女性がんの検診無料クーポン、受診率アップに有効も仕事・育児・介護の有無や所得で差
自治体によるがんの検診無料クーポン配布は受診率向上に寄与するものの、所得の高低や、育児・介護といった家族のケアワークの有無により差が見られることが、学習院大学の趙(小西)萌教授による研究でわかった(RIETI「日本におけるがん検診無料クーポン券が受診行動及び健康状態に与える影響に関する実証研究」)。
研究では2004年〜2016年の国民生活基礎調査(厚労省)を用い、「乳がん」「子宮頸がん」「大腸がん」の検診無料クーポン配布が受診率に与える影響と、受診が身体的・精神的な健康状態に与える影響を分析。以下を明らかにした。
- 検診無料クーポンの配布により、「乳がん」と「子宮頸がん」検診の受診率は約10%増加。「大腸がん」は女性5%、男性2%増加で、女性の方が効果が高い
- 「子宮頸がん」のクーポン利用は低所得者が多い一方で、「乳がん検診」の利用は高所得者が多い。「大腸がん」のクーポン利用は、所得による差は見られない
- 育児・介護を抱えていない女性や無職の女性の方が、「子宮頸がん」「乳がん」のクーポンの利用が多い
- 3種のクーポンのいずれも、国保の加入者より社会保険の加入者の方が受診促進効果が高い
- 検診受診は、受診者の健康状態やストレス状態に良い影響を与えている
結果を踏まえ趙教授は、検診無料クーポンは、がん検診の促進に有効であるとともに、検診受診により早期発見・治療に繋がったり、がん罹患の不安が解消されることで、身体的・精神的な健康につながるとした一方で、育児・介護をしている人においては十分に利用がされていない点を指摘。がん検診受診のためのシッター活用や有給休暇などの非金銭的インセンティブを与える制度を進める必要性に言及した。
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