【開催報告】女性ヘルスケア市場のオープンイノベーション、最新動向を解説 女性の健康総合センター×ウーマンズ
女性の健康総合センターと、当メディア運営のウーマンズは先月末、東京ビッグサイトで開催されたBtoB展示会「健康博覧会」内で、女性ヘルスケア市場におけるオープンイノベーションについて、合同登壇で講演をした。女性ヘルスケア事業に取り組むメーカー(原料、化粧品、化学、医療機器、食品、健食、香料など)、医療サービス、小売など、聴講申し込みは250名に上り、多様な事業者で会場は満席となった。
女性ヘルスケア市場、業界とアカデミアそれぞれの現在地
セッションは二部構成で、第一部は「女性ヘルスケア市場、業界とアカデミアそれぞれの現在地」。ウーマンズ代表の阿部からは、女性ヘルスケア市場の概況として、女性の健康政策など女性ヘルスケア業界の主要ニュースや、生活者と企業の動向を解説。女性ヘルスケア市場で近年トレンドとなっていたフェムテックについては、「幻滅期に入ったものの、女性の健康領域全体は堅調に拡大している」とし、「フェムテックのトレンドを契機に、ここ2〜3年で性差医学・性差医療の概念がようやくヘルスケア業界にも広まってきた」と言及した。
女性の健康総合センターのオープンイノベーションセンター準備室室長の松原氏からは、センターが推進する「女性医学」と「性差医学」の違いを始めに説明し、性差分析の事例として、男性が女性よりも身長が高い理由を明らかにした研究報告や、気管支喘息に対する生物学的製剤使用状況の性差分析を通じて、女性の方が治療に難渋する重症例が多いことを明らかにした研究報告などを紹介した。
セッション後半では、松原氏から阿部に向け、女性ヘルスケア業界における性差分析の現状を質問。阿部は、ウーマンズによる自主調査の結果を紹介しながら、「性差に着目した医療やヘルスケア事業への参入意向を約900社に尋ねたところ、『今後、性差分析をして新規開発したい』と回答した人は42.9%に上り、約半数が関心を示した。業界全体で関心は高まっていると感じている」と答えた。
また、「一方の女性生活者も、性差分析された商品・サービスを欲している」とし、20〜90代の女性生活者2,000人を対象に実施した自主調査の結果を紹介。「特にニーズのある領域トップ3は、健康系アパレル商品、患者向け商品、癒し・リラックス・リフレッシュ商品だった。性差医療や性差分析という言葉や概念は一般には浸透していないものの、需要は期待できる」との考察を述べた。
女性ヘルスケア市場、オープンイノベーションの動向予測・商機・実践方法
第二部は「女性ヘルスケア市場、オープンイノベーションの動向予測・商機・実践方法」。阿部からは、オープンイノベーションへの関心が近年になり急速に高まっている理由や、健康・美容領域におけるオープンイノベーションの最新事例として、「ロレアル×楽天」「オイラ大地×東京慈恵会医科大」「京セラ×マイライフ」「国立循環器病研究センター×カナデビア(旧・日立造船)」「TikTok×WHO」などを紹介した。
複数の事業者が関わって社会課題を解決する、いわゆる「オープンイノベーション2.0」の事例としては、「帝人×シグマックス×アスピシャス」や、「ミツカン・オムロンヘルスケア・新生堂薬局など」の取り組みを紹介。オープンイノベーションで他社と事業を多数創出してきたウーマンズ自身の取り組み事例も挙げながら、オープンイノベーション推進における課題やコツにも触れた。
松原氏からは、オープンイノベーションの機会となり得る対象カテゴリーを紹介。女性の健康課題の解決を難しくしている理由として、ライフコースアプローチ視点や性差視点の欠如、文化・社会的なバイアスなどを指摘した上で、ソリューションが未充足の領域をライフステージ別に分類して示した。
聴講者からは「打開策になると感じた」
聴講を終えた参加者からは、オープンイノベーションの可能性に期待を寄せる声が多く聞かれた。以下は、会場での聴講者への取材や、聴講後のアンケートに寄せられた声。
- 性差に着目したオープンイノベーションに、新しい可能性を感じた
- オープンイノベーションの考え方に共感した。ただ、自社だけで必要性を感じていても、社会全体に浸透していないと、うまくいかないのでは
- 変化が目まぐるしく、競争が激化している今だからこそ、オープンイノベーションの重要性が高まっていることを理解した
- 現在進行形で社内で進んでいる新規開発案件に、オープンイノベーションの考え方を応用していきたい
- オープンイノベーションの意味を改めて考える機会になった
- ヘルスケア領域のオープンイノベーションの事例が豊富で、自社での導入にあたりイメージしやすかった
- 自社だけでの開発に限界を感じていた。他社と一緒に取り組むことで打破できると思った
- フェムテックが幻滅期に入ったことを、なんとなく感じていた。次のフェーズに移行するための最善な施策が、オープンイノベーションなのかもしれないと思った
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