女性の健康総合センター、開所1年の振り返りと今後の展望 都内でセミナー開催
女性の健康総合センター開設1周年と、プレコンセプションケアセンター10周年を記念したセミナーが、今月6日に都内で開催された。現地とオンラインのハイブリッド開催で、医療機関や大学、企業、一般などから約300人が参加。国立成育医療研究センター理事長の五十嵐隆氏による開会挨拶に始まり、女性の健康総合センターセンター長の小宮ひろみ氏などが、これまでの取り組みの振り返りと今後の展望を語った。
性差のデータ可視化や、女性の健康の研究成果
女性の健康総合センターセンター長の小宮ひろみ氏は、昨年10月の開所からこれまでの取り組みを振り返った。はじめに、女性版骨太方針2025や高市首相の所信表明演説で「性差由来の健康課題への対応」が言及されたことを踏まえ、女性の健康と性差医療が加速していると強調。具体的な1年間の取り組みとして、女性内科・婦人科・不妊診療科・女性精神科・女性歯科を備えた「女性総合診療センター」の新設、性差に関するデータの可視化(がん、循環器疾患、糖尿病、神経・筋疾患)、出生体重と生殖可能年齢の関連など女性の健康に関する複数の研究成果を報告した。今後の展望としては、以下4点を挙げた。
- 女性のライフステージに応じた診療・相談機能の整備
- 女性の健康課題・性差医療に関する実態把握、機序解明、介入手法開発、データ活用体制の推進
- 医療・非医療専門職を対象とした教育・研修体系の整備
- 啓発活動・政策提言を通じた女性の健康リテラシー向上

【撮影】女性の健康総合センター(小宮ひろみ氏)
同センターでは、女性特有の疾患を対象とする「女性医療」と、男女の生物学的な違いに由来した疾患を対象とする「性差医療」の両視点で女性の健康を推進している。それぞれの進展状況について本メディアが取材したところ、「長年取り組みが進んできた女性医療が先行しているが、国の後押しも追い風に、性差医療も今後はより速いスピードで発展していく」と見解を述べた。性差医療においては、「循環器疾患」「内分泌疾患」「自己免疫疾患」の領域が先行していると話した。
オープンイノベーションに向けた取り組み状況
オープンイノベーションセンター(OIC)準備室室長の松原圭子氏は、「思春期から高齢期まで女性のライフステージを支えるため、産官学民連携によるオープンイノベーションが重要」と強調した上で、OIC準備室の役割として、5項目「共同研究・受託研究支援」「ネットワーク構築」「研究者支援」「センター内組織連携」「シーズ育成事業化支援」を挙げた。この1年で実施した取り組みのうち、外部との共創に向けた面談実績についても報告。アカデミアや企業など外部組織との面談は、年間で計81件(2025.11.24時点)。最多は「消費財・日用品・衛生製品・ヘルスケア製品を有する組織」からの面談依頼で、28件だった。次いで「大学・研究機関」が18件、「製薬・診断薬を有する組織」が10件。
■アカデミア・企業等との共創に向けた、カテゴリー別の面談数
- 消費財・日用品・衛生製品・ヘルスケア製品…28件
- 大学・研究機関…18件
- 製薬・診断薬…10件
- 広告・メディア・コミュニティ…8件
- 金融・保険…3件
- アクセラレーター・ベンチャーキャピタル…3件
- コンサルティングサービス…3件
- 行政・公的機関…3件
- 食品…1件
- 不動産・インフラ…1件
- その他…3件
同氏によると、各者との面談内容は情報交換が中心で、具体的な共同研究や受託研究に進む事例は少数にとどまるという。取材に対し、「OICが目指す役割の一つは、外部の多様な組織とセンター内の研究者・医療者をつなげることだが、具体的な連携イメージがないまま面談に入るケースが多かった」と振り返る。OICの十分な機能に向け、「2026年は、情報発信の強化と合わせ、引き続き幅広い組織と積極的に繋がっていきたい」と述べた。
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