今月1日、国立がん研究センターなどの研究グループが、がんによる経済的負担の推計を発表した。併せて、予防可能ながんの経済的負担の推計も初めて発表した。

2015年に国内でがん治療を受けた延べ400万人の情報を元に、「医療費」や、罹患・死亡に伴う「労働損失」から推計したもので、経済的負担の総額は年間約2兆8,597億円。女性は約1兆3,651億円、男性は約1兆4,946億円で、男女間で大差はなかった。国内全体の就業者数は女性より男性が多いため経済的負担は男性の方が大きくなるが、大差が見られなかったのは、女性の乳がんや子宮頸がんは働き盛りの世代での罹患が多いためで、「医療費」だけでなく女性の「労働損失」が経済的負担に大きな影響を与えていると見ている。

経済的負担の総額のうち、ワクチン接種や生活習慣改善などで予防ができる“予防可能ながん”の経済的負担は約1兆240億円で、女性は約3,502億円、男性は約6,738億円。男女ともに胃がんの経済的負担が最多で、次いで女性は子宮頸がん、男性は肺がん。

＜女性＞

• 1位：胃がん（約728億円）
• 2位：子宮頸がん（約640億円）
• 3位：乳がん（約607億円）

＜男性＞

• 1位：胃がん（約1,393億円）
• 2位：肺がん（約1,276億円）
• 3位：結腸がん（約597億円）

【出典】国立がん研究センター「部位別にみた予防可能ながんの経済的負担（男女別、単位：百万円）」

予防可能ながんの経済的負担が男性の方が大きい理由は、予防可能ながんの要因が男性に多くあるためで、なかでも、男性の喫煙率の高さが影響している。要因別の男女計の経済的負担は以下。

• 1位：感染（約4,788億円）
• 2位：能動喫煙（約4,340億円）
• 3位：飲酒（約1,721億円）
• 4位：運動不足（約337億円）
• 5位：過体重（約190億円）

研究グループは、子宮頸がんワクチン接種や、ピロリ菌の除菌、禁煙、定期的な健診・検診といった適切な対策でがんを予防することで、経済的負担の削減につなげることができると指摘している。

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