのです。それを着た子どももうれしそうで、感動しました。

そこで、「ミシンで暮らしに感動とぬくもりを届けたい」という思いで開発をスタートさせました。ママたちにインタビューしてみると、難しそうとか出し入れが面倒、邪魔など「使わない理由」が次々に出て来ました。そこで、全ての要望に応えるハイスペックミシンから180度転換し、使わない機能を省いてシンプルにし、QRコードで読み込む作り方動画を充実させました。場所を選ばない軽量、コードレスにし、針の危険を回避し、スマホスタンドにもなる針カバーもつけました。「ミシンがあると生活感が出てイヤ」という声から、ママ友が来ても隠すことなく、むしろ見せたくなるようなマガジンサイズのコンパクトでスタイリッシュなデザインにしました。発売した2020年はちょうどコロナ禍でマスク不足の時期だったので、なんとかお役に立ちたいと手作りマスクの動画をアップしたところニーズと合致し、連日メディアに取り上げられるくらい大反響をいただきました。

その後もお客様の声を取り入れて年々進化させ、これまでに12万台以上を売り上げています。私が作った下手くそな服は、かなりくたびれていますが子どもの人形の服になってまだ大事にされ、愛されています。私たちはミシンを通じて世の中に感動と手作りの温もりを広げて、もう一度、「ミシンは一家に一台」を実現させたいと思っています。

 

保育現場の負担を軽減、女性の働きやすい環境を切り開く保育ICT・IoTサービス(ユニファ)

フェロー特別優秀賞(テクノロジー部門)は、ユニファ株式会社(東京・千代田)の保育ICT・IoTサービス「ルクミー」。保育現場に寄り添った使いやすい設計が評価されました。登園管理や午睡チェックをデジタル化したり、AI を駆使して連絡帳の作成をサポートするなど、保育士の業務負担を軽減。また、保護者との連携を強めることで、子どもたちの成長を共に見守る環境作りにも貢献しています。

【出典】ハー・ストーリィ/ユニファ(左から、ビジネス本部 商品企画部 部長・松島広将様&ビジネス本部 商品企画部 主任・徳重晴子 様/ルクミーの画面/ルクミーを保育現場で使用する様子)

【出典】ハー・ストーリィ/ユニファ(左から、ビジネス本部 商品企画部 部長・松島広将様&ビジネス本部 商品企画部 主任・徳重晴子 様/ルクミーの画面/ルクミーを保育現場で使用する様子)

 

■取り組み内容(授賞式での発表より)
「ルクミー」はお子さまを見守る保育施設をサポートする、保育ICTおよび研修サービスです。保育施設と家庭をつなぐプラットフォームとして、その全てを自社で開発している点が大きな特徴です。サービス名は”Look at me(私を見て)”から生まれたもので、ロゴは先生・保護者が子どもを包み込む様子を表しています。

「ルクミー」が生まれたきっかけは、弊社代表が共働きでの育児がどれだけ大変かを痛感したことにあります。家族を優先したいとキャリアを中断し、名古屋への移住を決断する中で、子育てに関する支援サービスがもっと必要だと実感するようになりました。こうした体験から、2013年に株式会社ユニファを設立。「ルクミー」を提供するようになりました。同サービスは、現場の先生と保護者をつなげる「ルクミー午睡チェック」「ルクミーフォト」「ルクミー連絡帳」などさまざまなプロダクトを備えています。たとえば「ルクミー午睡チェック」は0~2歳児のお昼寝を見守る、午睡チェック用センサーと記録アプリの機能です。園児の腹部に取り付けたセンサーで体の動きをチェックし、体の向きをチェック表に自動で記録してくれます。また「ルクミーフォト」は、アプリで撮影した写真を自動的にパソコンにアップロードし、クラスごとに振り分けてくれるサービスです。顔認識機能で、園児ごとの枚数を数えたり、AI によるブレボケ判定も行うことが可能です。保育者の負担を軽減しながら保護者への写真販売へスムーズにつなぐことができます。さらに「ルクミー連絡帳」では、ChatGPT機能を使って箇条書きから文章生成や翻訳を行うことができます。こうした業務サポートは、先生方に時間や心のゆとりを生み、保育の質の向上ややりがいにつながっているという結果も出ています。

「ルクミー」を通じて今後も保育者や保護者の負荷を減らし、特に女性が仕事を続けられる社会を作るために、父親や保育施設を巻き込みながら共に育てる環境を作っていけることを目指します。

 

総評 :今年のキーワードは「機能性」「リアリティ」「情緒性」

今回の授賞式では「機能性」「リアリティ」「情緒性」という3つのキーワードを感じました。体が楽である、歩きやすいといった「機能性」は、私たちの暮らしの中で外すことのできない大切なポイントです。そして、本当の顧客は誰なのかという「リアリティ」に向き合わなければ、無駄な商品開発をし続けることになってしまいます。最後に何が女性をわくわくさせるのか、この「情緒性」も商品開発においては無視できない要素だと感じました。今後もみなさんと一緒になって、女性の活躍できる社会を目指していきたいと思います。

一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事/株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役 :日野佳恵子

【出典】株式会社ハー・ストーリィ(女性のあしたアカデミー 代表理事で株式会社ハー・ストーリィ代表取締役の日野佳恵子が、受賞企業の取り組みを総括した)

 

 

ハーストーリー様バナー

 

【提供】 株式会社ハー・ストーリィ

 

女性インサイトマーケティング業歴・実績共にNO.1の専門会社、女性インサイト総研の株式会社ハー・ストーリィです。日本の女性5,515万人を対象にオリジナル開発した10クラスター・29ペルソナで女性インサイトを定点的に追い続けています。最新の統計データと独自の定量調査、定性調査、トレンド分析、SNS分析に基づき、生活者の潜在ニーズ(インサイト)を的確に捉え、企業のビジネス機会に繋げることで、社会課題解決と企業発展の両立を目指しています。

【資料無料ダウンロード:本稿詳細を掲載】女性インサイト研究クラブ in hersotory 会報誌 HERSTORY REVIEW 2025年2月号「女性が輝く社会へ 受賞企業10社成功の秘訣

 

 

 

【編集部おすすめ記事】
女性が「2024年に買って良かったモノ」と「2025年に買いたいモノ」
2025年女性トレンド最前線!ペルソナ別インサイトで見る消費動向
女性の健康行動、どう起こす?マーケティング戦略に役立つデータと企業事例
異常気象が美容ニーズ・消費に影響、2025年上半期の美容トレンド
今後伸びるマーケティングEC・CRM・CXビジネストレンドマップ2024上半期

PAGE TOP
×