ハロウィン経済効果3年連続縮小、なぜ下火に?(2019年)
ハロウィンの経済効果はどこまで大きくなるのか?近年はそんな期待でマーケティング業界をワクワクさせていたが、2016年までの成長から一転、以降は年々縮小している。ハロウィン文化のない日本でも、バレンタインに並ぶ一大イベントとして成長したが、生活者のハロウィンに向けられていた熱量は落ち着きを見せ始めている。「仮装」「(大勢で)パーティー」と、イベント性の高い文化として発展した日本式ハロウィン、今後どうなる?
目次
縮小するハロウィンの経済効果
一時期盛り上がっていたハロウィンも、3年連続で市場規模は減少。ハロウィンがもたらしていた経済効果は、年々縮小しつつある。
2019年のハロウィン、市場規模は1,155億円へ縮小(日本記念日協会)
2019年のハロウィンの市場規模は1,155億円(日本記念日協会推計)。前年比で約7%の減少となった。2016年の約1,345億円から比べると、3年間で約190億円の減少で、ハロウィンの市場規模は年々減少傾向にある。
2014年、2015年、2016年、2017年の市場規模推移
ハロウィンの市場規模推移は以下の通り(日本記念日協会推計)。
- 【ハロウィンの市場規模推移】
・2014年 1,100億円
・2015年 1,220億円
・2016年 1,345億円
・2017年 1,305億円
・2018年 1,240億円
・2019年 1,155億円
クリスマス市場、バレンタインデー市場との比較
- クリスマス市場
あらゆるイベントの中で、最も市場規模の大きいクリスマスの経済効果は約7,000億円。これにはプレゼント以外にも、贅沢な宿泊旅行や、数万人の集客効果をもつイルミネーションイベントなども“クリスマス消費”に含まれる - バレンタインデー市場
2019年のバレンタインデーの推計市場規模は約1,260億円。2019年のハロウィン(1,155億円)よりは大きかったものの、バレンタインデー市場も2年連続での減少。かつての「恋愛至上主義」は薄れ、恋愛離れが進んでいることなども影響し、バレンタインイベントそのものへの関心が低くなっていることが考えられる
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ハロウィンとは
ハロウィンとは、毎年10月31日に行われる、ヨーロッパを発祥とした秋の収穫祭。1年間を11月1日~10月31日と定めていた古代ケルト人が起源と考えられている。大みそかにあたる10月31日には、死んだ人の魂が家族の元へ帰り、悪霊や魔女が町をさ迷うと言われ、死者の霊や悪霊たちが家に入らないよう、かがり火をたいた。もともとは悪霊を追い払うための宗教的な意味合いをもった行事だったが、アメリカで子どもが楽しむ民間行事として定着。以降、世界各国でイベント文化として取り込まれている。
国内でハロウィンの始まりは、ディズニーランドのハロウィンイベントと言われている。ハロウィン期間は、普段禁止されているディズニーキャラクターの仮装が解禁され、来場者参加型で楽しめる。「ハロウィン」と「仮装」はセットで楽しむイメージが日本国内でも普及し、全国にハロウィンをテーマにした仮装パーティーが広がるようになった。
ハロウィンイベント例
- 東京ディズニーランド
ハロウィンを広めた第一人者である東京ディズニーランドでは、毎年大規模なハロウィンイベントを開催。期間限定の園内のデコレーションやパレード、ハロウィン限定グッズやフードを楽しむことができる。また期間限定で解禁される仮装入場も相まって、毎年多くの来場者でにぎわっている
- USJ
USJは“ホラー”に特化したハロウィンイベントが特徴。園内をゾンビが練り歩き、来場者を驚かせたり、突如音楽にのって踊りだしたりと、“ホラー×エンタメ”のユニークな取り組みが魅力。またハロウィン限定のホラーアトラクションも登場する
- 東京渋谷
渋谷センター街では、毎年ハロウィンに仮装した人々が殺到し、警察も出動する事態にまで発展することもしばしば。海外からの参加者も増えている。また東京・渋谷の他に、大阪・道頓堀付近でも仮装した人々で盛り上がりをみせている - 貸切パーティースペース
ハロウィンパーティのための貸切スペースも登場。貸切パーティースペースでは、仮装用の着替え場やハロウィン用飲食メニューが提供される。部屋のハロウィン装飾も可能
ハロウィンが盛り上がり始めた理由
ハロウィンのグッズがかわいい
もともと子どもを主役としていたハロウィンは、可愛らしく、キャラクター性の強いものが多い。ルックスの特徴や、写真映えするカラーリングが、女性や子どもの心を惹きつけた。
コト体験ニーズ
仮装することがイベントルールのハロウィンは、いつもとは異なる自分になれる“非日常性”を提供。皆で集い一緒に騒げるハロウィンは、ストレスのはけ口が少ない若者を中心に受け入れられていった。
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SNSやシェア文化の広がり
非日常的な仮装や、オレンジやパープルといった鮮やかなカラーリングが特徴のハロウィンアイテムは、インスタなどのSNSとも好相性。
恋愛離れ
“恋愛離れ”によって、クリスマスのように異性と一緒に過ごすイベントよりも、同性と一緒に過ごすイベントの方が近年は人気が高い。友人と楽しめるハロウィンは、恋愛離れが進む若者の間で心を掴んでいる。
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ハロウィンの経済効果、縮小の理由
ハロウィンが急速に拡大した後、現在縮小傾向にあるのは、ハロウィンの自由さが生み出したネガティブな側面が一因として影響している。2018年に起きた「渋谷ハロウィン」がその事例。今後ハロウィンの経済効果をより縮小させる要因になるのではという懸念の声も。
データから見る、ハロウィンへの熱量変化と理由
LINEリサーチによるハロウィン調査によると、2016年から2018年までの3年間で、ハロウィンのイベント参加率は低下している。同様に、参加意向も年々低下。実際に2018年にハロウィンに参加しなかった理由を女性の年代別に見てみる。
- 【2018年にハロウィンに参加しなかった理由】
・10代:時間がなく、興味もわかないため。
・20代:興味がなく、面倒に思うため。
・30代:興味がなく、特に何かをするイベントではないと思うため。
・40代:興味がないため。
(出典:ラインリサーチ「ハロウィン調査」)
ハロウィン騒動のニュースでネガティブなイメージ
2018年の渋谷ハロウィンでは、「火災」や「軽トラ横転」といった騒ぎが相次いだ。火災はビル内に出店していた飲食店が原因だったが、軽トラ横転に関しては暴徒と化した群衆による、“悪ノリ”で引き起こされた事件だった。のちに4人が逮捕、十数人が書類送検されている。年々過熱度を増していくハロウィンによる過度な騒動が問題視されるきっかけとなった。渋谷ハロウィンの様子はYoutubeに複数アップされている。
世代間ギャップ
高年齢層ほどハロウィンを楽しみたいニーズは低い。「仮装」や「交流」といったアクティブ色の強いハロウィンは、日本の行事として年齢関係なく楽しめる正月などと比べると、全世代に浸透しづらいイベントのようだ。「日本人の年中行事に関する調査(黒酢マーケティング)」によると、40代以上のハロウィン参加率は他のシーズナルイベントと比較して低い。以下は全国15~69歳の男女を対象にした「ハロウィンが楽しみか?」に対する年代別の回答結果(調査実施:マクロミル)。
アメリカのハロウィン経済効果は1兆円
ハロウィンの本場アメリカでは、ハロウィンはクリスマスにも匹敵する国民的メインイベント。その経済効果は、ハロウィンの歴史がまだ浅い日本とは比にならない。全米小売業協会と調査会社プロスパー・インサイツ&アナリティクスが発表した内容によると、アメリカ人が2017年のハロウィンに費やす金額は、91億ドル(約1兆円)に達するとのこと。過去最高額を記録した前年の84億ドル(約9420億円)を上回る結果となった。
狙い目は“おうちハロウィン”
仮装して外出したり、外出先で派手なパーティをしたいニーズは落ち着いてきているが、8割の人が“おうちハロウィン”を楽しみたいとする調査結果もあり(サッポロビール調べ)、自宅で楽しみたいニーズは健在。今後は飾り付けや小物、フードやドリンクなど、“おうちハロウィン”ニーズに応えた商品やサービスに商機があるだろう。
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