女性の健康と「食」の新たな関係、エピジェネティクス研究で見えてきた免疫・炎症・がん予防
日々の食事は、健康維持にとどまらず、遺伝子の働きにも影響を与える可能性があります。近年のエピジェネティクス研究では、食品やサプリメントによる遺伝子の働きの変化と、女性の免疫機能や炎症、がんの発生・進行との関係が明らかになり始めています。食は、がん予防や健康寿命の延伸にどのような役割を果たすのか。エピジェネティクスの視点から、原料メーカーのアミノアップが解説します。
目次
エピジェネティクスと健康
エピジェネティクスは遺伝子の働きを調整する仕組み
私たちの体の中には「DNA」という設計図があり、そこに遺伝情報が書き込まれています。DNAはお父さんから半分、お母さんから半分を受け継いで生まれるもので、そこに書かれた遺伝子情報は、あなたの意志では選べません。しかし、遺伝子情報の働き方(スイッチのオン・オフ)は、あなた自身でコントロールできる可能性があります。このように、「どの遺伝子情報をオンにするか?オフにするか?」という仕組みを研究するのが、エピジェネティクスという研究分野です。エピジェネティクスにはWHOや国内外の大学も注目しています。なぜならば、エピジェネティクス研究が、がんの予防や早期診断へ応用されることが期待されているからです。遺伝子のスイッチのオン・オフは、一般的には、環境、運動、食事などの生活習慣によってコントロールできると言われています。
エピジェネティクスの基礎がわかる記事
エピジェネティクスと女性の健康の視点で見る、免疫とがん
女性の健康を考えるとき、思春期(=成長期)はひとつの重要なポイントです。心身だけでなく、免疫機能や腸内環境なども大きく変化する重要な時期だからです。近年、この時期に受けた炎症などのストレスが、成長後の健康にまで長期的な影響を及ぼす可能性が注目されています。Ottawa大学(カナダ)のChantal Matar氏らは、モデルマウスを用いた実験で、次のことを示しました。
- 成長期の炎症は成長後にも影響を及ぼし、免疫システムが「炎症モード」になっていた
- たとえ炎症があっても、食事(サプリメント)で遺伝子のスイッチを調整し(=エピジェネティックな変化)、免疫システムを「調整モード」にして悪影響を和らげた
また、Chantal Matar氏らは別の実験で、成長期に炎症を起こしたモデルマウスに乳がんを移植し、次のような傾向を観察しました。
- 成長期に炎症を起こすと、将来できる乳がんの腫瘍が大きくなる傾向があった
- 食事(サプリメント)によって、遺伝子の働きを調節する小さなRNA(miRNA:マイクロRNA)の発現に変化が見られた。がんの進行を進めるmiRNAが抑えられたり、がんを抑えるmiRNAが増えていた。
これらの結果から、成長期に炎症が起きたとしても、食事によって後の悪影響を抑えられる可能性が示唆された炎症は、体を守るために必要な反応です。私たちは日々さまざまなストレスや刺激にさらされているため、体内で炎症が起こること自体を完全に防ぐことはできません。しかし、炎症による将来的な体への影響は、生活習慣の改善を通じてエピジェネティックにコントロールできる可能性があることを、この研究結果は示しています。特に、私たちの毎日の健康を支える根幹ともいえる免疫機能は、食生活や運動を通じて健康な状態に保つことが重要です。
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一般的に、私たちの体内では毎日多数のがん細胞が発生しているといわれます。なぜならば、細胞分裂のたびにDNA複製のエラーや環境要因による遺伝子変異が生じ、それが異常細胞やがん細胞になるからです。しかし、だからといってすぐにがんが大きくなるわけではありません。ほとんどの異常細胞やがん細胞は、わたしたちの体に備わっている免疫機能等によって排除されています。
がんはどうして増える?どう抑える?
再発・転移を引き起こすがん幹細胞
私たちの体内では、日々がん細胞ができても健康な免疫力で排除しています。一方で、がん細胞の中には、次のような能力を持った細胞があります。
- 自分を増やし続ける
- 治療後も生き残る
- 再発や転移を起こす
これらの能力をもったがん細胞を、「がん幹細胞(Cancer Stem Cell)」と呼びます。研究者らは、がん幹細胞を減らすことががんの再発防止につながると考えています。
がんの幹細胞をどうやって抑えるか
そこでChantal Matar氏らは、乳がんの再発や薬剤耐性(がんの治療で薬が効かなくなること)に関わる乳がん幹細胞を、食事(サプリメント)で抑えられないかを研究しました。がんの幹細胞は、非常に小さな袋である「細胞外小胞」を放出しています。この小さな袋の中には、遺伝子の働きを調整するための小さなRNAであるmiRNA(マイクロRNA)などが入っています。細胞外小胞は、いわば細胞同士がメッセージを送りあうための宅配便のような役割をしています。Matar氏らは、乳がん幹細胞と、その乳がん幹細胞が出す細胞外小胞を調べることにしました。実験では次の2つを観察しました。
- サプリメント(AHCC)を与えた乳がん幹細胞
- サプリメント(AHCC)を与えた乳がん幹細胞が放出した細胞外小胞
その結果、「1」の「サプリメント(AHCC)を与えた乳がん幹細胞」では、次の結果が得られました。
- がんの進行を進めるmiRNA(miR-155)が大幅に減少していた
- がんを抑制するmiRNA(miR-34a、let-7a、miR-200c)が増加していた
がんを抑制するmiRNAは、細胞増殖を抑えたり、転移を防いだり、がん幹細胞を減らすことに関わる重要なものです。サプリメントにより、このmiRNAががんを抑制する働きをすることがわかりました。この実験でさらに注目すべき点は、抗がん剤が効きにくい薬剤耐性細胞でも同様の結果が見られたことです。
さらに、「2」の「サプリメント(AHCC)を与えた乳がん幹細胞が放出した細胞外小胞」を乳がん幹細胞に与えると、次のことが観察されました。
- 乳がん幹細胞の増加が抑制された
- スフェア(細胞同士が凝集した球状の細胞のかたまり)の数が減少した
スフェアは、幹細胞の能力を評価するための指標として用いられるものです。この実験でスフェア形成が少なくなったということは、乳がん幹細胞の自己増殖の能力が低下したことを示します。加えて、サプリメント(AHCC)を与えると、細胞外小胞そのものの量も増えていました。つまり、サプリメント(AHCC)は細胞同士のメッセージの運び手である細胞外小胞の産生にも影響した可能性があります。
この研究で示唆されたことは、サプリメント(AHCC)が乳がん幹細胞の成長を抑え、遺伝子の働きを調節して、再発や薬剤耐性に関与する小さなRNA(miRNA:マイクロRNA)を良い方向に変化させる可能性があるということです。さらに、サプリメント(AHCC)は乳がん幹細胞が放出する細胞外小胞にも影響し、がんの抑制に有利なメッセージを届けている可能性も示されました。
この研究は細胞の培養実験(in vitro試験)なので、人の乳がん患者さんで同じ効果が得られるかどうかは今後の臨床試験で確認する必要がありますが、がんの再発をエピジェネティックに防止することが示唆された、大変興味深い結果です。
食品でがんの自然発生を抑える可能性
私たちの体内で自然に発生するがん細胞や異常細胞は、免疫システム等によって排除されることは先に述べたとおりです。大阪大学の足立成基氏らは、がんの自然発生を食品で抑えられるかどうか、動物レベルの研究を実施しました。マウスにサプリメント(AHCC)を長期的に与え、「健康寿命が延びるのか?」「自然に発生するがんを減らせるのか?」について調べました。足立氏らは、242匹のマウスを以下の3つのグループに分け、5週齢から24か月齢まで飼育しました。
- サプリメント(AHCC)入りの水を週2日飲む
- サプリメント(AHCC)入りの水を毎日飲む
- 普通の水を飲む(対象群)
24月齢=2年というとマウスではかなりの高齢で、人間でいうとほぼ一生に近い期間を観察することに相当します。生存率やがんの発生状況を比較した結果、対照群では約半数でがんが発症していたのに対し、サプリメントを飲んだ群では30%台に抑えられていました。
■全体のがん発生率
・サプリメント(AHCC)を週2日飲んだ群:30.6%
・サプリメント(AHCC)を毎日飲んだ群:34.4%
・対照群:50.5%
中でも、特に乳がんと肝臓がんが減っていました。乳がんは対照群のマウス(メス)の30%以上で発生しましたが、サプリメントを飲んだ群では3%前後に抑えられました。
■乳がんの発生率(メス)
・サプリメント(AHCC)を週2日飲んだ群:3.3%
・サプリメント(AHCC)を毎日飲んだ群:2.9%
・対照群:36.6%
肝臓がんについても、対照群では約30%で発生したのに対し、サプリメントを飲んだ群では10%台にとどまりました。
■肝臓がんの発生率(メス・オス)
・サプリメント(AHCC)を週2日飲んだ群:11.1%
・サプリメント(AHCC)を毎日飲んだ群:13.1%
・対照群:28.4%
なぜこのような結果になったのか、詳しい仕組みはまだ研究の余地がありますが、サプリメント(AHCC0を摂取することで老化に伴う慢性的な炎症を抑え、がんの発生に関わる遺伝子(Spp1やNr4a1)の働きを弱めた可能性が考えられます。がんの発生に関わる遺伝子を食品によってコントロールすることができるかもしれないという興味深い研究です。
まとめ
エピジェネティクス研究は、「遺伝子そのものは変えられなくても、遺伝子の働き方は生活習慣によって変わる可能性がある」ことを示しています。近年では、免疫機能や炎症、さらにはがんの発生や進行にもエピジェネティックな仕組みが関与していることがわかってきています。今回紹介した研究は、いずれも食事などの日々の生活習慣が遺伝子の働き方に影響を与え、健康維持に重要である可能性を改めて示しています。今後エピジェネティクスの研究が進むことで、がん予防や健康寿命延伸の新たな可能性の広がりが、ますます期待されます。
【提供元】 株式会社アミノアップ
1984 年設立以来、北海道を拠点に機能性食品と農業資材を研究開発し、世界47カ国に展開するメーカーです。「AHCC®」や、バイオスティミュラント「Dr. アミノアップ」などの独自素材を開発し、特許取得と論文発表を重視しています。社内に医学・薬学・農学・理学・獣医学など多分野の研究員を擁し、世界 100 以上の医療機関・大学との共同研究にも取り組んでいます。ICNIMを通じた国際的な研究ネットワーク形成に加え、環境負荷削減にも注力し、製品の製造 1トン当たりの製造時 CO2 排出量を 10 年前比40%削減。2025年にはEcoVadisのサステナビリティ調査で、世界各国の評価対象13万社の上位15%にあたるシルバー評価を獲得しました。
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