がんの罹患リスク、罹患数、死亡数、将来推計など(2023年版)

今年3月に閣議決定した「第4期がん対策推進基本計画」に、2023年度から6年間のがん対策として、検診受診率の目標をこれまでの50%から60%に引き上げることが盛り込まれた。日本の女性の検診受診率は、同性の国際比較で見ても国内の男女比較で見ても低いことが課題で、3〜4割程度にとどまっている。60%達成に向け官民一体となった啓発や取り組みがより一層求められることになるが、さて、女性のがんの状況はどうなっているのか?先日公表された「がんの統計2023」の中から、男女別、年齢階級別、部位別、都道府県別のがん罹患数や死亡数の他、年次推移や、部位別の検診受診率などをピックアップしてまとめた。

がん罹患数

がん罹患の近年の傾向

  • がんの罹患数は男女ともに増加し続けており、増加の主な要因は人口の高齢化
  • 人口の高齢化の影響を除いた年齢調整率でがん罹患の推移を見ると、女性は1985年~2010年前後に増加し、その後横ばい。部位別では、増加傾向にあるのは「子宮(子宮体部と子宮警部等)」「子宮頸部」「子宮体部」「卵巣」「食道」「結腸」「直腸」「大腸(結腸と直腸)」「膵臓」「肺」「悪性リンパ腫」。減少傾向は「胃」「肝臓」「胆のう・胆管」
  • 同様に年齢調整率で男性のがん罹患の傾向を見ると、1985年~1990年代半ばに増加し、その後2000年~2010年前後に再び増加、その後減少。部位別では、増加傾向は「前立腺」「食道」「膵臓」「悪性リンパ腫」。減少傾向は「胃」「肝臓」「胆のう・胆管」「肺」

1年間で診断されたがんの数

2019年に新たに診断されたがんは約100万例。女性43.2万例・男性56.6万例で、男性は女性の約1.3倍に上る。(※性別不明があるため男女の合計が総数と一致しない)

  • 男女計…999,075例
  • 女性…432,607例
  • 男性…566,460例

部位別のがん罹患数、トップ10

部位別の罹患数(2019年)を見ると、女性は「乳房」が最も多く、女性のがん罹患全体のうち22.5%を占める。男性は「前立腺」が最多で、男性のがん罹患全体の16.7%。

【男女別の部位別がん罹患数トップ10(2019年)】
順位 女性 男性
1位 乳房 97,142 前立腺 94,748
2位 大腸
(結腸と直腸の計)
67,753 大腸
(結腸と直腸の計)
87,872
3位 42,221 85,325
4位 38,994 84,325
5位 子宮
(体部と頸部等の計)
29,136 肝臓 25,339
6位 膵臓 21,579 膵臓 22,285
7位 直腸 19,290 食道 21,719
8位 子宮体部 17,880 腎・尿路 20,678
9位 悪性リンパ腫 17,325 悪性リンパ腫 19,311
10位 甲状腺 13,892 口腔・咽頭 16,463

がんの統計2023よりウーマンズラボ作成

 

がん死亡数

がん死亡の近年の傾向

  • がんの死亡数は男女ともに増加し続けており、増加の主な要因は人口の高齢化
  • 人口の高齢化の影響を除いた年齢調整率でがん死亡の推移を見ると、女性は1960年代後半~1990年代前半に減少し、1990年代後半から再び減少。部位別では、増加傾向にあるのは「子宮(子宮体部と子宮警部等)」「子宮頸部」「子宮体部」「膵臓」。減少傾向にあるのは「食道」「胃」「結腸」「直腸」「大腸(結腸と直腸)」「肝臓」「胆のう・胆管」「 肺」「卵巣」「甲状腺」「白血病」
  • 同様に年齢調整率で男性のがん死亡の傾向を見ると、1980年代後半まで増加し、1990年代後半から減少。増加傾向は「膵臓」。減少傾向は「食道」「胃」「結腸」「直腸」「大腸(結腸と直腸)」「肝臓」「胆のう・胆管」「 肺」「前立腺」「甲状腺」「悪性リンパ腫」「白血病」
  • がんの生存率は多くの部位で上昇傾向にある

1年間のがん死亡数

2021年にがんで死亡した人は、約38万人。女性15.9万人・男性22.2万人で、男性は女性の約1.5倍。

  • 男女計…381,505人
  • 女性…159,038人
  • 男性…222,467人

部位別のがん死亡数、トップ10

部位別の死亡数(2021年)は、女性は「大腸」が最多で、女性のがん死亡全体の15.3%を占める。男性の最多は「肺」で、男性のがん死亡全体の23.9%。

【男女別の部位別がん死亡数、トップ10(2021年)】
順位 女性(人) 男性(人)
1位 大腸
(直腸と結腸の計)
24,338 53,278
2位 22,934 大腸
(直腸と結腸の計)
28,080
3位 膵臓 19,245 27,196
4位 乳房 14,803 膵臓 19,334
5位 14,428 肝臓 15,913
6位 胆のう・胆管 8,557 前立腺 13,217
7位 肝臓 8,189 食道 8,864
8位 子宮
(体部と頸部等の計)
6,818 悪性リンパ腫 7,627
9位 悪性リンパ腫 6,154 膀胱 6,434
10位 直腸 5,748 腎・尿路 6,274

がんの統計2023よりウーマンズラボ作成

 

小児がん・AYA世代のがん

小児・AYA世代とは?

「小児がん」は0〜14歳の男女のがんのこと。「AYA世代のがん」は、15〜30歳代の男女のがんのことで、AYAは「Adolescent(思春期) and Young Adult(若年成人)」の頭字語。

1年間で診断されるがんの数(推計)

  • 0~14歳…約2,100例
  • 15~19歳…約900例
  • 20歳代…約4,200例
  • 30歳代…約16,300例
  • AYA世代のうち20歳代以降は、男性より女性のがん罹患数が増える。要因は「乳がん」「子宮頸がん」「甲状腺がん」

 

がん罹患リスク(部位別)

生涯でがんに罹患する確率は男女ともに2人に1人で、女性51.2%、男性65.5%。部位別のそれぞれの罹患リスクは以下表の通り。

【男女別の生涯のがん罹患リスク(2019年データより算出)】
部位 生涯がん
罹患リスク(%)
何人に1人か?
女性 男性 女性 男性
全がん 51.2 65.5 2人 2人
食道 0.5 2.5 184人 40人
4.7 10.0 21人 10人
結腸 5.9 6.5 17人 15人
直腸 2.3 3.8 44人 26人
大腸 8.1 10.3 12人 10人
肝臓 1.5 3.0 68人 33人
胆のう・胆管 1.3 1.5 76人 66人
膵臓 2.6 2.7 38人 38人
5.0 10.0 20人 10人
乳房 11.2 9人
子宮 3.4 29人
子宮頸部 1.3 76人
子宮体部 2.1 48人
卵巣 1.6 62人
前立腺 11.0 9人
甲状腺 1.7 0.6 60人 174人
悪性リンパ腫 2.1 2.3 48人 43人
白血病 0.8 1.1 133人 94人

がんの統計2023よりウーマンズラボ作成

 

がん検診受診率

日本の女性のがん検診受診率の低さは国際比較でよく指摘されているが、国内の男女差にも目を向ける必要がある。男性よりも女性の検診受診率が全体的に低い(詳細は「がんの統計2023」p.118とp.132に掲載)

  • 日本の女性の「乳がん」「子宮頸がん」の検診受診率は他国(※)と比べて低い。トップのアメリカはどちらも受診率が約8割に上るが、日本は約4割 (※)アメリカ,イギリス,フランス,韓国,ドイツ,オーストラリア
  • 国内のみで推移を見ると、「乳がん」「子宮頸がん」の受診率は徐々に上がっている。乳がん検診は39.1%(2010年)から47.4%(2019年)へ。子宮頸がん検診は37.7%(2010年)から43.7%(2019年)
  • 日本の女性の検診における課題として「乳がん」「子宮頸がん」の低い受診率がよく指摘されるが、その他にも、罹患数・死亡数ともに多い「大腸がん」「肺がん」「胃がん」の受診率も低い。2019年の受診率は「大腸がん」40.9%、「肺がん」45.6%、「胃がん」37.1%
  • 検診受診率は男性より女性が低い。2019年の受診率は「胃がん」は女性37.1%・男性48.0%、「大腸がん」は女性40.9%・男性47.8%、「肺がん」は女性45.6%・男性53.4%で、いずれも男性の方が高い

 

がん有病者数の将来推計

有病者数とは、一定期間以内(5年以内)にがんと診断され生存している推計患者数のこと。2015年から2039年の期間を5年5区間に分け、各5年区間の年平均を推計している(詳細は「がんの統計2023」p.133と「がん罹患・死亡・有病者の長期予測(がん対策研究所予防関連プロジェクト)に掲載」)

  • 年間の死亡数:女性は15万人(2015〜2019年平均)から17万人(2035年〜2039年平均)へ。男性は22万人から21万人へ。女性は11%増、男性は5%減の見込み
  • 年間の罹患数:女性は41万人(2015〜2019年平均)から53万人(2035年〜2039年平均)へ。男性は57万人から64万人へ。女性は29%増、男性は13%増の見込み
  • 年間の有病数:女性は140万人(2015〜2019年平均)から167万人(2035年〜2039年平均)へ。男性は173万人から184万人へ。女性は19%増、男性は6%増の見込み
  • 男女ともに、2025年以降は有病者のうち約半数は75歳以上が占める

 

 

 

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