SNSは本当に「悪」なのか? 世界の研究が示す健康行動・健康消費への影響力

SNSは、依存やメンタルヘルスへの影響、有害コンテンツへの接触などが問題視され、各国で子どもの利用規制を強める動きが広がっている。英国政府は6月、16歳未満のSNS利用を原則禁止する方針を発表し、2027年春の施行を目指す。日本でも、こども家庭庁の有識者会議がSNS事業者に対し、年齢確認やリスク評価などの対策を義務付ける方向で議論を進めている。社会の関心は今、「SNS=悪」「規制すべき」という方向に傾いているが、視野を広げてみると、SNSが人々にもたらす影響には別の姿も見えてくる。近年は、SNSが健康情報の取得やセルフケア、運動習慣、健康商品・サービスの購入、不調や病気の改善を後押しする可能性を示す報告が相次ぎ、健康行動や健康消費を生み出す接点としての役割も見えている。本記事では、世界の研究をもとに、そのポジティブな側面を整理した。

世界の研究から読み解く、SNSと健康のポジティブな関係

SNSが「健康情報探索(HIS)」の起点に

SNSは、健康情報探索行動(HIS:Health Information Seeking)の主要な接点となっている。2013〜2023年に発表された24本の研究を対象としたシステマティックレビューでは、症状の確認や病気に関する情報収集、健康アドバイスの取得などを目的に、SNSや動画共有サイト、Q&AサイトがHISの場として広く利用されていることが示された。利用者は若年層や女性、高学歴層、健康状態が良好ではない人に多く、他者との交流や匿名で質問できること、多様な情報源にアクセスできることなどが利用を後押ししていた。一方で、情報の信頼性には課題も残る。研究では、HISにおけるSNSの役割が拡大する一方、信頼できる情報とユーザーがどう接続するかが、今後の重要な課題になると指摘しているOnline Health Information Seeking in Social Media,2024

 

SNSが「健康意識・健康行動」を後押し

2010~2022年に発表された、SNSと健康増進に関する28件の研究を対象とした統合レビューでは、SNSは健康情報を探索したり発信するだけでなく、健康意識を高め、健康行動を後押しするツールとして活用されていることが示された。対象となった研究では、禁煙や感染症予防、がん予防、自殺予防、糖尿病予防、体重管理、口腔衛生など幅広いテーマでSNSが利用されており、FacebookやYouTubeは健康行動を促す介入ツールとして、Twitter(現X)やInstagramは健康意識や行動の変化を把握するツールとして活用されるケースが多かった。一方、SNSを活用した健康増進において、その効果を適切に評価する方法や、健康行動を長期的に維持するための仕組みについては、今後も検討が必要としている“The potential of social media in health promotion beyond creating awareness: an integrative review”,2022

 

SNSが「健康消費」のきっかけに

SNSの影響は、商品・サービスの選択や消費にも及んでいる。個別の調査でも、SNSが健康商品の購入行動に与える影響が報告されている。サウジアラビアの成人を対象に、SNSインフルエンサーが健康商品の購入に与える影響を調査した研究では、回答者の約55%が健康商品の購入にSNSを利用しており、広告を見た後の行動については、「さらに情報を検索した」が67.6%で最も多く、約半数(49.6%)が実際に商品を購入していた。購入時に利用するSNSはInstagram(34.6%)とTikTok(32.5%)が中心で、スキンケア・皮膚科商品やビタミンサプリメントの購入が多かった。購入につながる要因として統計的に有意だったのは、「低価格・割引」「薬局よりも高い利便性」「商品の選択肢の豊富さ」の3つだった。SNSは商品・サービスを認知し、比較・検討するきっかけにはなるものの、最終的な購買判断では価格や利便性、品揃えといった実利的な要素が重視されていることも示されたHow social media influencers shape medical and health product purchases: A Cross-sectional analysis,2026

 

SNSは「不調・病気の改善」に寄与

SNSは健康行動を後押しするだけでなく、不調や病気の改善につながる可能性も示されている。成人を対象とした88件の研究(約87万人)を分析したコクランレビューでは、FacebookやTwitter(現X)などのインタラクティブなSNSを活用した介入により、身体活動の増加や体重減少、BMIの改善、血糖値の低下、幸福感や生活の質(QOL)の向上につながる可能性が示された。また一部の研究では、不眠症やPMS(月経前症候群)、インフルエンザ様症状の改善も確認された。一方で、研究ごとに対象者や介入方法が異なることから、エビデンスの質は全体として低く、効果をより正確に評価するための研究の蓄積が必要としているBehavioural Interventions Delivered Through Interactive Social Media for Health Behaviour Change, Health Outcomes, and Health Equity in the Adult Population,2021

 

女性ヘルスケア白書2026 市場動向予測レポート

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