女性の心を掴む仕掛け「日本っぽさ」 各社の事例

女性の心を掴む“マーケティングの仕掛け”は多々あるが、おすすめの一つが「日本っぽさ」を打ち出す方法。近年女性の間で「日本」「地域」「伝統・文化」への興味関心が高まっているからだ。楽天市場で人気を集めているヒット商品を見ても、日本・地域・温故知新のキーワードが目立っていることや、各食品メーカーや外食チェーン店が実施する地域限定食(味)が人気になりやすいこと、若い世代が日本の伝統文化に関心を寄せていることなどからは、日本の伝統文化への回帰が進んでいることが分かる。

欧米流がカッコいい!から日本回帰へ

食事、家具、インテリア、高級ブランド、メイクなど、あらゆる場面で欧米スタイルを取り入れる風潮が落ち着いていく一方で近年強まっているのが、自国への興味・関心。富士山の世界遺産登録、和食のユネスコ無形文化遺産登録、訪日外国人の増加などで日本の文化・歴史を改めて見つめ直す機会が増えていることなどが関係しているのだろう。歴史や文化と触れ合う国内ツアーや学習は人気を集め、歴史関連のテレビ番組も増えている。また、国が掲げる地方創生による各取り組みは各地域の町興しの加速を後押し。全国各地のご当地グルメのグランプリを競うPRイベントであるB-1グランプリやご当地キャラクターの登場は、個々の地域愛や各地域への興味喚起に寄与している。

ヘルスケアの観点からは、生活者個々のヘルスケア意識が高まってきていることで、世界的に見ても健康的と言われている日本の伝統食が女性を中心に見直されている。このような流れから今、「日本」「文化・伝統」「歴史」「地方(その地域ならではの食や文化)」をキーワードにしたモノ・コトは生活者から強い関心を集め、日本古来のライフスタイルや食スタイル、日本柄、和風家屋などを高く評価する人が増えてきている。この流れは今後さらに強まりそうだ。

和を表現する人気の企業事例

日本回帰の流れにのって、早速日本らしさを取り入れようとしても、その方法は様々。商品パッケージや店舗デザインに和柄を取り入れる、英語やカタカタは控え漢字や平仮名を多用する、飲食店なら和食メニューに伝統食を取り入れる、店舗や施設なら着物や浴衣でおもてなしをする、日本の文化体験を提供する、年中行事に合わせたイベントを開催するなど。そこで様々な工夫や視点で「日本」を表現している企業事例を集めてみた。

1.使い方提案で、風呂敷がオシャレなラッピングに

若い世代に馴染みの薄い日本の伝統・文化のアイテムの一つが風呂敷。おしゃれでかわいいバッグやギフトバッグが溢れる今、風呂敷を持つ人を見かけるのは稀だろう。「地味」「古い」「何に使うの?」「どうやって使うの?」。そんなイメージを持つ人は多いが、マイナスイメージや疑問を払拭して女性たちを振り向かせているのが京都の風呂敷専門店「むす美」は見せ方に様々な工夫を凝らしている、今人気のショップだ。工夫の一つが、利用シーン別の紹介。サイト内では「婚礼・引出物」「弔事・法事」「プチギフト」「海外へのお土産」などシーン別に風呂敷が紹介されているので、日常生活のどのような場面で使えばいいのか?をイメージしやすい。季節別におすすめの柄が紹介されていたり、風呂敷の豆知識(サイズ、形、素材、取り扱い方、柄構成、色、作法)、ラッピング方法(風呂敷の使い方)も詳しくわかりやすく掲載されているので、風呂敷初心者や、ギフト用としても安心して購入できる。文化を学べるちょっとした場にもなっているのもポイント。

2.選ぶ楽しさと美しさに大満足!「米ギフト」と「米料亭」

米の消費量が年々減少する中、「日本らしさ」を加えて女性を中心に今人気を集めている米屋がある。新潟県のマイライフ(株)と、京都の(株)8代目儀兵衛だ。マイライフが運営する通販サイト「日本の銘米」は、楽天でも大人気の米ギフトを取り扱うショップで、コシヒカリ、あきたこまち、ななつぼし、つや姫、青天の霹靂など特A10ブランドの米が揃う。味はもちろんのこと、目を引くのはその包み。会津木綿をイメージさせる和のデザインはブランド別に異なる。米袋のデザイン一つで、ただのお米(とは言ってもブランド米だが)から「ギフトとして喜ばれる米」へと大変身。味だけではなく見た目にも満足。「オシャレで素敵」「食べ比べが楽しい」「世代間問わず喜ばれやすい」とネット上の購入者の評価も高い。

(株)8代目儀兵は、「お米の素晴らしさや、それを主とする日本人の食文化、食事スタイルの素晴らしさをもう一度多くの人に伝えたい」という想いで、お米のギフト通販と飲食事業を展開する。同社が販売する米ギフトの「十二単シリーズ」は、2014年におもてなし セレクション2014の金賞を受賞し、以降各メディアで取り上げられている。上品な包みは、「京都の文化、源氏物語になぞらえた12色の風呂敷包み」で、贈る側にも贈られる側にも和の心を感じさせる感動がある。またギフトを受け取った後、米袋を包む風呂敷をリユースできるのも、女性からの評価が高い。

ブランド米が売りの「日本の銘米」とは異なり、「十二単シリーズ」では、料理と合わせて様々なタイプのお米を楽しめることをコンセプトにブレンド米を提供する。和食用、おむすび用、中華料理用、雑穀ブレンド向き用、丼もの用、炊き込み御飯用など、料理別に提案しているので、料理をする者にとっては選ぶ楽しみがある。ギフトを贈られた瞬間には感動が、そして選ぶ楽しみ・料理をする楽しみ・食べる楽しみは贈られたその後しばらく続く。印象が強いギフトだ。飲食事業も視点に一工夫。京都・祇園と東京・銀座には、米を楽しむ米料亭が人気を集めている。昨年末には「日本米の美味しさを世界に発信する」を掲げ、食事処「gihey」が成田国際虚空第一ターミナルでオープンした。あくまで、食事の主役は「米」。HPを見ているだけで、真っ白の炊きたてご飯が食べたくなる。

地域色を前面に出して成功している事例

地域の伝統食をランチメニューに盛り込む、地域独特の習わしを体験出来る宿泊プランの提供、地域のお祭りの魅力を再定義し大々的にアピールする、地域特産品でご当地グルメを開発する、地域特産品を生かしたスキンケア商品を旅館のアメニティグッズにする、など地方を魅力的に見せる方法も様々だ。地域の魅力を活かすなら、「地域の魅力は何だろう?どんな伝統・文化・特産品があるんだろう?」を再度見直して新たな魅力を発見してみよう。自分たちにとっては当たり前でも、他の地域からは「面白い!」ということは多い。地域資源をうまく活用してPRに成功している事例を見てみよう。

3.地域資源を活用 話題を集め続ける星野リゾート

地域資源を活用して常に話題を集めているわかりやすい事例は、星野リゾートが運営する旅館。地域の魅力を打ち出す温泉旅館ブランド「界」シリーズからは学べることが多い。界シリーズの一つである「界出雲」は、島根県松江市にある温泉旅館。島根県と言えば出雲、出雲と言えば神が集まる場所。神秘的なイメージは島根県ならではだ。それを活かしたのが「神話滞在プラン」。

  • 出雲鍛造で神話を描いた行燈を部屋で灯すと、壁一面に神秘的な影絵が浮かび上がる
  • 島根の伝統芸能「石見神楽」と呼ばれる神様に捧げる舞は、毎夜鑑賞できる
  • 朝食は、神様とのご縁をより強くする「神饌朝食」。神饌の要素を忠実に再現

青森県三沢市にある青森屋でも、青森ならではの特徴をプランに盛り込み、冬国ならではの過ごし方を提案している。滞在中の様々な場面で「青森」を体験できるため、観光に出かけなくても館内にいるだけで満足度が高い。貸し浴衣は全国でもはや定番しているが、青森屋では灯篭・半纏・湯たんぽを貸し出している。露天風呂を囲む池にねぶた灯篭を浮かべる冬の風物詩「ねぶり流し灯篭」を見ながら入浴を楽しめる。以下の動画をご覧頂きたい。青森屋に行ってみたくなる読者は多いのでは!

4.域特性を生かした47種類のビールがヒット

昨年5月、キリンビールは都道府県別に47種類の一番搾りを発売、見事に各地で話題を集めてヒット商品となった。各地域の風土・気質・食文化・県民性などを味覚、パッケージ、アルコール度数で表現する試みは各地域で消費者の興味を引き「自分の出身地のビールはどんな味?どんな風に表現されている?」といった新しい楽しみ方も提供したと言える。同社は地域の特性を引き出すため、都道府県ごとに地元の食や伝統芸能といった専門家や地元情報誌の編集者らとワークショップを開催したり、地域特性に合わせた営業活動やプロモーションを行ったという。

従来の「一番搾り」では全国共通だったマーケティング戦略も、今回の商品では地域ごとの特性に応じてカスタマイズ。TVCMやポスター、新聞広告も地域ごとの商品コンセプトを盛り込んで47パターン制作した。(引用:じゃらんとーりまかし2016年12月号,31p)

5.大河ドラマから誕生した「三成めし」、歴女に人気

2016年の大河ドラマ「真田丸」に登場した石田三成にちなんだ「三成めし」は、出生地である滋賀県長浜市と、隣接する米原市、長浜市限定で食べられる飲食メニューだ。「石田三成のエピソードにちなんだ商品」「石田三成をイメージした商品」「3市のいずれか(または全部)が石田三成ゆかりの地であることがPRできる商品」のいずれかに該当していることが認定基準。歴史上の人物を活かした菓子や小物類は全国各地でよく見かけるが、人物をイメージした食事ができるのは珍しく、歴史好きにはたまらない。その地域ならではの歴史を紐解き、地域資源を存分に活かして地域をPRした事例だ。他、放送中には石田三成本人を広告する、滋賀県による動画も制作され視聴回数は140万回を超える(2017年1月26日)。手作り感満載で突っ込みどころも満載だが、そこがまた受けてるようで、コメントは多く話題性は高い。

 

7.秋田犬をアピール、国外からも注目

秋田県大館市の公益社団法人秋田犬保存会は、同県原産の秋田犬を国内・国外にアピール。東京では秋田犬を連れて散歩するイベンドが毎年開催。昨年は銀座中央通りに秋田犬25頭と男鹿なまはげが登場し、通行人を楽しませながら秋田県をPRした。支部は北米、台湾、ヨーロッパ、ロシアなど海外にも複数あり、近年は外国人の秋田犬ファンを増やしている。同会は秋田犬の保存を目的として設立・運営しているが、秋田犬の愛くるしい姿が秋田県のPRに大きく貢献している。

 

ご当地コスメも人気

地方の人気者(物)といえば、ご当地グルメや野菜や菓子など地域特産品だが、今後は女性の間でご当地コスメにも熱い視線が寄せられそうだ。オーガニック志向や、国内の安心・安全な物を肌に使いたいというニーズが高まっていることも後押しとなるだろう。

人気美容雑誌「美的(小学館)」が、生活雑貨を扱うロフトとご当地コスメを紹介するプロジェクトが始まった。全国各地に眠る希少美容成分に着目しており、各地域資源を生かした商品が揃う。馬肉の生産量日本一の熊本県からは馬油を使用した多機能オイル。秋田美人で有名な秋田県からは、秋田の原産米を原料に、伝統的な発酵技術で製法した米ぬか発酵エキスを配合した洗顔料。他の地域で作られたものより抜群の説得力だ。地域特産品などの地域資源を大いに活用・PRしたご当地コスメはこれからの注目株だ。

 

 

 

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