働く女性の「がん治療と仕事の両立」、10人へのインタビューで見えた4つの就労テーマ

働く女性にとって、がんの罹患は健康不安だけでなく、仕事やキャリア、家計、人生観など、多方面に大きな影響を及ぼす。今は治療後に仕事へ復帰する人も増えているが、仕事そのものをどのように捉え、診断や治療を経て働き方や価値観がどのように変化していくのかについては、十分に明らかになっていない。本研究では、働く女性10人へのインタビューから、がんの経験を通じた仕事との向き合い方や価値観の変化が見えてきた。

働く女性はがん治療と仕事の両立で何を経験するのか

イスラエルのテルアビブ・ヤッフォ学術大学のAvital Gershfeld-Litvin氏らの研究で、がんを経験した女性の就労経験を分析した結果、「診断前の仕事の意味」「がんの診断と仕事」「仕事とがん治療の両立」「がん後の職場復帰」の4つのテーマが浮かび上がった。研究成果は2025年、国際学術誌『Supportive Care in Cancer』に掲載された。

インタビューで就労にまつわる経験を分析

がん医療の進歩により、ほとんどの先進国では、早期診断と治療の改善により5年生存率が80%を超え、治療後に仕事へ復帰する人も少なくない。がんの種類や社会福祉制度の違いにかかわらず、世界中で約49〜91%のがん患者が1年以内にフルタイムや短時間勤務など何らかの形で仕事に復帰している。一方で、治療の副作用や職場での理解不足などから、仕事との両立に悩むことが少なくない。働く女性ががんを経験した後、仕事をどのように捉え、診断や治療が復職の決断にどのような影響を与えるのかについては、十分な知見が得られていなかった。そこで研究グループは、診断時に就労していたイスラエル人女性のがん経験者10人を対象にインタビュー調査を実施し、仕事や職場復帰に関する経験を分析した。

■インタビュー参加者の概要(以下は仮名)

・ジェーン:44歳、既婚、子2人、教師、2018年に乳がんと診断
・アビゲイル:46歳、既婚、子1人、広告業、2012年に乳がん
・ベス:51歳、既婚、子なし、コーチ、2018年に直腸がん
・リア:57歳、パートナーあり、子1人、教師、2013年に直腸がん
・サラ:44歳、パートナーあり、子3人、作家、2017年に直腸がん
・メアリー:27歳、既婚、子なし、秘書、2018年に頭頸部がん
・シャロン:44歳、パートナーあり、子なし、アーティスト、2006年に乳がん
・ケイト:46歳、既婚、子3人、教師、2015年に乳がん
・ルース:31歳、既婚、子4人、エンジニア、2015年にリンパ腫
・リリー:51歳、既婚、子3人、教師、2017年に多発性骨髄腫
【引用】Supportive Care in Cancer(2025)掲載論文「Recovering or working: women’s experiences of coping with cancer while employed: a qualitative study」より

■インタビュー内容

  1. これまでの仕事について教えてください
  2. 罹患後も仕事は続けましたか。継続した場合、治療と仕事の両立の状況はどうでしたか
  3. がんの診断や治療は、仕事にどのような影響がありましたか
  4. 仕事を続けるか辞めるかを、どのように決断しましたか
  5. 仕事に復帰した場合、そのときの気持ちや経験はどのようなものでしたか
  6. 仕事は人生の中でどのような意味を持っていますか
    【引用】Supportive Care in Cancer(2025)掲載論文「Recovering or working: women’s experiences of coping with cancer while employed: a qualitative study」より

 

女性たちの経験から、就労における4テーマが明らかに

インタビュー内容を分析した結果、就労経験に関する4つのテーマとして、「診断前の仕事の意味」「がんの診断と仕事」「仕事とがん治療の両立」「がん後の職場復帰」が抽出された。

診断前は、多くの参加者が仕事を「生きがい」や「自己価値」「社会とのつながり」と捉え、長時間労働や強い責任を担いながら働いていた。一方、がんの診断後は、がんによりキャリアが中断されたと感じる人や、仕事のストレスががんに影響したのではないかと受け止める人もみられた。また治療中は、仕事を「日常を保つ支え」と感じる一方、強い疲労や認知機能の低下などから就労継続が難しいという葛藤が語られた。復職後は、治療の副作用や雇用主・職場の理解不足などが職場復帰の課題として挙げられた。また、仕事中心だった価値観から健康や家族を優先する考え方へ変化した人や、新たな働き方やキャリアを模索する人もいた。

 

がん経験は仕事との向き合い方を見直す契機に

成果を踏まえ研究グループは、「がんは女性の仕事や自己認識に深い影響を与え、復職やキャリアの再構築を通じてさまざまな適応戦略がみられた」とコメント。今後は「がん経験者、特に女性が、就労に伴う負担を軽減し、新たな価値観や優先事項に沿った働き方を選択できるよう、継続的な支援が求められる」としている。

 

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